第10話 ダートネス氏族の氏族長
1,000年の寿命を持つエルフにとって、1年という時間はあっという間だ。
私はつい先日、16歳の誕生日を迎えた。
エルフの身体は不思議なもので、20歳頃までは人間とほぼ変わらないスピードで成長するが、そこから先は成長や老化が緩やかになる。
特に、500歳以下のエルフに関しては、見た目では年齢の区別がほぼつかないくらいだ。
もっとも、あくまで寿命が長いだけで、外傷や病気で命を落とすことは、当然のようにあるが。
なぜこのような話が頭を過ぎったかと言うと、この日は飛竜騎乗技術の大家である、アルビオ・ダートネス家の頭領、すなわちダートネス氏族長のジン殿へ面会に来たからだ。
「リヴィア、ジン殿に会いに来た。」
アルビオ・ダートネス家のテント横にある呼び鈴を鳴らすと、リヴィアが出てきたので用件を告げる。
「待っていたわ。さあ、上がってちょうだい。」
今日はあらかじめ来訪を告げていたため、いつかのように取り乱すこともなく、リヴィアは落ち着いた様子でテント内に案内してくれた。
すると――
「おー!リヒト!久しぶりじゃねえか!どうだ?ちゃんと最近、飛竜乗っているか?」
そう笑いながら、リヴィアと同じく赤い髪に金色の目をした堂々たる体躯の男――ジン殿が立ち上がって近づいてきた。
ダートネス氏族長
ジン=アルビオ・ダートネス、その人である。
そのまま握手をして、返事をする。
「いつもご厚意、感謝します。つい先日もリヴィアと竜追いで勝負しましたよ。やはりジン殿の妹君なだけあって、久々に完敗しました。」
後ろをちらっと見ると、リヴィアが「ふふん!」と自慢げに胸を張っていた。
「いいねぇ!いいねぇ!いやー、最近の若造はすっかり飛竜に乗りたがらないし、嘆かわしい限りだ!少しはリヒトを見習えってんだ!」
ガハハ、という擬音が聞こえそうなほど、快活に笑いながら話すジン殿。
ちなみに、他のエルフを指して若造と言っているが、前世の記憶を持つ私からすると、ジン殿も見た目は私やリヴィアとそう変わらない。
だが、実際は200歳を超えており、これでもエルフ社会では若い部類なのだから驚く限りだ。
ちなみに、妹であるリヴィアは、俺の2つ上の18歳になる。
兄妹でだいぶ年齢差があるが、むしろ私と妹のユウナのように、年が近いのが特殊なケースで、200歳くらいの年齢差はよくあることらしい。
「私も、エルフたちはもっと飛竜に乗るべきだと思っています。何なら、全員が習得必須の技術にしても良いと思っています。」
それは本当だ。
飛竜の供給問題さえ解決できるなら、私が権力を握った暁には、ぜひ種族を挙げて取り組みたいくらいだ。
ジン殿は生粋の飛竜バカ――失礼、飛竜に命をかけた熱い男なので、必ず協力してくれるだろう。
「おー!言うねぇ!さすがリヒト!こんだけ見込みのある男は久々だ。どうだ?今すぐにとは言わないが、うちのリヴィアを嫁にもらわないか?」
「―――っ!?あ、あ、あ、兄貴ぃぃぃー!!」
後ろでリヴィアが顔を真っ赤にして狼狽えていた。
いや、おそらくジン殿なりの冗談だと思うが……。
……冗談だよな?




