婚約破棄
栄光の指輪を持つという男性が毎日のように現れた。
けれど、それは全てニセモノ。
わたしは即座に婚約を破棄して、本物が現れるのを待った。
きっといつか本物の『栄光の指輪』が現れる。
――半年前。
お父様が栄光の指輪を帝国のどこかに隠した。それを発見し、わたしに渡せば婚約を許すなどという驚きのイベントを催した。
正直、そんなことで人生を決められるだなんて嫌だと思った。
でも、栄光の指輪は運命そのものだとお父様は言った。
わたしと指輪には、そんな神秘的な繋がりがあるのだとか。
眉唾ではあるけれど、確かにあの指輪は子供の頃からわたしを守ってきたように思える。
そんな指輪に導かれ、わたしの元へ持ってきてくれる男性なら……きっとそれは運命の人なのかもしれない。
そうして待ち続けること半年。
ある朝の日だった。
お庭を散歩していると二人の男性が現れた。二人ともわたしの前に現れ、同時に指輪を出してきた。
こ、これは『栄光の指輪』……かもしれない。
見覚えのあるようなピンクダイヤモンド。
でも、なぜ二人なの?
「公爵令嬢クレメンタイン・グロリアス様……ですよね。俺は辺境伯で名はエルドリッジ。栄光の指輪を持ってきた」
金髪の男性がそう名乗った。
背が高くて優しい眼差し。
もう片方の銀髪の男性も自信満々な様子で自己紹介した。
「突然の来訪をお許しください。僕は帝領伯ファルケン。栄光の指輪を持って参った次第です」
なるほど、二人とも指輪を。
でもきっと片方はニセモノのはず。
そう思って覗き込むと――。
……あれ、これは両方とも本物っぽい。
この輝きには覚えがある。
ニセモノのくすんだ感じがない。
両方とも本物と同じような明るい優しい輝き。
ど、どういうことなの……これって、両方とも本物なの?