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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第1章 滅びゆくエルフたち

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第16話 怒りの業火




ジン殿が木陰から立ち上がり、竜笛りゅうぶえを口にくわえた。


「―――!!」


そして、一気に吹き鳴らす。


氏族長であるジン殿が取り出した竜笛りゅうぶえ()()()であり、通常の竜笛とは比較にならないほどの大音量を伴って、集落全体へと響き渡った。




『な、なんだこの音は……!?』

『どこから聞こえているんだ!?』


突然の音に驚き、集落の入口付近に集まっている冒険者から、どよめきの声が湧いた。


そして、遠くから何か家屋かおくが破壊されたような音が響き、冒険者たちはさらに動揺する。


『一体、何が起こっているんだ!?』

『リーダー!指示をくれ!』

『ちょっと待っていろ!まずは状況把握が優先だ。すぐに偵察部隊を編成する!』


そして、リーダーと呼ばれた男は、異変に気づいた。


『ん?なんか突然暗くなったな。空に雲でもなぎゃ―――』




男の声は途中で途切れ、代わりに雷が落ちたかのような轟音と地響きが発生する。


そして、それを遥かに上回る、天をつらぬくような咆哮ほうこうが響き渡った。




「■■■■■■■■■■!!!!」




リーダーと呼ばれた男と、その周囲の冒険者は、空から降ってきた飛竜の下敷きとなり、地面に赤い花を咲かせていた。


その飛竜は私も知っている飛竜だった。


「―――カーチス!!」


リヴィアの専属飛竜であるカーチスだ。


カーチスは縄で縛られ、体中を傷だらけにしているリヴィアの姿を目にすると、その顔を怒りに染めて、再び憤激の雄叫びを上げた。




「■■■■■■■■■■!!!!」




その怒りの咆哮たるや、地獄の悪魔も泣きながら逃げ出すのではないか――そう、思わせるほどだった。


『ひ、ひ、ひ―――!!』


事実、突然現れた飛竜に、冒険者たちは恐慌状態となる。

カーチスは丸太のような太い尻尾を振り回し、そんな冒険者たちを片っ端から弾き飛ばした。

小石を蹴り上げるかのように、直撃した冒険者たちは宙を舞った。


そして、カーチスに続いて、ダートネス氏族の管理する飛竜たちが次々と飛来してくる。




ジン殿が吹き鳴らした特別製の竜笛は、飛竜たちに緊急集合を指示するものだ。

通常は、竜舎りゅうしゃが火事になったり、洪水等で飛竜たちを一刻も早くその場から動かす必要がある時に使う。

氏族長であるジン殿は、いつもそれを携帯していた。


そして、ジン殿は通常の竜笛に持ち替えて、飛来した飛竜たちに指示を出す。


飛竜たちは、次々と囚われているエルフたちの近くに着陸し、荒縄で縛られているエルフたちを、その強靭な前足や後ろ足でつかんだ。

そして、続々と離陸を始める。


あれだけいた囚われのエルフたちは、瞬く間に飛竜に救出され、ゼロとなった。

その場には、冒険者と戦っていたカーチスだけが残る。




『くそっ!!捕まえたエルフどもがっ!一体何なんだよ!?』

『リーダーは死亡した!副リーダーはどこだ!?』

『おい!勝手に逃げるな!こうなったらエルフの死体だけでも持ち帰るぞ!』


冒険者たちの混乱が収まらない内に動く必要がある。

私もすかさず、上空を旋回中のサリアに竜笛で指示を出し、この場に呼び寄せた。


そして、作戦を次の段階に進める。




「ジン殿っ!!」

「ああ!いくぞっ!!」


私はサリアに、ジン殿はカーチスに竜笛で指示を出して、混乱状態にある冒険者たちを、集落の()()()()へと追い込むように動かした。

サリアとカーチスは私たちの意を受けて、咆哮や尻尾などで冒険者たちを威嚇いかくし、追い立てる。


――その場所とは、サリアに騎乗して上空から視認した、煙の立ち昇る場所だった。


おそらく炊事中に冒険者に襲われ、火の始末もできずに避難したのだろう。

そこでは、1つのテントが炎を上げて燃えていた。


「ルノアっ!!」

「まかせてっ!!」


私がルノアに合図すると、ルノアは風魔法を発動させた。




『ラー・エリス・ラル・フローレア (世界樹の風よ、東風を吹かせたまえ)』




ルノアの呼びかけに世界樹が応え、強い東風が吹く。

そして、周囲に残ったテントや散らばった木材、枯れ木などの可燃物が、強風に煽られて、炎の上がってるテントに向かって飛び込んでいった。


「まだまだっ!もっと集めるよ!!」


ルノアはそう叫んで、再び風魔法を発動させる。




『ラー・エリス・レル・フローレア (世界樹の風よ、西風を吹かせたまえ)』




今度は先ほどの反対側――強い西風が吹き、またしても可燃物が集まってくる。

突然、大量に投入された可燃物と、風に乗って送り込まれた酸素を受けて、テントの火の勢いは急速に大きくなった。


『お、おい!押すなよ!』

『ふざけんな!デカいトカゲが迫って来ているんだぞっ!』

『こっちだって、炎が上がっているんだよっ!』


サリアとカーチスに誘導され、冒険者たちは激しく燃える炎の近くへと追い詰められていた。




――これで、終わりにする。




「ジン殿!!ルノア!!」


私は、ジン殿とルノアに合図した。

2人とも、私の目を見て頷く。


そして、ひとかたまりになっている冒険者たちを、まるで三角形で取り囲むように、私を含む3人は各頂点へと散開した。


「これで―――終わりだっ!!」


私は叫び、ジン殿とルノアと一緒に風魔法を発動させる。






『ラー・エリス・ル・サーティアス (世界樹の風よ、目の前に旋風せんぷうをもたらしたまえ)』






3人の呼びかけに世界樹が応え、目の前につむじ風が発生した。


最初は小さかったつむじ風だが、ジン殿とルノアが発生させたつむじ風と合流し、大きな竜巻たつまきとなる。


そして、燃え上がる炎が生み出す上昇気流を受けて、あっという間に巨大な炎の竜巻に成長した。




『―――』

『―――』

『―――』




巨大な炎の竜巻に巻き込まれた冒険者たちは、何事か言葉を発したような気がしたが、竜巻が生み出す轟音にかき消され、私の元には届かなかった。


あの炎に巻き込まれたら、ひとたまりもないだろう。




目の前で全てを焼き尽くす炎は、ずっとしいたげられ続けてきたエルフたちによる、怒りの業火のようだった。




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