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テンプレ逆張り系

【短編版】実家住みおじさん、私道のど真ん中に湧いた邪魔なダンジョンと配信者どもをヘッドショットでぶっ潰す

作者: CarasOhmi

 令和の始め頃から、日本各地において「ダンジョン」が現れたという話は、今となっては皆の知る所だろう。俺の住んでいる北関東の実家の土地も、その御多分に漏れることなく、ある日突然ダンジョンが生えてきた。


 ダンジョンに眠るのは、産業用途にも用いられる「魔石」と呼ばれる結晶。最初はそれを国が独占管理するため、ダンジョンの湧いた土地はすぐに政府に接収されてしまった。しかし、雨後の筍のようにダンジョンが生えてくる現状では、国に権利を持っていかれることに地権者も反対するようになり、法整備が進んだ結果、ダンジョンの土地や構造物、中に眠る財宝はその土地の所有者に帰属し、必要に応じて自治体が買い上げるようになった。


 じゃあ、俺も実家の資産価値が上がってハッピーだったかというと、そうでもない。ダンジョンが湧いたのは、実家の私道のど真ん中だ。この辺りは車社会だ。この私道を売ったら、買い物に行くために車を出すこともできないし、宅配の車も玄関先までたどり着けない。というか、入り口の祠が邪魔で、何度も車のバンパーを擦っちまった。

 邪魔くさすぎて重機で解体してやりたいのが本心だが、ダンジョンは物理攻撃で破壊できない。いつだったか、ダンジョンに固定資産税をかける法案が出たこともあったが、世論の猛反発にあって潰された。まったく、当然だ。


 ……とはいえ、不便ではあるものの、これだけならまあ生活はできないことはない。だがしかし、このダンジョンにはもう一つ問題がある。それは「ダンジョン配信者」の存在だ。

 ダンジョン内のモンスターを討伐し、異世界考古学的な価値を持つダンジョン内部の映像を記録、魔石を回収して産業を促進する「現代の冒険者」。こう聞くと社会貢献性とロマンを感じるが、とんでもない。奴らがやってることは「山菜泥棒」と何も変わらない。


 まず落ち着いて考えてくれ。そのダンジョンがあるの、誰の土地だ?

 ……俺だよ!いや、正確には親父から土地を相続したおふくろのものだが、山林の管理をしてるのは俺だ。それを、なんで勝手に不法侵入してきた連中に、拾得物を持ち去られ、盗撮映像をインターネットで晒されなきゃならん。


 モンスター退治だって、奴らがやるのは殺処分まで。……それ放置したらどうなる?

 ……腐敗するんだよ!宅配便の兄ちゃんに「窓開けたらやばい臭いしたので……」って通報されたんだぞ!通報したいのはこっちの方だよ!


 極めつけは、その「冒険者自体」だ。幸いにして、ダンジョン攻略に際して「帰還の指輪(エスケープリング)」なる物が普及したおかげで、戦闘不能になった挑戦者はダンジョン内で腐乱死体になることはなく、祠の入り口に送還されるようになった。技術発展は素晴らしいな。

 ……そうだよ!祠の入り口に、ぶっ倒れた不法侵入者が重なってんだよ!おふくろが車出した時、間違って轢きそうになって大ごとになったんだよ!送還するなら自宅まで送れや!俺んちの道で倒れてんじゃねぇよ!


 そんなわけで、俺はリモートワークが終わって日が沈んだら、ダンジョンまで見回りをする手間が増えた。奴らのおかげで、しばらく悩んでいた運動不足がすっかり解消されてしまっている。くそったれ。

 最近じゃコスプレ配信者まで現れやがった。何のキャラか知らんが、エロい格好の女がダンジョンに入っていった。配信者連中に慣れっこになっていた俺も、これには流石にぎょっとした。それから三十分ぐらい後になって、おふくろが入口で倒れてるエロコスプレ女を発見した。見つけて通報したのがおふくろだったからいいが、俺だったら警察にあらぬ疑いがかけられたかもしれん。そういうのは渋谷のハロウィンでやれ。


 散々愚痴ったように、連中はとにかく邪魔だ。どこから嗅ぎ付けたのか、最初に配信者を見かけて注意した日から、加速度的に配信者が現れるようになった。きっと、あのガキが仲間内で共有しやがったんだろう。


 俺は決意した。このダンジョンは、俺とおふくろの平穏な生活を乱す、諸悪の根源だ。必ず除かねばならない。

 ダンジョンは重機でも壊せないが、永遠に存在するわけではない。内部のコアとなる魔石を除去することで、ダンジョンは再び地下深くに沈む。完全攻略をすれば、二度と挑戦できなくなる。そう、有名百科事典サイトにも書いてあった([要出展])

 ならば話は早い。このダンジョンを完全攻略してしまえば、奴らは俺たちの敷地に不法侵入することは無くなる。完璧な計画だ。


 俺は兄弟に招集をかけるべく、グループチャットに投稿した。


 ――「曖昧にしてた、親父の遺産分与を始めるぞ」と。


* * *


「あっ!同業者の方を発見~っ!パーティー攻略してるみたいですね!せっかくなのでコラボ撮影でも持ち掛けてみましょうかw」

 照明の絵巻(ライト・スクロール)の明かりに照らされながら、スマホを持った若者が一人元気にしゃべっている。配信者だな。


「すいませ~ん!あなたも冒険者(ぼうけんしゃ)ですか~?」

「いいや、地権者(ちけんしゃ)だよ」


 俺は魔導猟銃マジカル・ショットガンのフォアエンドを引き、若造の上半身を吹き飛ばした。瞬間、指輪が眩く輝き、若造の身体が光の粒子になり、地上に送還される――


「ええ……カズ兄……初手で人間に発砲するの、人の心なさすぎない?」

「アメリカ流の挨拶だよ」

「……修学旅行の京都が最長移動距離でしょうが」

「ぶぶ漬けじゃ、配信者どもにはお帰り願えないからな」


 さて、俺のダンジョン攻略に同行する頼もしいメンバーは以下の通りだ。

 カッコいい二つ名もスキルもないので覚えないでいいぞ。




・山神カズヒロ(38):長男。俺。実家暮らし。魔導猟銃マジカル・ショットガン装備。

・谷岡フタバ(37):長女。結婚して別世帯に。魔導鉈(マジカル・アックス)装備。

・山神ミツキ(29):次男。大学卒業後、就職して独立。魔導円匙(マジカル・スコップ)装備。

・谷岡ハルト(13):長女の息子(甥)。ダンジョン配信好き。魔導映板(マジカル・タブレット)装備。




 甥っ子のハル坊はダンジョン配信好きということで、攻略ノウハウに詳しかったため連れてきた。教育に悪いからチャンネル登録解除しろと言いたいが、その辺は攻略が終わってからにしよう。へそ曲げられたら困る。


 ハル坊は、手元のタブレットをいじっている。……魔法のタブレット便利だな。ダンジョンまでwifi届くのか。ダンジョンはクソ迷惑だけど、こういう便利な発明だけは許せるな。

「あっ……この人、MOGURA(モグラ)かぁ……結構有名な配信者だね」

「なんかラーメンすすってそうね」

「言ってない暴言で音MAD作られたりしてない?」

「あっ、配信見っけ……、さっきのシーン結構ウケてるみたいだよ」

「やっぱり、『ざまぁ』感のある映像って人気出るのねぇ……」


 ハル坊のタブレットを見ると、まだ配信は続いているようだ。第一村人にショットガンで吹っ飛ばされた光景がウケたのか、赤スパ(10000円)が飛びまくってる。

 ……一瞬、ざまぁみろと愉快に思ったが、これがあのガキの収入になるのかと思うと、腹立たしさが勝る。ダンジョンを掃除して攻略済ましてくれるってんなら、まあ魔石持ってくのは構わねぇけどさ。こういう小遣い稼ぎ目当てで、人の敷地内でギャーギャー騒がれちゃ、たまったもんじゃない。


 俺は、送還されずに地面に落ちたMOGURA(モグラ)のスマホを拾い上げ、画面に向かって一言いい残した。

「こいつがスマホ返してと土下座してる様子は、サブチャンネルをご覧ください」

「そのネタはラーメンの人の方ね」

「言ってないって」


 俺は、アプリを終了し配信を切った。

 ……この俺の発言が、後日音MADの素材となり後悔することになるのだが、今は触れまい。


* * *


「……ってわけでさ、PvPも最近のダンジョン配信では流行ってんだよ。さっきのカズヒロおじさんのヘッドショットがウケたのもそれだね」 

「それ、もうダンジョン配信とかじゃなく、普通に殺し合いで放送事故じゃん……」

「ミツキおじさん、視聴者はいつだって刺激を求めてるんだよ。それこそ、公開処刑の時代からね」

「文明後退してない?もっと平和的に行こうよ……」


 ミツキは、俺とフタバと比べると年が離れていて、ハル坊もよく懐いている。俺やフタバと比べて控えめなこともあり、気安くしゃべりやすい所もあるのだろう。子供に懐かれやすいのは良いことだが、出来ればこいつにも結婚してもらって、おふくろを安心させてやって欲しいものだ。


「あれ?言ってなかったっけ?年内目途で、俺、結婚するよ?」

「えっ……」

「あー、そういやグループチャットじゃなくて、直接私にDMしてたんだったっけか。結納の前らへんで相談受けて、流れでだったねぇ」

「………………」

「別にカズ兄を仲間外れにしたわけじゃないんだよ?でもさ、こういうのって経験者に聞くのがさ……って、カズ兄は母さんと一緒に住んでるだろ?てっきり連絡行ってるもんだとばかり……」

「……あんたに気を使って、黙って顔合わせに行ったのかもしれないわね。人の心配より自分の心配しなさいよ」


 俺は、苦虫をかみつぶした気持ちで、ダンジョンを先導する。配信者だろうと、ドラゴンだろうと、ヘッドショット決めてやる。


南無三(なむさん)……」


* * *


 俺たちが耳を塞ぐ中、フタバはマンドレイクを引っこ抜いて籠に放り込んでいく。地面から引っこ抜くと絶叫して失神させて来るモンスターだ。こいつらも、表に声が漏れて、謎のうめき声として通報されたことがある。焼き払うつもりだったが、酸欠も怖いので、全て手抜きすることにした。


「うへぇ……耳塞いでも声が貫通してくるな……顔も動いてて不気味ったらねぇ……」

「でも、干して粉末にすると美容方面の需要があるのよ。最近じゃフリマサイトでも結構高値つくのよ」

「薬事法とか問題ないのそれ?」

「民間療法みたいなもんだしねぇ……アロエみたいなもんよ」


 耳栓をしたフタバは、不細工なアロエを次々引っこ抜いていく。あまりに叫び声のデカいやつは、腕をぶった切って口に詰めた。……マンドレイクは「は?」って表情をしてるように見えた。感情ないはずなんだけどな。


「あー、ガキの頃さ。鳴き声が出る黄色いニワトリのおもちゃあったじゃん。あれ見てるみたいだな」

「あったあった。中学の頃だっけ?、動画サイトでこれ改造するのはやってたよね。車で轢いたり、冷凍したり、ポンプに繋げたり」

「へえ、じゃあマンドレイクで同じ動画作ったらバズるんじゃない?」

「叫び声で音割れするよ。撮れ高最悪じゃないか……?」

「音声はカットして、アヴェ・マリアでも流しときゃいいんじゃない?」


 俺はマンドレイクを見る。

 ……うーん、散々ダンジョン配信に迷惑かけられた後だし、自分で配信者になる気はせんな。


「ってか、カズ兄ってあがり症だし、配信は難しいんじゃない?」

「……いや、それがこいつも高校の頃は、『モテそうだし配信者目指すか』ってイキってたことあってねぇ。結果は……」

「やめろ」


 やはりダメだ。ダンジョンと配信者は根絶せねばならない。


* * *


「……!!」

「ゴブリンの群れだ!」


 開けた広間。剣と槍で闘う男女と、杖を振り魔法を使う女が二人、ゴブリンと対峙していた。男に斬られたゴブリンは、黒い塵となり地面にしみこんでいき消えていく。

 年の頃は大学生だろうか。ただ、どうにも男に戦闘の負担が集中している。女性陣は、男の剣技に黄色い声をあげつつ、聖職者(クレリック)の格好をした女はスマホでこれを撮影して配信しているようだ。男の(ツラ)は良い。これはアレか。最近流行りのハーレムか。……俺もそう言うアニメとか嫌いじゃないけど、他人がやってるの見ると、めっちゃむかつくな。


「あっ!!そこの方、助太刀(サポート)お願いできますか!?アイテムや魔石は折半で……」

「全部、俺んちのモンだってんだよ」


 俺は、冒険者にヘッドショットをかました。呆然とする女達を尻目にリロードを行い、女冒険者も合わせて次々と地上に「送還」していく。剣と魔法でショットガンに勝てるかよ。社会人十七年目の財力を舐めるな。


「……うっわぁ」

「女の子をヘッドショットはヤバいでしょ……炎上するよ?」

「不法侵入者に男も女もあるかよ。燃やすならまず、こいつらの違法行為を燃やせっての」

「そうは言っても、世間体ってもんがさぁ……」

「……モテない男のひがみも入ってるのよ。そっとしておいてやりなさい」


 俺は、ショットガンをリロードする。次はゴブリンども……のつもりだったのだが 、奴らは攻撃してくる気配がない。それどころか、両手をあげてゴブゴブと嬉しそうに声をあげながら小躍りしている。なぜだ?


「あっ、ちょっと『ゴブリンガル』使ってみる?」

「なにそれ」

「最近出たゴブリン語の翻訳アプリ。AI使ってて結構精度も高いんだよ?」

「微妙に使いどころわからないなぁ……」

 ハル坊が画面をタップすると、ゴブリンのゴブゴブとした言葉が、日本語のテキストとして画面に表示された。


『いや、マジで助かりましたよ!アイツら頻繁にウチに入って来て、生活用品パクってくんです!モンスター退治する分にはいいけど、強盗とか犯罪でしょ?あまつさえ、ネットで映像撒かれるとか、昨今のダンジョン配信ブーム、マジ害悪ですわ!』


「……うわ、すごい所帯じみてる」

「カズ兄と似たようなこと言ってるね」

 うむ、案外気が合いそうだ。……このダンジョンが俺の敷地じゃなかったらな。俺は奴らに向けてショットガンを構えた。


『いやいや、私らだって住処を地上に出す気なんてなかったし、勝手に入ってこられて滅茶苦茶迷惑なんですよ!でも、最深部のコアを操作して、ダンジョンを沈められるの人間だけなんですよ!けど、背に腹は代えられないとはいえね、出会ったら速攻斬りかかってくる強盗を誉めそやして家に入れたくなんてないでしょ?……つーか、言葉通じねぇし!ゴブリンガルだって、せっかくエンジニアが開発したのに、DLしてる冒険者なんて三桁もいってねぇ!話聞けよ!マジで!』


「うーん、ゴブリンも大変ねぇ」

「ゴブリンがネットやってる方が意外だったけど、魔法のタブレットもあるしそういうもんなのかもね」


『……兄さん方なら話も分かりそうだ。このダンジョンを沈めるために協力してくれないかい?なに、「帰還の指輪(エスケープリング)」があるならダンジョンが沈んでも、ちゃんと地上に戻れるよ。さっきみたいに配信者どもをぶちのめして、探索に協力してくれるだけでいいんだ。土日の週二で、完全攻略まで二ヶ月ぐらいかな?アンタらの欲しい魔石の採掘場所も教えてやれるし、副業にはちょうどいいだろう?』


 ……なるほど。採集資源は俺たちのものか。元より土地の権利は山神家のもんだし、後ろめたい所は何もない。車の修理代も稼げるし、ハル坊の進学費用やミツキの結婚資金も入用だろう。

 なにより、配信者どもをボコり放題ってのが最高だ。「ざまぁ」と同じく、「復讐」もトレンドのコンテンツだ。散々煮え湯を飲まされた馬鹿な若造にスカッと展開到来というわけだ。魔石を使って武器も強化して、どんどん地上に送還してやる。

 利害は一致した。俺は目の前のゴブリンと、爽やかな笑顔で握手を交わした。


「うわ、カズ兄、すっげぇ邪悪な笑顔してる……」

「まるでゴブリンみたいよね」

「……母さん、今のはコンプラ的にアウトだよ。翻訳見られたら怒られるから、次からNGね」


* * *


「ねえ、知ってる?このダンジョン……一ヶ月前ぐらいから、すごい凶悪なゴブリンが出てるんだって」

「マジで?……でも、まぁ所詮ゴブリンだろ」

「ちょっとぉ、油断してやられてアイテムロストなんてごめんよ」

「シャーマンだろうとロードだろうと、俺の魔法剣の絶技の前には、大差ねえって。……お前のことは、俺が必ず守ってやるからよ」


 ――やだ、カッコいい……(トゥンク♥)


「ハイ、どーも!!ゴブリンデリバリーから死のお届けでーす!!」


 俺の両手のショットガンが火を拭いた。至近距離から放たれた散弾は、カップル冒険者の上半身を吹き飛ばし、奴らを光の粒子に変え地上に送還した。

 俺は、一昔前のハリウッド映画を見て練習していたスピンコックでリロードを行い、ポーズを決める。隣のゴブリンたちもゲラゲラ笑っている。魔法のタブレットのゴブゴブ生配信に流れるコメントは草一色だ。


 ……うむ!一番恥ずかしいタイミングで送還してやれたな!きっと今ごろ、地上では痴話喧嘩の真っ最中だろう。

 本当は、地上にも監視カメラ置いてツブヤイターに拡散してやりたいと思ってたが、住所バレで配信者が集まったら本末転倒だからな。命拾いしたな、バカップルめ。


「カズ兄さぁ……性格悪すぎでしょ」

「お前だって、マンションの自室の前でカップルがいちゃついてたら、ムカつくだろ?」

「そりゃそうだけど、ショットガンでは撃たないよ……」

「ダンジョンの外だと普通に殺人事件だしな。治外法権ダンジョン万歳だ」

 ……つーか、冷静に考えたらゴブリンぶっ殺して配信してる奴らの方が大分やべぇんじゃねえか?知的生命相手の虐殺じゃねぇか。


 まあ、その辺はゴブリン側でも「死人が出てない」から本格的な問題になってないところもあるんだろうが。

 こいつらも「帰還の首飾り(エスケープチョーカー)」ってのをつけてるらしく、冒険者に殺されても帰還ポイントに送還されるだけで、死ぬことはない。エフェクトがキラキラしてないから普通に死んでると思ってたけど、ちゃんと安全に退散していたようだ。無限湧きの正体見たりって所だな。

 お陰様で、冒険者とゴブリンは毎日楽しく安全に殺し合いだ。ヴァルハラごっこは他所でやって欲しい所だ。


 さて、あと数日で最深部に到達する。今日の参加は有休をとってたミツキだけだが、俺が住み込みで探索したため、想ったより早く攻略も終わりそうだ。ようやく車の修理代も出せるし、気分も上々だ。……確定申告のことは、明日の俺に任せよう。


「魔石の販売収入って『雑所得』でいいんだっけ?」

「うーん、そもそもの話、この土地って親父から相続したものだけど、ダンジョンの拾得物に相続税とかかかんないのかね?」

「一度税理士の人とかに相談した方が良さそうだね」

「脱税になるの怖ぇしなぁ……」


 俺とミツキは、ゴブリンの営む食堂で飯を食いながら、懐中(マジカル)魔導通信具(ポケットwifi)の電源を入れ、ノートPCを開く。時間は朝の八時。あと一時間で始業時間だ。

「すっかり定住してるねぇ……カズ兄の本業のリモートワーク、どこでも働けるのいいよね」

「ああ、ゴブリンたちも配信者どもから守る用心棒ってことで、寝床や食堂を格安で貸してくれるからな。割と居心地いいぜ」


 ゴブリン女将が笑顔でお冷と朝食を運んでくる。今ではすっかり常連だ。何か名残惜しくなってくるな。

「風呂はどうしてるの?」

「天然温泉がある。泉質は草津に近いな」

「うわっ、いいなそれ。……っていうか、ダンジョン沈んだ後は、穴掘れば温泉湧くってこと?」

「……下手に実家を観光名所にしてもいいことねぇよ」

 ダンジョンで既に痛い目を見てる俺としては、温泉だって正直勘弁だ。せいぜい、実家の風呂にかけ流しとしてパイプライン引けたら嬉しいってぐらいだな。


「……さて、じゃあ最深部の攻略計画について、フタバ達も入れてこれから通話会議始めるぜ」

「オッケー、カレンダーには俺が予定入れとくよ。今週の土曜で仮置きね」

 親父の遺した最後の遺産。その分与の仕上げが、いよいよ始まる――。


* * *


 かくして、ダンジョンの最奥部に到達した、俺たち山神家御一行。


 しかし、そこには先客がいた。眼帯をした黒いマントの男だ。また配信者かよ、鬱陶しいな……。

 ……?いや、スマホ持ってないぞ、コイツ。配信者ではないのか。そうなると趣味でダンジョンに潜る探検家か?どっちにしても山菜泥棒の類ではあるのだが。


「ふははッ、残念だったなァ……このダンジョンの『守護者(ガーディアン)』は、俺が倒させてもらった。このダンジョンの攻略報酬『願望機(ホープジェム)』も俺のものだ」

「いや、寝言言ってんじゃねぇ。山神家(うち)のもんだよ。誰の土地だと思ってる?」

「……くだらんな。俺はこれを使って、世界に復讐する!誰にも邪魔などさせるものかっ!」

「……復讐?」

 なんだなんだ。穏やかじゃないな。そんな、復讐だなんて……気持ちいいだけで何も生まないぞ。

「この願望機……これを使えば、どんな望みも叶う!地上の人類を絶望を与えてやれる……俺を軽んじ、コケにしてきた、アイツらに、底なしの絶望をなァ!」

 男は、両手のひらを上に向け、空気を掴むようなポーズで、マントをはためかせながら演説する。……なんで、悪役ってあのポーズ好きなんだろう。下からおっぱいでも揉んでるのか?


「……お兄さん、もしかして、いじめられてた?」

「…………っ!」

「あっ……」

 ハル坊の言葉を受け、眼帯マントは露骨に動揺していた。


「違うッ!俺に嫉妬して、くだらない嫌がらせをしていた奴らを、見逃してやっていただけで……」

「最近はホットラインもあるし、心的外傷は心療内科で相談した方が良いと思うよ。適切な治療もあるんだから、一人で悩んじゃ駄目だよ」

 ハル坊は、眼帯マントをなだめるように語り掛けた。タブレットでいじめホットラインのURLを打ち込み、奴に向かって見せていた。


「……詳しいな、ハル坊」

「友達の兄貴が不登校になってさ。学校教育って、付き合いたくない子とも一緒にいることになるじゃん?その人は、通信制に移ったんだって。今では、ゲーム配信で友達作って、徐々に立ち直ってるって聞いたよ」

「流行りのダンジョン配信じゃないんだ」

「そっちは体力要るしね。趣味も人それぞれってことだよ」


 俺は、手でメガホンを作り、眼帯マントに呼び掛ける。

「……聞いたかー?大規模テロなんてやめろーっ!それはそれとして、ここは山神家の土地だからさっさと退去しろーっ!」

「……五月蠅(うるさ)いッ!今さら世俗になど従えるかッ!邪魔立てするのなら、まずは貴様らから葬り去ってやるッ!」

 眼帯マントは眼帯をずらした。その奥には魔法陣の刻まれた瞳が輝く。……あれは、魔術の術式を仕込んだ魔術色眼鏡(マジカルカラコン)……空中に輝く魔法陣が展開され、攻撃魔法が来る!


 俺は……フタバは……ミツキは……俺たち山神兄弟は――――







 ――――奴に向かって魔導対戦車擲弾発射筒(マジカルRPG-7)を構えた。


「えっ……」

 眼帯の青年は口を開けて呆然としていた。


「……いやね、流石の俺もさ、配信者にこれ撃とうってんじゃなかったんだよ。お前さんの倒した巨大ゴーレムいるじゃん。『守護者(ガーディアン)』ってやつ。元々はそいつにこれを集中砲火するつもりだったの」


「ちょっと値は張ったけど、魔石収集で副業としては十分な稼ぎになってたし、大事を取って火力は整えていこうってことになったのよね。経費扱いになって税金も抑えられるし」


「いや、本当、ごめんね……?けど、君もガーディアン倒せるわけだからさ、手加減はできないでしょ?それに、願望機使って大規模テロってのは、流石に見過ごせないかなって。まあ、地上に帰ったら相談乗るから、送還されたらそこで待っててもらえる?……いや、本当にごめんね?」


 俺たち三兄弟は、片膝をついて引き金を引いた。眼帯マントの魔法陣は発動することもなく、尾を引きながら飛来するミサイルの爆風で、跡形もなく粉砕された。そして、粉々になった奴自身もまた、光の粒子となり地上に送還された……。


南無三(なむさん)……」

 大人の財力の前に無慈悲に砕かれる若者の悪の野望を前に、同情する様にハル坊は手を合わせた。


* * *


「へえ、ミサイルでも傷がついてない……すごいね『願望機(ホープジェム)』」

「七つ揃えなくても、願い叶うのかしら」

「ゴブゴブ」

「あっ、翻訳入れるね」

 ハル坊がタブレットをタップし、こちらに画面を向けた。案内役のゴブリンの声を拾い、テキストが表示される。


『ダンジョン攻略者に与えられる報酬っすね。一つでも、ある程度の願いはかないますよ。本来だとさっきの眼帯マントに使用権が与えられたのかと思いますけど、まあ他の攻略者に奪取されたってなると、お兄さん方のものってことになるんじゃないですかい?』

「うわぁ……なんか、ウチの土地のものとはいえ、少し申し訳ないな……」

「まあ、テロに使われるわけにもいかないし、しょうがないでしょ」

 確かに、その通りだ。大いなる力には、大いなる責任が何とやらだ。あの若造の無責任な復讐で、大規模テロに巻き込まれたんじゃ、一般市民も溜まったもんじゃないだろ。

「……そうかぁ、なんか、雑に世界救っちゃったみたいだね」

 そこら中でこんなこと起こりかねないのかと思うと、冷や汗出るな……自分の家の庭に核ミサイル埋まってるみたいなもんだぞ。


「で、どうする?国に買い取ってもらって、売値を三等分するか?」

『……国に願望機持たせるのも、それはそれで怖くないですかい?』

「あー、確かにな。なんでも叶っちゃう力を国家権力にってのはなぁ……そもそも国がもっとしっかり対策してくれりゃ、こんな苦労することもなかったわけだし」

 俺は、これをどうするか頭をひねる。雑な願いでも叶えちまった方が後腐れはないが、兄弟で骨肉の争いをするのは、ダルいなぁ。


「あー、俺は結婚資金も手に入ったし、好きに使って良いよ」

「それなら、私もハルトたちの進学費用溜まったし、好きにして良いわよ。大学までなら私立でも問題なく行かせられそうだし」

「僕も、特に今欲しいものはないかな。今回の手伝いで小遣い十分もらったし。カズヒロおじさんの好きなことに使ったら?」


 ……うわ、みんなやさしいな。家族でどろどろの奪い合いも覚悟したが、こんな欲のない家庭だったのか。……というか、魔石の売値がデカいな。単純に金で叶う願いなら、おおよそ叶う額になっちまった。二人の直近の願いである結婚と子育てはもとより、中学生の望みなんて大抵叶っちまう。


 ……俺はというと、二人と比べてライフステージが進んでいない。元より実家暮らしで金は使わなかったが、今回の一件の取り分を考えると、また無駄に資産を持っちまった。老後も心配ないぐらいだが、それはそれで夢も何もなく、何とも虚しい。


 ……叶えたい願いは、正直ある。金では叶わない、俺の願いが。


 俺は、願望機に手を触れた。

 周囲が暗くなり、輝く人型のシルエットが浮かび上がる。三人は、俺が何を願うのか、静かに耳を傾けていた。







 ――――迷宮を攻略せし勇者よ。汝の願いを叶えよう。

 ――――望みを言うがよい。







「……猫耳の、やさしくてかわいいお嫁さんをッ!俺にッッッ!」







 ――――え、えぇ~……?

「うわっ……」

「うわぁ……」

「キッツ……」

「ゴブ……」


 ……仕方ないだろ!ライフステージ進んでるお前らと違って、こっちはもう独身のまんま四十路が近づいてるんだよ!田舎の実家住まいの長男なんて、婚活市場でも避けられる!こちとら、おふくろに「結婚はまだか?」といびられる毎日なんだよ!

 だからって、こんな山中におふくろ一人にするわけにもいかないだろ!土地に縛られた俺には、こんな機会も無きゃ、嫁さん貰える機会も無いの!


「あー、だからカズヒロおじさん、カップルやハーレムパーティーに厳しかったのね」

「大分、私怨も交じってたんだなぁ……流石に俺も引くわ……」

「報酬で嫁さんを望むとか、女をトロフィーだと思ってるんじゃないの?これまでの暴れっぷりを見ると、DVとかしないか心配だわ」


 言いたい放題、好き勝手なこと言うなよ!俺は根っからの純愛派だ。リモートで家事をする時間だって取れるし、嫁さんとはお互い家のことは助け合って、仲良く暮らしていきたい。


「百万歩譲って『嫁さん』は良いわよ。『猫耳』って何よ。欲出すぎでしょ。もう四十路近いのに夢見てんじゃないわよ……」


 ……は?猫耳は最高のチャームポイントだが?現実の人間に生えてない方がおかしいんだよ。


「きっしょ」







 ――――えっと、じゃあ、猫耳のかわいくてやさしいお嫁さん、でいいの?


 えっ、本当に叶うの?


 ――――うん、まあ、上位存在だしね。

 ――――でも、流石にその為だけに生物作るのは、倫理的にも良くない。

 ――――境遇的に保護を求めてる異世界の子を招致するから、保護してあげて。

 ――――「お嫁さん」については、お互い大人として、自由恋愛ってことで。

 ――――くれぐれも、酷いことはしちゃだめだよ。


 えっ、えっ……?マジで?半ばヤケクソだったのに……


 ――――苦情来たら別世界に送り帰すことになるから、大事にしてあげてね?


 そんな、えっ……ちょっと、心の準備が……


「上位存在、話が早いなぁ……」

「これ、別に眼帯マントに使わせてもテロとか起こらなかったんじゃない?」

「ハルくんと同じで、ホットラインと医師を教えて終わりだったかもね……」


 ――瞬間。

 願望機が光の軌跡と化し、俺たちの足元に、巨大な魔法陣を描いた。足元からあふれた光の粒子は渦を巻き、中心に集積し、足元から人の形を形作っていく。

 やがて、その輪郭はハッキリとしたものに変わり、徐々に光は収まっていった。


 質素でぼろぼろの布のワンピースに、不似合いなほどに高級感を感じさせるサラサラの長い銀髪。ダークグレーの猫耳としっぽ。澄んだブルーの瞳。

 そして、その肌の色は……白とライトグレーで……フサフサの毛に覆われていた。


「ここ……は……?」

 彼女は、かわいらしい肉球で、顔を洗うように目をこすった。


 けも耳じゃなくて、ケモそのものじゃねーかッッッ!!


 ……そう叫びたい気持ちを、俺はぐっと我慢した。どうやら、欲にまみれた俺であれ、最後の良心までは捨てられなかったようだ。


* * *


 ダンジョン攻略から三か月。かつての迷宮は地中深くに沈み、ようやく実家に訪れる配信者はいなくなった。

 とは言え、しばらくは「ダンジョンが無くなったと知らない」配信者もやって来て、ダンジョンを探してうちの玄関先までやって来る若造もいた。そのたび「ダンジョンは完全攻略した」と追い返していた。最初は疑われたものだが、転機もまた配信だった。ダンジョン配信者のインタビュー企画をやっているライターがウチを訪ねてきたのだ。家族ぐるみでダンジョンを攻略したという話は、大分キャッチ―だったのだ。

 俺は、そこで現代ダンジョン配信がいかに迷惑な行いか、メディアはマナーの啓蒙をすべきだと主張した。これで、世の中の迷惑配信者に釘をさせるだろうと考えていたのだ。


 ……ところが、読者の関心はそこではなかった。一緒にインタビューに答えた、俺の婚約者の猫美人「レイチェル」のビジュアルが、読者にとってあまりにキャッチ―過ぎたのであった。

 今では、世の中のケモナーたちがこぞってダンジョン攻略に挑んでいる。ニュースサイトをスクロールするたび、「イヤな潮流を作ってしまったな」とげんなりする。人買いじゃねーんだぞ。


 ――あっ、いや、レイちゃん(彼女のことはこう呼んでいる)がイヤとか、召還を後悔してるとか、そういうんじゃないんだよ。本当。

 こう、さ。人道的な話というかなんというか、人の弱みに付け込んで、彼女作ろうなんていけないことだよなって。


 ……俺が言えた義理でもねぇやな、うん。

 流石に「願望機に嫁さんを願った」というのは、あまりにも世間体が悪い。なので、対外的には「現住ゴブリンと協力し、悪い魔物に捕らえられていた所を助けた」というストーリーにした。

 ……実際として、レイちゃんの境遇はそれに近い所があったので、俺の召還により悪い奴らから完全に逃げることが出来たということで、感謝されてる。正直、冷静になった今、経緯を思い返すと大分アレだが、彼女に悪く思われていないことには心底ホッとした。

 そんなわけで、彼女には実家で衣食住を提供して保護していた。嫁がどうこうは正直なかったことにしてもいいと思っていたのだけれど、それでも俺とレイちゃんとは自然と恋仲になっていった。まさか、自分のヘキにまだ開けて無い扉があったとは、四十歳を前にそれを開いてしまうとは……、驚くことばかりである。


 おふくろとレイちゃんの仲は悪くない。元よりいい子で働き者というのもあるが、単純におふくろが猫好きという所もあり、隙を見ては、猫なで声で彼女に近づき、恋仲である俺以上にスキンシップを取ろうとしやがる。そして「レイちゃんじゃなくてお前が働け」と蹴りを入れて来る。前より元気になったのは良いが、蹴りを入れるのは辞めろ。あと、人の婚約者を吸おうとするな。


 そんなこんなで、まあ俺は前までと比べれば平穏に過ごしている。最近は「副業」も順調だしな。


「カズヒロさん、みんな集まってますよ」

「あっ、じゃあウィンドウをモニターに移してくれる?」

「はぁい♥」


 レイちゃんが肉球でマウスを操作すると、ビデオ通話の画面が居間の大画面テレビに映った。フタバとミツキだ。……あれ?ハル坊は居ないのか?

「……この間、レイちゃんと遊んでもらった時から、様子がおかしいのよね。美人のおばさんに恥ずかしがってるのよ、きっと」

「あー、なるほど……お年頃だねぇ」

「もう、やだ……フタバお姉さんったら……♥」


 ……どうやら、ついに甥っ子の性癖を破壊してしまったようだ。すまんなハル坊。だが、人の婚約者に色目を使うな。しばくぞ。


「じゃ、次の案件についてだけど、長野県の私有地に発生したダンジョンの攻略だって」

「ある程度マッピングは済ませてるみたいだし、残り53%ぐらいかしらね?」

「ん~……現地住民については?」

「コボルトみたいだけど、ゴブリンガルでももうすぐ言語対応するって話だね。冒険者ともあまり激しく敵対してないみたいだし、交流の余地ありかな」

「よし、じゃあ俺とレイちゃんで下見して、契約するかどうか判断するよ。今から必要な資材あったらリストアップしといてな」

「了解~」


 俺は、レイちゃんに引っ付こうとするおふくろを牽制しながら、車庫に向かった。おふくろの愛車の修理とは別に、新しく買った副業用のワゴン車。ひとまずとして、ショットガンとレイちゃんの使う魔導杖(スタッフ)を後部座席に積んだ。スライドドアを閉めると、俺たちの副業のために建てた法人のロゴステッカーが、半分に分割された状態からひとつに合わさる。


 【 (株)山神ダンジョンスイーパー 】


 この会社はダンジョンの「掃除屋」だ。業務内容としては、ダンジョン内のマッピングと資産回収、現住種族との折衝、悪質な害獣の駆除と死骸の処理、迷惑配信者の追い払いなど。つまるところ、今回行ったダンジョン攻略を、そのまま仕事にしたようなものである。

 世間には、ダンジョンが溢れている。だが、それで困ってる人間も少なからずいるのが現実だ。俺たちの仕事は、それらを解決することで報酬を得ているというわけだ。きっと、これからは競合も増えていくことだろう。


 今回の契約がまとまったら、この車でフタバやミツキ、ハルトも、現地まで送迎する予定だ。仕事が減った時は、この車で車中泊で旅行などをするのも悪くないと思ってる。……いや、ロゴもあるし悪目立ちするかなぁ。プライベートは別にキャンピングカーとか買った方が良いか。


「ふふ……ハネムーンが楽しみですね。がんばりましょうね、カズヒロさんっ♥」


 助手席に乗り込んだレイちゃんが、からかうようにひんやりとした鼻を俺の頬にくっつけ、ぺろりと舐めた。

 ……彼女は、家族みんなの前では結構ネコを被っている。……決して悪女ではないけれど、二人きりになると時々こうやって俺をからかって遊んでくる。だが、それもまあ、俺にだけ見せてくれると考えると、決して悪い気はしない。


 ……ハル坊に見せてたりしたら、俺の脳が破壊されそうなので、俺だけにしてね?


 おふくろと俺の老後資金は既に溜まった。だが、もう一人分には心もとない。

 それに、これから何かと金は入用なんだ。指輪も、式場も、旅行代金も……一生に一度のイベントだ。いざとなればフタバやミツキに相談してもいいが、ここは長男坊のプライドとして、一人で全部準備して甲斐性を見せたいところだ。そうじゃなきゃ、レイちゃんにもおふくろにも、頭が上がらなくなっちまう。


 俺は、レイちゃんがシートベルトを締めたのを見て、アクセルを踏んだ。

 夏に差し掛かった青空には入道雲が浮かぶ。今日も、絶好の避暑(ダンジョン)日和だ。





 ――――【了】――――

















◆本日のパーティーメンバー


・山神カズヒロ(38):

   長男。俺。実家暮らし。レイちゃんとの結婚資金を貯金中。

   本業はアプリ開発の受託。ダンジョン内でリモートワークも。

   魔導猟銃マジカル・ショットガン装備。前衛で迷惑配信者の強制送還を担当。

   レイちゃんが大好き。……ケモナーの資質には気付かなかった。


・山神レイチェル(26):

   俺の婚約者(既に対外的には山神姓を自称)。

   現在実家で同居中。既に新婚気分。おふくろとの仲も良好。

   魔導杖(スタッフ)装備。サポート魔法で探索のお手伝いを任せてる。

   家族に憧れていたらしく、俺とおふくろ、義姉兄、みんな大好き。


・山神ユキエ(65):

   俺の母。これからレイちゃんの義母にもなる。

   司令塔として、リモート通話で時々連絡を入れて来る。

   ぶっちゃけレイちゃんの顔が見たいだけ。大人しく家で待ってろ。

   子供と孫、嫁と猫が大好き。……挙式前から孫を急かすな。






https://ncode.syosetu.com/n8460kz/

【連載版】では、分割&番外エピソードも読めます!

ネコケモ娘のレイちゃんとの馴れ初め&おふくろも交えた、ドタバタ家族ダンジョンラブコメです!




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― 新着の感想 ―
上位存在はケモ度が低いのを認めないタイプだった
有無を言わさずぶっぱに笑いました。勢いがいい、殺伐としてるけどwそっちの猫耳来ちゃったかあ、でも全身触り心地よさそうだよねー。
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