第一の試練
「さて、私の話を聞いてもらおうか?」
俺に蹴り飛ばされた尚大がなんとか意識を取り戻し、俺に謝罪した後、Xはそう言って皆の注目を集めた。
「これから君達には僕のゲームに挑戦してもらう。安心してほしい。このゲームで死亡というものはない。死んでも蘇らせるよ。まず最初の試練は、隠された宝箱を見つけろ!トレジャーハント!」
「なんだそれ?」
「これから君達を広大なエリアに連れて行く。そこには人数分の宝箱が隠されている。それを見つけて触れることができたら、ここに戻ることができる。それができたら今日は終わり。試練は合計で7つ。さぁ!行ってみよーう!」
「お…おい。」
クラスメイトの呼びかけを無視してXは、俺達をゲームの世界へと転移させた。
俺達が連れてこられたのは、森の中。
どんな場所かはわからないけどさっさと済ませたほうが良いな。
どうするか…
とりあえず俺は、◯ーバーロードの闇の支配者の能力をフルコピーする。周りには聞こえない声で…
「第2位階魔法 ホークアイ(鷹の目)」
俺はとりあえず、近くにある宝箱を探す。
ここから、1kmの場所に1個あるな。
そして今度は、ちゃんと声に出して…
「第2位階魔法 レッサー・ストレングス(下級筋力増大)、レッサー・デクスタリティ(下級敏捷性増大)」
「は?大輝お前何言って…」
俺は飛び上がり、近くの大樹の幹に飛び乗ると他のクラスメイトに向けていった。
「俺は先に行く。お前らもさっさと探せよ。」
俺はそれだけ言い残し、その場を後にした。
目的地にはすぐに着いた。奴の言っていた通り、宝箱に触ると…
『宝箱が発見されました。発見者は、冴島大輝。対象者は帰還します。』
「お前…それで良いのか?」
「なにが?」
「クラスメイトと親睦を深めるとかさ。」
「俺がやり直したかったのは、皆と遊びたかっただけだ。仲良しこよしで宝探し?やなこった。俺はさっきの部屋で対人戦闘の訓練してるからな。用があったら呼んでくれ。」
それから2時間後…
Xは俺のところに来て頭を下げてきた。
「君以外が全く戻ってこない。そろそろ夜になる。あのエリアには流石に第一試練なだけあって凶暴な動物は居ないけど、猪とかはいる。怪我人がでないように焚き火とか寝られる場所を作ってやってくんないか?」
「お前、ほんとに面倒見が良いな。ほっときゃいいだろうに。」
「せっかく作ったステージをそのまま捨てるのはもったいないし…」
「なら、飯も用意しといてやれよ。コンビニ弁当でもいいから。あぁ、それと俺のことはお前からの要望で協力しているだけで、宝探しへの協力はできない旨伝えておけよ?」
「わかった…伝えておく。」
「…というわけで、彼には君達の後方支援をしてもらうことになった。試練自体には助力は許可できないからね。じゃあ、大輝くん。よろしく。」
「あいよ。第4位階魔法 クリエイト・ベース(拠点創造)。中には全員分の仮眠用のベッドと全員分の弁当と水が用意してある。各自、自分のタイミングで取るように。じゃあ、俺は帰るから。」
俺はやることをさっさと済ませると、帰路につこうとした。すると…
「ちょっと待って!」
26HRの女子メンバーのリーダー格である白川花恋さんから呼び止められた。チア部の部長を務める彼女はとても綺麗で学年のマドンナ的存在。ただ、気が強いから俺は当時からあまり好きではなかった。
「なに?」
「手伝ってよ。」
「さっきの連絡聞いてなかった?直接協力はできないの。あくまでも後方支援だけ。」
「なら…大輝君はどうやって探したの?」
「チュートリアルをオールクリアした報酬でもらった能力の中に千里眼ってやつがあって、それで一番近い宝箱を探しただけだ。」
「なら、それを使えば。」
「あぁ。それを使えば、直接的協力になっちまうな。」
「バレないでしょ?」
「ダメですよ〜。バレバレですぅ〜。あくまでも彼は君達の協力をする立場にあるだけ。彼がさっさと見つけられたのは、チュートリアルをクリアしたからであって、このゲームのルールは僕が決めてるんです。」
「まぁ、そういうことだ。じゃあ、頑張って探してくれ。まあ…簡単なヒントを挙げるなら、これはあくまでも第一試練だ。皆が想像している以上に簡単なところに宝箱はあるし、宝箱の大きさは均一じゃない。勿論小さいのもある。これから言えるのはこれくらいだ。じゃあな。」
「やればできるじゃん。」
「待機してるのもそろそろ飽きたんだよ。」