第3話 まだ、休日は休日だった
目が覚めたとき、スマホの画面は昼前を示していた。
土曜だ。
学校はない。
ベッドの上で一度寝返りを打ってから、起き上がった。
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昼過ぎ、スマホが震えた。
【Tsubasa】
今日ゲーセン行かね?
【Kyo】
行く
【Yuto】
守は?
【Tsubasa】
既読つかん
【Kyo】
まあ、いつもの三人で
それで話はまとまった。
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駅前のゲーセンは、休日らしく混んでいた。
音ゲーの音。
クレーンゲームの電子音。
「久々に来たな」
「守いないの、やっぱ変だよな」
翼が筐体の前で言った。
「インフルとかじゃね?」
「それなら連絡くらい来そうだけどな」
優斗が首を傾げる。
俺も、同じことを思っていた。
守は、無断で音信不通になるタイプじゃない。
でも、それ以上は言わなかった。
言葉にすると、
少しだけ面倒な話になりそうだったからだ。
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夜。
《ビフレスト・オンライン》にログインする。
三人でパーティを組む。
【Tsubasa】
明日さ、守んち凸る?
一拍、間が空いた。
【Kyo】
……行くか
【Yuto】
それがいいと思う
それ以上のやり取りはなかった。
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狩りには出た。
ただ、いつも前に立っていたはずの位置が、ずっと空いている。
被弾が増えて、回復が追いつかない。
一戦終わるたびに、ポーションの数だけが減っていった。
【Tsubasa】
やっぱ守いないときついな
【Yuto】
前が安定しない
効率は悪い。
でも、成立しないわけじゃない。
それが逆に、落ち着かなかった。
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日曜。
集合は昼前。
駅で落ち合って、そのまま歩く。
「ほんとに家凸る流れになるとはな」
「昨日までは冗談だったのに」
守の家は、住宅街の一角にある普通の一軒家だった。
インターホンを鳴らす。
反応はない。
「留守か?」
「車ある?」
ガレージには、車が停まっている。
もう一度、インターホンを鳴らす。
それでも、反応はなかった。
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玄関は閉まっている。
郵便受けには、チラシや封筒が数通、無造作に突っ込まれていた。
多すぎるわけじゃない。
でも、誰かが昨日今日で確認した様子もなかった。
「……連絡するか」
翼がスマホを操作する。
既読は、つかない。
「家族は?」
「知らん」
周囲は静かだった。
生活音もしない。
人がいる気配が、ほとんど感じられない。
「一回、帰ろう」
そう言ったのは俺だった。
ここで何かを断定するには、
まだ踏み切れない気がした。
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帰り道。
三人とも、ほとんど喋らなかった。
昨日までの休日とは、
少しだけ空気が違っていた。
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夜。
《ビフレスト・オンライン》にログインする。
三人は、すぐに集まった。
【Kyo】
昼、家凸ったけど反応ゼロだった
【Yuto】
あれは、さすがに気になる
【Tsubasa】
普通に留守って感じじゃなかったよな
それ以上、言葉は続かなかった。
ゲームの中は、相変わらずだ。
街は賑やかで、
敵は湧き、
経験値は入る。
守がいないこと以外は。
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ログアウトして、ベッドに横になる。
天井を見つめる。
土日は、もうすぐ終わる。
明日になれば、学校が始まる。
何事もなかったみたいに、
いつもの一週間が始まるはずだった。
そう思おうとして、
うまくいかなかった。
理由は分からない。
分からないまま、
目を閉じた。
このときは、
まだ深く考えようとはしていなかった。




