見えない手
パラダイムシフト
暗い部屋で目が覚めた。
少し窓が開いてるのか、遠くで疾る車の音がいつもより明瞭に聴こえる。
いつもの部屋、いつもの風景…
なのにいつもと違う空気…
理由ははっきりと分かっている。
今日1人のトモダチが死んだ。
名前と顔が一致して、移動教室で隣に座れば世間話をする程度。
だけどやっぱり、思い返せばトモダチだなと思う。
家族構成も、好きな人が誰かも知らない。
たまたま最近好きな曲が同じだったから、
ネットフリークスが好きなのは知ってる。
暗くはないけど、派手じゃない。
運動はちょっと苦手そうに見えるけど意外とジャンプ力はある。
文系は得意だけど、理系は苦手。左利き。
今どき珍しくアナログの腕時計をしてるのは、好きなアニメの影響だって、恥ずかしながらこっそり教えてくれた。
もっと仲良くなれると思った。
これからもっと仲良くなろうと思った。
朝はいつも遅めだったから、
居ないことに気づいてなかった。
みんなが気にしていないことがいつも通りだと思ってた。
先生が来るまでのちょっとしたブレイクタイム。
世界は変わった。
時が止まった中で、セピアに色褪せた教室。
先生が声を発した瞬間、教室の時が止まった。
時が動いたら、トモダチはもういなかった。
何事もなかったかのように、時計の針は進み
私はお風呂に入って、いつもの時間にベッドに入った。
いつも通り、いつもと同じタイミング。
ふと目を覚ますことは、そんなに無いけど
珍しいことでもなかった。
いつもの学校、いつもの教室、
今日も元気だね…とまわりの友達は言うけれど。
睡眠は足りてない。
左斜め前の席だったトモダチ。
チラリと見える腕時計がもうそこには無い。
手遊び