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「Have a nice day!」
ようやくチェックアウトおわった…
本当に旅館の朝はたいへんだ…。
会社員から昔から憧れてた宿泊業界に来たのはいいものの、毎日大変なことばかりだ…
「今日も疲れた…シャワー浴びたらさっさと寝よ。」
…そんな人生に刺激を与えよう!
「ん…朝か?」
周りを見渡すと…寮じゃない!
俺は急いでカーテンを開けた。
俺の視界に広がっていたのは、懐かしい光景。これは、高校の修学旅行で来たグアムのホテルから見た景色…
だが、部屋の中には俺しかいない。
それも荷物はなく、服装は寮で寝ていたパジャマのままだ。
どういうこと?
高校を卒業してからもう10年近く経過している。同級生にもほとんど会ってない。連絡を取ることはあるけどそれくらいだ。
ふと…背後に気配を感じる。
俺は霊感が強すぎる兄の影響で、霊の実体は見えはしなくても近づいたらまずい場所とかオーラを感じることができる。
そんな俺からして、とても悪いオーラが背後に感じている。
「気づいているだろう?君は最近の生活に退屈していないか?そして後悔しているだろう?高校時代、あの子に告白しておけば良かった。もっとクラスメイトと話しておけば良かった。もっと楽しむべきだったと。」
「確かにそんな思いを持つことはあったが、それは卒業時期のころだ。今は別に。大学はその分楽しんだしな。」
奴の気配がだんだん近づいてくる。
俺は勇気を持って振り返ろうとした…
「振り向くな。そのままで聞け。」
「なに?」
「お前には特殊な能力を与えた。」
「能力?」
「お前の思い描く力を手に入れることができる。何でもできるぞ?当時お前が好きだった女性をお前にゾッコンにさせるとか、好きな女と関係を持つとか。有名なスポーツ選手と同じ身体能力を手にするとかな。」
「そんなこと…」
「忘れたのか?これはあくまでもお前の夢の中で発生していることだ。何をしてもリアルには反映されない。」
「ならなんでこんなことする?」
「さっきも言ったがここで起きたことはリアルには反映されない。だが他の生徒の夢に影響を与えられる事はできる。」
「なに?」
「言い方は汚いが例えば、お前がある女子生徒とこの修学旅行中に毎晩ヤリまくったとする。その女子生徒は、夢の中でそういう行為をしたという記憶と、君とそういう事をしたという記憶が残る。どうして君と?なぜ?と、疑問に思ってもあくまでも夢の中の話。本気にするやつは居ない。だが、その夢が何度も見ることになると…もしかしたらそういう世界線もあったのかもしれない…。そう思うようになる。だから好きにやればいい。」
「だからそれをしてお前になんのメリットがある。」
「勿論、ただお前が楽しんでも俺は楽しくない。だからこれからお前が使う場所はグアムであって、グアムでない。」
「…は?」
「つまり、グアムっぽい場所だ。まぁ…グアムにジャングルとシンガポールを合体させた感じ?もはやめちゃくちゃだが、6泊7日の生活ってわけだ。」
「そこで何を?」
「俺はS〇Oの〇場晶彦みたいなもんだ。」
「あれはゲームの世界だろ?しかもアニメの世界だ。」
「だから、それを現実にするって言ってんだ。6泊7日と言ったが、ボリュームがそれくらいなだけでその期間にゴールできるわけではない。クエストやゴール条件は幾つもある。」
「なんかめんどくさそうだな。」
「別にクラスメイトと関わりたくないなら、さっさとクリアしてくれてもいい。それはそれで楽しそうだ。」
「食事とか、宿泊とかどうすんだよ。各チェックポイントを設定してある。そこに高級ホテルを設置してある。食事も無料。」
「クリアさせることが目的で、自炊させるわけではないんだな?」
「勿論。そこはセーブポイントみたいなもんで、安全地帯だ。」
「そもそも、お前はなんて呼べば良いんだ。」
「ん…そうだなぁ〜。『X』って呼んでくれ」
「なら、楽しませてもらうよ。X」
「なら、スタート地点に移動するぜ。」
「どこだよ。スタート地点って。」
「勿論空港だ。巻き込むのは、生徒たちだけ。存分に楽しんでくれ給え。」
「フィッシャー!おい、聞いてるか俺の話。」
移動するって空港を歩いている自分自身に意識を移動させるって意味かよ。
俺に話しかけてきてんのは、俺と下の名前が一緒の山本大輝だ。陸上部の100mのエースだったんだよな。こいつとは意外と仲良かった。
「悪い悪い…ぼーとしてたわ。」
「まぁ…まだ夜中だしな。確か合宿も誰よりも早く寝てたよな。」
「そりゃそうだろ。合宿なんて疲れ果ててたんだ。」
「疲れ果てたってお前ピンピンしてたじゃん。」
「見た目はだろ?」
「ハハハ(笑)」
こいつとのおしゃべりは気を使わなくていいから楽でいい。起きたら久し振りに連絡取ってみようかな。
先頭がいきなり止まった。
「おい!ドアが開かねぇんだけど?」
「なわけねぇだろ。」
「いやあかないんだって!」
やることが狡いなぁ…。ここからスタートってか?
『グッっっっモーーーニーーーグ!!!』
大音量の放送が空港内に響き渡った。
俺達が立っていたはずの床が真っ白の空間へと変わった。
『君達は選ばれた…僕のゲームへの生贄に!』
「は?何いってんのこいつ。」
「これ、夢だよね…?」
『いや?現実だよ。別に殺し合いさせるわけじゃないよ。でもただ旅行してもらうわけじゃない。色々なクエストに挑戦してもらう。ゴールに到着すれば、グアムに戻してあげるよ。』
「ゴールってなんだよ!なんで俺たちなんだよ!」
『たまたまだよ。たまたま僕がこんなゲームを計画していたら丁度良い生贄が来てくれた。君達は運が悪かった。それだけ。』
「な…何させるつもりだよ。」
『色々だけど最後は、復活した魔王の封印かな。想像できないと思うから、とりあえずチュートリアルを始めてみよう!それじゃ、行ってみよーう。』
その言葉が聞こえた瞬間、俺たちはそれぞれが1人ずつ分けられ、違う真っ白な空間に移動させられたようだ。
俺の場合は部屋の真ん中にこたつが置いてある。そこに近づくとメッセージカードがおいてあった。
『君はチートキャラだから、チュートリアルはどっちでも良い。君はできる限りクエストには参加してほしくない。君はあくまでもこの世界を楽しんでくれれば良い。一応、時間は1時間を予定している。チュートリアルというか、対人戦闘をしてみたいのなら、このこたつから見て左奥に扉がある。そこを開ければ、チュートリアルが始まる。途中でやめたければ、"セーブ"と口にしてくれればいい。』
別に楽しむだけなら、スマホいじって待ってれば良いんだけど、対人戦闘できるならやってみたい気もする。
「…やってみるか。」
俺は書かれていた左奥の扉を開けた。
そこは同じく真っ白な空間で頭上に大きなスクリーンがあった。そこにレベル1と表示されている。目の前には、仮面ライダーに出てくる雑魚敵キャラが立っている。
あいつ…思い描けば良いとか言ってたよな。
俺は、趣味のサバゲーで使用している愛用の銃を所持して、防弾装備を身に着けている自分自身を想像した。
すると…
俺は光の粒子に包まれると思い描いたものを身に着けた状態になっていた。
俺の愛用の銃、PDW-57。
元々は、スマホゲームで愛用していたところから気に入って購入してサバゲーでも使っている。
相手は素手だが、そんなもん関係ない。
俺は一発でヘッドショットを決めて終わらせた。相手は倒れると、スクリーンにレベル2の表示が出た。
3人になった…
そこからは人数が増えていった。
レベル5で10人となったが、これ…
格闘技やってる人でも無理だろ。
とりあえず、弾倉2本、100発の銃弾を部屋を動き回りながら撃ちまくった。
そのレベルをクリアしたとき、
ふと気になることがあった。
俺以外のメンバー終わってんじゃね?
「セーブ」
俺は、そうして部屋から出た。