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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第1章 滅びゆくエルフたち

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第3話 幼馴染




妹の遊んで攻撃を何とかやり過ごした私は、日課の鍛錬をするため、我が氏族における風魔法の大家たいか、エルミス・アドランシェ家を訪れていた。


まあ、家といっても、私たちは流浪るろうの民なので、簡素なテントではあるが。


そのテントの横にある呼び鈴を引こうとすると――




「あー!!リヒトだー!」


横から声をかけられる。

そちらを振り向くと、銀色の髪と青い目が特徴の少女――ルノアがぶんぶんと手を振っていた。


「今日も僕の家で鍛錬かー!相変わらず真面目だね〜。」


そう言いながら近づいて来て、私の肩をバシバシと叩く。


このルノアという少女は、私と同い年のエルフで、いわゆる幼馴染おさななじみというやつだ。


彼女は、今まさに呼び鈴を引こうとした風魔法の大家たいか、エルミス・アドランシェ家の一人娘である。


ちなみに、エルフ社会における名前は“個人名=家名かめい氏族名しぞくめい”という順番で名乗られる。


私やルノアの所属する氏族名はアドランシェなので、私の場合は次のようになる。




リヒト=ローネル・アドランシェ




これが、私の正式な名前である。


同じく、ルノアの場合は、ルノア=エルミス・アドランシェが正式な名前となる。

妹の場合は、ユウナ=ローネル・アドランシェだ。




「ルノア、私はアドランシェ氏族の後継者なのだ。風魔法において、より高みを目指すのも、次期氏族長たる私の役目だ。」


やけに距離感の近い幼馴染をあしらいつつ、そう答える。


「やっぱり真面目なんだから〜。ねえ、ユウナちゃんと一緒に遊ぼうよ!」


そう言って、私の妹を巻き込んで遊びに誘って来る。




――私がいまだに理解に苦しむのがこれだ。


我らエルフが滅びのふちに立っているのは間違いないはずなのに、大人も子供も妙に危機感が薄いのだ。


平和を愛する種族と言えば聞こえは良いが、もう少し危機感や反骨心を持っても良いだろうに。


「鍛錬が終わってからな。お父上ちちうえを呼んでくれ。」

「えー。しょうがないなぁ……」


不満そうなルノアを促し、師匠――ルノアの父親を呼んでもらう。


その後、いつも通り風魔法の鍛錬を行い、自宅でこれまた妹をあしらいながら、勉強をして就寝した。






翌日、私は幼馴染のルノア、妹のユウナと一緒にピクニックに出かけていた。


この日はエルフの戒律かいりつにより休息日と決められており、家事以外の労働や狩猟、勉強までもが禁止されている。

森と大地の恵みに感謝し、1日を穏やかに過ごすのだという。


私からすれば呑気のんきの極みであり、本当であれば無視して勉強や風魔法の鍛錬をやりたいのだが、戒律を破ると懲罰を受ける可能性がある。


私は紛れもなく、アドランシェ氏族の次期氏族長ではあるが、現時点ではあくまで後継者の立場でしかなく、政治的権力はない。

しばらくは、このくだらない戒律に従うしかないのだ。


「まったく、我が種族は戒律が多すぎる。」

「え?リヒトー!何か言った?」


隣を歩くルノアが聞き返してくる。


「……何でもない。それよりほら、かごを持ってやろう。」

「ほんと!?ありがとう、リヒトー!」

「ありがとう!お兄さまー!」


いや妹よ、お前には何もしてやっていないぞ。


私はルノアから食べ物が入った籠を受け取り、妹の手を握りながら、ピクニックの目的地である集落外れの湖へと歩いた。






湖畔に到着したので、景色の良い高台にある岩に腰かけ、昼食をとる。

ルノアから受け取った籠を開けると、野鳥やちょうの肉を焼いたものを、木の実を砕いて作ったクッキー生地で挟んだ料理が入っていた。

エルフ社会におけるサンドイッチみたいな料理で、外出時の携行食けいこうしょくとしてよく作られている。


「わー!!美味しそー!」

「お兄さま!早く食べよー!」


ルノアと妹がはしゃいでいる。

まあ、確かに美味しそうだ。


「世界樹の恵みに感謝を。」


3人で祈りの言葉をつぶやき、食べ始める。


……ユウナよ、さっそく口の周りに食べ物が付きまくっているぞ。


私は妹の口元をぬぐいながら、ルノアと話をしたり、ユウナに初歩的な風魔法を披露したりしながら過ごした。


とても穏やかで、温かい時間だった。






昼食後、湖で水浴びするという2人を置いて、私は森に入っていた。

2人はあまり気にして無いようだが、妹はともかく、ルノアと一緒に水浴びする訳にもいかない。


どうせ体を拭く物も持って来ていないだろうから、柔らかくて丈夫な葉っぱでも探しておいてやろう。

エルフは森に特化した種族なので、葉の数枚程度、余裕で見つけることができる。


早速、お目当ての葉を見つけたので、採取しようと手を伸ばしたその時――




「きゃゃゃあぁぁぁー!!」

「――!?この!ユウナちゃんを離せっ!」


森の外、湖の方から、妹の叫び声とルノアの怒声が聞こえてきた。




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