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エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第1章 滅びゆくエルフたち

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第15話 決断の時




私とジン殿、ルノアの3人で集落の入口付近の森に到着し、木陰からそっと様子を伺う。


囚われたエルフは、目算もくさんで30名程度だ。

もっとも、それは生きているエルフだけで、今も目の前で冒険者2人がエルフの死体を引きずって、囚われたエルフたちの横に無造作に並べていた。


冒険者たちが、大陸共通語で会話しているのが聞こえる。


『死体も必ず集めろよ!エリクサーの材料になるんだ。1匹も残さず回収しろ!』

『生きているエルフが1、2、3…………32匹か。たぶん、その倍くらい殺したから、合計で100匹近くだぞ!!大手柄おおてがらだ!』

『冒険者1人あたり、聖王国せいおうこく金貨500枚は下らないだろうな……。それだけあれば、一生遊んで暮らせるぞ。』


ルノアは氏族長の家系ではないため、冒険者が何を話しているか分からないだろうが、ジン殿は氏族長なので、もちろん大陸共通語が分かる。




「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」


ジン殿は飛び出しそうになる体を抑えるため、指がめり込むほどの握力で、近くの木の幹を握り締めていた。

怒りが口から漏れ出ているかのように、荒い呼吸をしていた。


無論、私も全く同じ気分だ。


今すぐ、囚われているエルフたちだけでも解放したいが、既に狩りと死体回収を終えた冒険者たちは、続々と集落の入口に集まりつつあり、見張りの冒険者は20名近くにまで増えていた。


ジン殿は、戒律により風魔法を使えない。


私とルノアだけで、10倍近い冒険者を相手にするのは、はっきり言って自殺行為だろう。

おそらく、奇襲により半分くらいは討ち取れる。

だが、こちらが風魔法を使ってくることが分かった冒険者は、散開して波状攻撃を仕掛けてくるはずだ。

風魔法も万能ではない。詠唱の隙を狙われれば終わりだ。


私が、どうすれば良いか、必死に頭を悩ませていると――






「は、離せよ!離せって言ってるだろ!この野郎っ!!」


最悪の事態が、訪れてしまった。


おそらく、同胞のエルフたちを逃がすために、最後の最後まで抵抗していたのだろう――体を縄で縛られたリヴィアが、冒険者に挟まれながら、集落の入口へと連行されていた。


『うるせえ!!黙ってろ!』


リヴィアに抵抗されて腹が立ったのか、身動きできないリヴィアの腹に冒険者が蹴りを入れた。


「―――っ!?がはっ、がほっ、ごほっ……ぐぅぅぅ……」


思わず咳き込み、その場にうずくまるリヴィア。


『面倒かけさせるんじゃねえ!』

「―――あぅっ!!」


そしてそのまま、あろうことがうずくまった彼女の髪を鷲掴みにして、地面を引きずりながら、囚われのエルフたちが集められている所へと連れていった。


引きずられた地面には、抜け落ちた綺麗な赤い髪が、無惨にも散らばっていた。






もう、限界だ。


私も、ジン殿も、爆発寸前だった。

実際、隣のジン殿は、木の幹を握り締めた手から血を流しており、食いしばった唇からも、血が流れていた。


しかし、同じ爆発寸前でも、違いがある。


私は風魔法を使って暴れ周り、文字通り爆弾のように多くの相手を道連れにできるだろう。

だが、ジン殿は戒律により風魔法を行使できないため、槍一本で飛び込むことになる。

そうなれば、四方八方から矢を射掛けられ、犬死にするだけだ。




「―――ジン殿」

「………………」


ジン殿に呼びかけるが、返事はない。


「―――ジン殿っ!!!」

「―――なんだっ……」


ジン殿は血走った目で、私の方を向いた。


「私が1人で飛び込みます。ジン殿は、ルノアを連れて、この場を離脱してください。」

「リヒト!?」


ルノアが驚いて反応するが、すまないが議論している暇はない。


「―――死ぬぞ。」


ジン殿が低い声で呟く。


「はい、間違いなく死ぬでしょう。」


だから私は、努めて冷静に返した。

ジン殿は思わず押し黙る。


私は、ジン殿に正直な気持ちを打ち明けた。




「ジン殿。平和とは、武力によってのみ守られるのです。その武力を放棄し、自らを守ろうとしない種族は、自分たちの未来を放棄していることに等しいのです。」

「―――リヒト……お前……」


私はなおも続ける。


「私は、もう限界なのです。私にとって、我が種族の――エルフの滅亡を黙って見ていることは、拷問に等しい。私は、そんな拷問を何年も耐えられるほど強くはない。だから、私はせめて、今の自分にできることを行います。―――ご心配なく。リヴィアだけは、この命に替えてもお助けします。」


そして、ジン殿に最後の言葉を託す。




「ジン殿、エルフの未来を――どうか、よろしくお願いします。」




そして、隠れていた木陰から一歩を踏み出した。


最初の一撃は、どの風魔法にしようか考えながら、二歩目を踏み出そうとしたその時――






「―――待て。」


ジン殿に強く肩をつかまれた。

とても熱い、燃えるような手の平だった。


「ジン殿?」


私が疑問に思って振り返ると、ジン殿は何かを決意したような顔で、口を開いた。


「―――俺は決めた。戒律を破る。飛竜の運用も、無制限に行う。だからリヒト、共に戦おう。」

「…………ジン殿」


私は驚いて、ジン殿を見つめた。


「お前の言う通りだ、リヒト。あらがわなければ、ただ奪われるだけだ。戒律など知ったことか。俺は、俺の氏族と妹を守る。」


ジン殿の目には、迷いは一切なかった。


「―――あなたの勇気と英断に、心からの感謝を。」




これで、冒険者たちにあらがう道は開けた。


私とジン殿、ルノアの3人は、囚われのエルフを救い、冒険者たちを撃退する方法について話し合った。


そして、それを実行に移すべく、ジン殿はふところから竜笛りゅうぶえを取り出すのだった。




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