表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフが築く世界帝国 〜滅びの運命から始める反逆記〜  作者: 神田川 秋人
第1章 滅びゆくエルフたち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/24

第13話 氏族長対談




ルノアとの会話から数日後、私はダートネス氏族の集落へと出発した父上を見送り、勉強へとはげんでいた。


父上が外出した理由は、ダートネス氏族長――ジン殿との対談のためだ。


我がアドランシェ氏族は、ダートネス氏族の飛竜騎乗技術を広める活動を支援しており、この2氏族は、エルフ氏族の中でも特に親密な関係にある。

そのため、定期的に氏族長どうしで対談の場を設けて、お互いの抱える課題や協力事項などについて話し合っている。




――まあ、正直、父上もジン殿も無類の酒好きなので、対談といいつつ、飲み会という側面が強いのは否めないが……。


長命なエルフに明確な成人の区切りは無いが、一般的に15歳を超えると成人として扱われ、100歳を超えると一人前と見なされる。

もっとも、エルフは人間と違い、年齢による上下関係という概念が薄いため、後者については、「100年くらい生きれば、そこそこ経験も積んでいるはずだろう」程度の緩い認識ではあるが。






昼食を挟んで勉強を続けていると、私のいるテントの呼び鈴が鳴った。


誰かと思って出てみると、なんと訪ね人はルノアだった。


「あ、リヒト!突然ごめんね!いま何してるの?」


そう聞いてくる。


「勉強中だ。今日はユウナも友達と遊びに出かけているしな。母上も氏族の寄り合いに出ている。」


私がそう返すと、ルノアはかばんから何やら古めかしい本を取り出して言った。


「じゃあさ!僕も一緒に勉強してもいいかな?ほら、例の――秘密の風魔法のやつ。」

「ん?なんのことだ…………って、まさか!?」


ルノアは口に手を当てて、静かにするよう合図する。


「しーっ!声が大きいって!……今は使われていない、大昔の風魔法を調べ直すんだ。きっと、人族に対抗するための助けになるはず。」


やはりそうか。


使われなくなった技術や知識が失われていくのは世の常だ。

今は戒律により、殺傷目的での風魔法の行使が禁じられているため、直接的な攻撃に使える風魔法は非常に少ない。


だが、戒律ができる前、それこそジン殿が言っていたような、“エルフが兵器として扱われていた時代”の風魔法が復元できれば、ルノアの言う通り、人族に対抗する上で大きな力となる。


なぜ今まで気付かなかったのだろうか。

やはり、ルノアが味方についてくれて、本当に心強い。


「私も手伝おう。2人で取りかかった方が早いからな。」






私とルノアは、ルノアが持ち込んだ古い書物を読みあさったが、さすがに都合よく初回で成果を挙げることはできなかった。


「うーん……今日持ち込んだ本の中には、ヒントになりそうなものはないね。」


ルノアが残念そうに言う。


「そうだな。だが、続けることが大切なのだ。私もなるべく手伝うから、ぜひ声をかけてくれ。」

「うん!よーしっ!僕とリヒト、2人で頑張ろー!」


ルノアのやる気は十分だ。

私も、珍しく気分が高揚している。


そして、2人で次の調査日を話し合おうとした時――






「―――!!」


突然、集落にある広場の方から大きな鳴き声が聞こえた。

明らかにエルフのものではない。


「な、何この声!?」


隣でルノアが慌てふためくのが見えた。

だが、私には心当たりがあった。


この鳴き声は間違いなく――




「ルノア、私は鳴き声がした場所へ向かう。」

「ちょ、ちょっとリヒト!大丈夫なの!?」


私は自宅のテントを飛び出し、鳴き声が聞こえてきた広場へと走った。

後ろから、ルノアも付いてくる。


すると――




「やはり、サリア……!」


広場にいたのは、私の専属飛竜であるサリアだった。

よく見ると、竜舎りゅうしゃの破片と見られる木片が付いている。

おそらく、ダートネス氏族の集落にある竜舎から脱走し、ここまで飛んできたのだろう。


サリアは私を見つけると、その綺麗な瞳で私をじっと見つめて来た。

そして、ダートネス氏族の集落がある方向へと首を向ける。


飛竜はとても賢い生物だが、その中でもサリアは、私のひいき目抜きにしても、頭抜ずぬけて賢い飛竜だ。

竜舎から勝手に脱走するなど、訓練を全くされていない、未熟な幼竜がやるような行為であり、賢いサリアが何の目的もなくやるとは到底思えない。


それを、えてやるだけの理由が――急いで私に会いに来る理由があったのだ。




何だか、胸騒ぎがする。

ダートネス氏族の集落で何かあったのではないか?


「ルノア、私はこの飛竜――サリアと一緒にダートネス氏族の集落を見てくる。ルノアはここにいてくれ。」

「―――えっ!?」


ルノアは何が何だか分からないといった様子で狼狽うろたえる。


だが、私が自分の考えを伝えると――




「僕もリヒトと一緒に行く!」

「ルノア……?」


なんと、同行を申し出てきた。


「言ったでしょ!今度こそリヒトと一緒に戦うって。取り越し苦労かもれないけど、もし万が一の時、戦力は多いほうがいいはずだよね?」


それは確かにそうだが……。


私は一緒迷うが、ルノアはアドランシェ氏族における風魔法の大家たいか、エルミス・アドランシェ家の娘だ。

その風魔法の腕は、私が一番よく分かっている。


「―――分かった。一緒に行こう。」


私はそう言って、一度自宅のテントに戻り、飛竜騎乗用のくらあぶみ手綱たずなを持ってきた。

素早くサリアに装着し、ルノアを連れて背中に騎乗する。


ルノアは飛竜の騎乗経験がないため、転落しないよう、軽くロープで私の体に固定した。


「ルノア、今から離陸する。目をつぶって、私につかまっていろ。」

「……う、うん!」


緊張に体を固くするルノアに指示を出してから、竜笛りゅうぶえを口にくわえる。

そして、そのまま離陸の合図を吹き鳴らした。


私の意を受けてサリアが翼を広げ、飛翔を開始した。

あっという間に、眼下がんかのアドランシェ氏族の集落が豆粒のような大きさになる。


――どうか、私の思い過ごしであってくれ。


私は心の中で祈りながら、ダートネス氏族の集落へと急いだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ