第14話 襲撃
サリアに騎乗して離陸し、ダートネス氏族の集落がある方向へ向けて飛翔すると、すぐに異変に気づいた。
――集落の方向から煙が出ている。
もちろん、我々エルフも炊事の際などに火を使うが、煙をそのまま放っておくと、冒険者に集落の場所を察知されてしまうため、風魔法を使用して煙が上空に漏れないよう厳重な管理を行っている。
その煙が空へと垂れ流しになっている時点で、何か異常事態が起きていることが分かった。
それに、煙の量も明らかに多い。
「―――っ」
私は焦る心を押さえ、少しでも早く集落に到着するよう、サリアの操縦に集中した。
集落の上空付近に到着したため、地上から気付かれないよう、高度を上げて偵察飛行を行う。
すると――
「―――そんな……」
後ろにつかまっているルノアから声が漏れた。
目を瞑っているように言ったが、焦げ臭い煙の臭いが気になり、目を開けたのだろう。
そして、それはルノアにとって、辛い現実を直視する選択でもあった。
ダートネス氏族の集落が、冒険者の集団に襲われていた。
私も初めて見る、ものすごい冒険者の数だ。
この距離からだと正確な人数は分からないが、少なくとも30名は下らないだろう。
下手したら50〜60名はいるかもしれない。
それが、剣や弓で武装して、エルフたちを襲っている。
すでに何名か、血溜まりの中に沈んでいるエルフもいた。
皮肉なことに、赤く染まった死体は、この距離からだと嫌でも目につく。
「………………」
思わず、サリアの手綱を握る手に力が入った。
落ち着け。ここで選択肢を誤れば、残りのエルフを救うことさえできなくなる。
私は、意識して深呼吸を3回行い、心を落ち着かせる。
冒険者を撃退するにしても、残りのエルフを避難させるにしても、まずは氏族長であるジン殿と合流しなくては。
対談のために集落を訪れた父上も、ジン殿と一緒にいる可能性が高い。
私はサリアに命じて、冒険者に見つかるギリギリまで高度を落とす。
すると、ちょうど氏族長用のテント近くにある離発着場に、ジン殿と思われる人影を見つけた。
槍を持って冒険者と戦っている。
また、集落の入口付近にエルフが数十名集められていて、周りを冒険者が見張っていることも確認できた。
おそらく、囚われたエルフたちだろう。
私は再びサリアに命じて、離発着場の端に強行着陸した。
素早くルノアを連れて地面に降り立ち、サリアに空中を旋回して待機するよう命じる。
サリアは心配そうに私の目を見てきたが、私が頷くと、未練を断ち切るかのように小さく鳴いた後、再び空へと飛び立った。
「―――ジン殿!!」
ちょうど、目の前の冒険者を返り討ちにしたジン殿が、私の方へと振り返った。
その腕には矢が1本刺さっていて、激闘の跡が伺える。
「な……!リヒト、なぜここに!?」
ジン殿が驚いて聞いてくる。
「失礼。それよりも、集落のエルフたちの避難状況はどうですか?」
「あ、ああ、そうだな。今は冒険者からの被害を抑えるのが最優先だ。」
私が敢えて落ち着いた口調で話しかけたこともあり、ジン殿も冷静さを取り戻した。
「逃げ延びた集落のエルフはほとんど避難を完了させている。だが、捕まった同胞も多い――殺された者も、たくさんいる。」
ジン殿は歯が軋む音が聞こえるほど、強く歯を食いしばって、呻くように答える。
そうか、逃げ延びたエルフたちは避難を完了させたか。
地獄のようなこの状況の中で、唯一の救いだ。
リヴィアは……どうしているだろか。
彼女のことを考えると、胸の痛みが激しくなるが、今は為すべきことを為さねば。
「捕まったエルフたちは集落の入口付近に集められています。先ほど、サリアに騎乗して、上空から確認しました。」
「なに!?本当か。でかしたぞ、リヒト!恩に着る。」
私とジン殿、ルノアの3人は、囚われたエルフの救出が可能かを確認するためにも、森に隠れながら集落の入口を目指すことにした。




