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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第2章 16氏族の決断

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第28話 15氏族の圧力




「テネス殿、ガスト殿。我々は、改革を望んでいます。」


私は、驚きで硬直しているテネス殿とガスト殿に、再び声をかけた。


「………………」

「………………」


2人は苦虫を噛み潰したような顔で押し黙る。

私が他の氏族長に政治工作を行っていることは流石に把握していただろうが、まさか他の氏族長全員を味方に付けていたとは、全くの予想外だったのだろう。




私が今日、この場を設けたのは、もちろん本気で改革案を通すためではない。

この反対派2人をどうにかしない限り、全会一致での決議には至らないからだ。


私の目的、それは端的に言えば2人に圧力を加えるためだ。


人間が社会的な生き物であるように、エルフも同じく社会的な生き物である。


5年前の時点では、私の改革案に賛同する者はジン殿だけだったので、この2人も余裕の態度でいたが、今は状況が真逆だ。


自分たちが圧倒的な少数派に位置している――この事実は、有形無形のプレッシャーとなって押し寄せてくる。


事実、テネス殿は強がっているが、一方のガスト殿に関しては、先ほどから居心地悪そうに体を揺すっており、その目は左右に行ったり来たりと泳いでいる。




私は、さらにプレッシャーをかけるべく、2人に話しかけた。


「テネス殿、ガスト殿。お二人も内心では分かっているはずです。平和とは、武力でよってのみ守られるのです。この弱肉強食の世界において、残念ながら、無力な存在はただ奪われるのみです。」


私の言葉に、テネス殿が反論してくる。


「それは野蛮人の発想だ!平和とは、一度崩してしまえば、決して元には戻らない。我々の先祖はそれを重々承知していたからこそ、風魔法に関する戒律を1,000年以上も守ってきたのだ!」


言いたいことは分からなくもない。

私も、無償で平和が手に入るのであればそうしたい。

だが、我々エルフの置かれた状況は、決してそれを許さない。


「テネス殿、我々が人族から迫害を受ける前――150年以上前であれば、テネス殿の主張はおそらく正しかったでしょう。しかし、現実から目を背けないでいただきたい。今の我々はどうですか?祖国を失い、氏族の四分の三を失い、同胞が次々とさらわれていく。今もこうして、粗末なテントの中で、息を潜めながら議論をしているではないですか。」


私の言葉に、他の氏族長からも同意の声が発せられた。


テネス殿はなおも食い下がる。


「仮に、百歩譲って仮に、風魔法を用いて人族に立ち向かったとする。その結果、間違いなく争いが起こるだろう。エルフと人族の間で戦争が起きるかもしれない。そうなれば、結局多くのエルフの命が失われる!そうであろう!?」


そんなことは、私だってよく分かっている。


「おっしゃることは分かります。ですが、現状維持では、間違いなく我々エルフは滅びます。テネス殿、未来を自由に選ぶことができるのは、恵まれた一部の種族や民族だけなのです。追い詰められた我々には、2つの道しか残されていない。すなわち、緩やかな死か――あるいは、戦いの先にある希望です。」

「―――っ!!」


私は至って冷静に話しているつもりだが、テネス殿は、まるで狂人に接したような顔になり、座ったまま後ろに後退あとじさった。






そして、そのまま私とテネス殿の間に沈黙が流れる。


私としては、この場の目的――テネス殿とガスト殿にプレッシャーを与えることには成功した。

状況は相変わらず歯がゆい限りだが、ここからはどのような手段を用いてでも、2人に翻意ほんいを促すつもりだ。


そして、氏族長会議の招集者――議長の立場として、議論の平行線を理由に、この場を解散することを提案しようとする。


その時――




「―――リヒト殿、安心されよ。貴殿の心配は杞憂きゆうに終わる。本当は、()()()()()()()黙っているつもりだったが、これだけ多くの氏族長が胸を悩ませているのだ。この場で共有するとしよう。」


突然、テネス殿が重い口を開いた。




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