第1話 全ての始まり
どうも、頭カカエルです。
由里(♀)が恋を求めて異世界へ!
本当はイケメンにモテたいのに、何故か美女ばかりが好意全開!?
百合系ギャグファンタジーです。
恋と笑いと、ちょっぴり成長物語。
少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです!
春。それは出会いの季節。
新たな高校で、次の出会いに心を躍らせながら私、愛浦 由里はルンルン気分で校門をくぐった。
「高校こそは、イケメン彼氏を作ってやる!」
今の私は、中学の頃とは違う。
オタク女子だったあの頃とはサヨナラ。
垢抜けもして、自分磨きだって頑張った。
……今度こそ、恋がしたい。
——あの頃(中学時代)
「マジ由里って、ド○クエ好きなの? 女子なのに珍しいな」
「うん、配合とか、ステータス上げるの楽しくて、けっこうやり込んでるよ」
彼が、私の初恋だった。
ゲームや漫画が好きで、女子の中ではちょっと浮いていた私が、唯一よく話してた相手。
「激アツじゃん! 今度、俺の家で一緒にやろうぜ」
「いいよ、やろ!」
そんな風に、趣味も合って、自然と仲良くなっていった。
気づけば私は、彼にどんどん惹かれていった。
——そして中学の卒業式。
私は、彼に告白することを決めた。
「——君のことが、ずっと前から好きでした。付き合ってください!」
沈黙。心臓の音だけがうるさくて、顔なんて見られなかった。
でも、返ってきた言葉は。
「ごめん由里。俺、お前のことはいい友達だと思ってるけど……女としては見れないんだ。友達のままでいてくれ」
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そして現在至る。
その経験があったから、私は変わる努力をした。
ダイエットも、話し方も、全部「モテるため」に頑張った。
高校デビューは、絶対成功させる!
そう決意を固めたそのときだった。
目の前の交差点に、まだ小さな子どもが歩き出した。
……そこに、暴走した車が迫っている。
危ない、そう思った時には、もう走り出していた。
視界が赤く染まり、全身に痛みが走る。
目の前には、ありえないことに私の足がある。
ああ、これ、もう助からないな。せっかく高校で……頑張ろうと思ったのに。
でも、子どもは無事みたい。……よかった。
「はぁ……恋びと、欲しかったな……」
その言葉を最後に、私の意識は遠のいて、二度と、目覚めることはなかった。
はずなのに。
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「目覚めなさい」
声が聞こえる。
「目覚めなさい、勇者よ」
え?なんだって、私プロローグで「二度と、目覚めることはなかった」って言ってるんだけど、どんな顔で目覚めればいいの?
……てか助かったの?
「目覚めなさい!!」
「わかったよ、うるさいな、怪我した後なんだから、もう少し寝かせてくれてもいいでしょ、お母さ、え?誰ですか?」
目を開けた時に見たのは、天使の羽が生えた、金髪の超美形の女性だった。
周りは眩い光に包まれた、神殿のような場所だった。
「よく、目覚めましたね。
勇者よあなたは死んでしまいました、でも子供を身をていして救おうとするその勇気と覚悟。
私は感動いたしました。その褒美として、あなたに第二の人生を与えましょう」
そういう設定はよく聞く。
ゲームでもラノベでも定番だ。
でもまさか、自分がその“主人公枠”に選ばれる日が来るなんて……!
「すみません、質問が三つほどあるのですが……いいですか?」
「ええ、どうぞ」
女神はにこやかに答える。
くっそ、こんな美人に笑顔向けられると何も言えなくなりそう……でもここは遠慮せずに!
「まず一つ目に、あなたは誰で、ここはどこでしょうか?」
「二つ目、私の第二の人生はどんな場所で産まれますか?」
「三つ目、さっきから“勇者”って言ってますけど、まさか魔王と戦えとか言いませんよね……?」
女神は腕を組みながら、しばらく考え込んで答えた。
「順番に答えるわね」
女神はひとつ、指を立てる。
「まず一つ目の質問ね。
私は女神、リリアン。そしてここは天界市役所・転生受付課よ。善き行いをした者に、最適な転生先を案内する機関なの」
「二つ目の答えは。
あなたの第二の人生は、剣と魔法の異世界。世界観は……まぁ、大体ド○クエよ」
「そして最後の答えは。
戦いはあるけれど、一つだけ“好きな能力”を与えるわ。
それに、その世界を支配している魔王を倒せば、あなたのどんな願いでもひとつ叶えてあげる。
でも、どう生きるかは、あなた自由、あなたの人生なんだから」
……まじか。
ド○クエは好きだよ? でもさ、実際に戦うとか聞いてないんですけど!?
でも、私は考えた。名案を。
もらえる能力をアレにすれば、戦わずに異世界ライフを謳歌できるのでは!?
「わかりました! 私に能力をつけて転生させてください!」
「ふふっ、思い切りがいいのね。で、どんな能力にするの?」
「“美女でモテモテにしてください!!”」
この能力なら、貴族のイケメンを捕まえて、イケメンパラダイス+玉の輿で、異世界を謳歌できる我ながら、ゲスいが完璧な作戦だ。
「OK、それじゃあ行ってらっしゃい。次の人生、楽しんでね〜」
眩い光が下から差し、私の意識が再び遠のいていく。
そして由里の魂は天界から消えて新たな世界へと旅立った。
だが一つ女神はミスを犯していた。
(あっ……やば……!)
(固有スキル欄、「美女でモテモテ」じゃなくて……「美女“に”モテモテ」**って書いちゃった……)
それが、すべての始まりだった。