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第1章 最終話 デスゲームの終わり

『秀吉! なんで……なんで僕を庇ったんだよ……!』

『そりゃ庇うだろ……親友なんだからさ……。んなことより早く俺を殺せ……もう残り5分もない……』


『大丈夫だお前を撃った奴! あいつを殺してくれば二人まとめてクリアだ!』

『奴はもう逃げたし……どっちにしろ俺は死ぬ……。よく知らねぇ奴の生贄になるくらいなら……俺はお前のポイントになりたい……』


『言ってるだろ……お前を殺したくないって……!』

『はは……まさかお前がそんな普通なこと言うなんてな……よかったよ……』


『よかったって……』

『家族に虐待されて……学校でも虐められてたんだろ……? そんな普通じゃない環境にいたお前が……普通のことを言えるようになったんだ……よかっただろ……」


『よくないだろ……お前が……!』

『そのまま普通の人生送れよ……水月と二人でさ……。大丈夫……普通にしてればまた友だちはできるから……』


『普通ってなんだよ……! それに秀吉とだから僕は……!』

『悪い……もう話せる余力はないから……最期にこれだけ言わせてくれ……』


『待って……待ってよ待って……まだ僕は……!』

『俺はお前に殺されるけど……お前に殺されたわけじゃない……。だからこんなクソみたいなゲームなんてわす……れ……』



 なんで……今こんなこと思い出してんだろうな。言い訳でもしたいのか。いや……今回ばかりは違うな。これはあれだ……走馬灯ってやつだ……。



「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」「きゃはははは!」



 リムと同じ笑い声が僕を取り囲む。だが当然リムが複数人いるわけではない。老若男女、全く別の姿形をした人間が、リムと全く同じ挙動をしている。



 これがデスゲームスタッフ。デスゲームのために生まれ、育てられ、生きてきた人間。そこに意思はあっても全てが同一。個人の死を全く恐れていない。そして奴らは死をゲームだと考えている。だから簡単には殺さない。僕の両腕両脚を鎖で縛り付け、抵抗を奪った状態で嬲り殺しにしようとしている。



 自分で言うのもなんだが僕は人殺しのプロだ。そう、あくまでも対人限定。死への恐怖を持ち、恐れてくれるからこそ勝ってこれた。



 だがこいつらはまるで機械。壊れても代わりが効く量産品。いくら射的が上手くとも人間が機械の精度を超えられるわけがない。敗北は必至だった。そして……。



「調子に乗ってんじゃねぇぞクソガキがぁ!」



 スタッフに守られていたオーディエンスの男、八雲景虎が僕の身体を踏みつける。巨大財閥の会長……多くの有名人が在籍するオーディエンスの中でもとびきりの大物だ。



「いいか、人間の価値は同一じゃないんだよ。俺たちオーディエンスの命とお前らゴミの命の価値は全くの別物! お前らは俺たちに搾取されるために生まれ、奴隷になるために育てられて、俺たちの人生を彩るために死んでいくんだ。その社会のルールに歯向かってんじゃねぇよ!」



 顔を踏みつけられながら考える。どうやって殺すかを。スタッフは問題ではない。デスゲームに出資しているオーディエンス第一主義だ。お膳立てをすることはあっても直接殺しにくることはない。だから実質敵は八雲景虎ただ一人だが……縛られてるのが問題だな。武器も没収させられた。とりあえず諦めたフリして静かにしてるか。待ってればその内隙もできてくるだろう。



「ああそうだ……お前の親友……名前はなんだったけ。カスの名前なんか一々覚えてないから……ああそうだ、なんちゃら秀吉。あれを撃った奴が誰か知ってるか?」



 知らないしどうせ死んでる。だからどうでも……。



「あれさ、オーディエンスが用意した殺し屋なんだよ」



 殺し屋……? そんなのがいたのか参加者の中に。まぁ何にせよ僕が既に殺しているはずだ。



「つまんないだろ? 一番の上物が参加者から避けられたまま死んでくなんて。だから介入したんだよ、まぁお前の親友が庇ったわけだが……」

「……おい。ちょっと待てよ。それじゃあまるで……!」

「ああそうだ。お前の親友を撃った奴はまだ生きている」



 気が変わった。



「そいつの名前を教えろ! 僕がぶっ殺してやる! 秀吉の仇だ!」

「その秀吉を殺したのはお前だろうが!」

「ぐっ!」



 立ち上がろうとした僕の腹を八雲が踏みつける。クソ……しくった……このまま静かに隙を突くつもりだったのに……感情的になってしまった……!



「責任転嫁するなよ。お前の親友を殺したのはお前自身だ。お前が殺さなかったらまだ生きてた……かもな。ま、デスゲームが盛り上がったんだ。秀吉くんのゴミみたいな命も有効活用されたってことで」

「殺す! ぶっ殺してやる! お前もそいつも! 全員僕が……!」

「おい暴れんな当たるだろ!」



 僕の身体に滝のような血が降り注ぐ。



「きゃはははは!」



 首だけになったスタッフと一緒に。



「なんでここにいんだよ……茶髪……」

「言い忘れたことがあったからな」



 スタッフの首を刎ね飛ばしたのはチェーンソーを握る茶髪。彼は腰を抜かしている八雲にその刃を向けながら、倒れている僕を見下ろす。



「お前が虐めてた俺を許さないように、俺もお前を許さない。お前は俺の親友を奪った仇だ。一生許すことはないと思う」

「ああなるほど……親友の仇は譲れないってか」

「その真逆だね」



 茶髪が回転する刃を鎖に当て、僕の拘束を解いていく。このまま縛り付けておけば僕を殺せたのに。



「確かに過去は消えない。俺がお前を虐めたことも、お前が史郎を殺したことも消えはしない。でもいつまでも過去に拘っててもしょうがないだろ。俺たちが生きるのはこれからなんだから」



 鎖が地面に落ち、僕の身体は自由になる。誰でも殺せるようになる。



「もういいだろ、デスゲームなんて。お前はデスゲームから抜け出せたんだ。普通の人生ってのを歩めるようになったんだ。じゃあいいだろ、それで。それ以外に何がいるんだよ」



 赤い血は僕の身体にこびりついて剥がれない。それでも身体は動く。生きている。血なんかまるで関係なく前を見据えることができる。



「……おいスタッフ、第53回デスゲームは終わりだ」



 僕たちを取り囲んでいたスタッフがその言葉を境に一斉に離れだした。デスゲームが終わった以上こいつらの役目はひとまず終わり。残ったのは人間だけ。



「永瀬……」

「別にお前の言葉を聞いたわけじゃない。僕を動かしたのは親友の言葉だ」



 忘れていた。覚えていたのに、忘れてしまっていた。こんなデスゲームのことなんか忘れろと言っていた。普通の人生を送れって言っていた。その秀吉の想いを、いつの間にか僕は裏切っていたんだ。



「帰ろう。普通の人生に」

「ふざけんじゃねぇこのまま逃がすと思って……」

「ああでもこれだけは変わらない」



 茶髪からチェーンソーを奪い、背後で拳銃を向けていた八雲の脇腹に刃を食い込ませる。



「僕の邪魔をするなら殺す」



 そしてスターターを何度も引っ張り、エンジンを起動させる。僕の邪魔をしているこいつを殺すために。




「ぐぎ……ぎぎ……ま……待って……」



 まだエンジンはかからない。耳障りな音だけが耳に響く。



「俺を殺したら……復讐するぞ……プロの殺し屋がお前の人生を奪うぞ……!」



 引っ張る。引っ張る。引っ張る。



「わ……わかった……お前の親友を殺した奴の名前を教えるから……だから命だけは……!」



 お、ようやくかかった。そしてこれで、最後だ。



「秀吉を殺したのはそいつでも僕でもない。このデスゲームというシステムだ」



 聞くに堪えない断末魔と共に八雲の身体が上下で分断される。激しく血を噴き出しながら倒れるその身体。それにチェーンソーを捨てて一息ついた。



「茶髪……そういえばお前の名前は?」

「なんで覚えてないんだよ……堂本だよ。堂本信長(どうもとのぶなが)



 信長か……また何とも数奇な巡り合わせだ。



「じゃあ信長、帰ろう。こんなゲーム、もうこりごりだ」



 そして僕たちは再び舞い戻る。あの刺激のなく退屈な、普通のリアルに。

これにて第1章終了となります。やっと終わった……茶髪くん女の子にすればよかったと後悔の日々でした。だってこれジャンル現実恋愛なので。


次章からはようやく恋愛編! デスゲームとはしばらくさよならです。あくまでもデスゲームはただのアクセントなので……。デスゲームを生き残った主人公の恋愛をお楽しみいただければと思います。


そしてポイント次第では次章が最終章になる可能性もあるので家族絡みの復讐も入ってくると思います。なので残りあと少し。ぜひお付き合いいただければと思います。


それではここまでお読みいただきありがとうございました! おもしろかった、続きが気になると思っていただけましたらぜひぜひ☆☆☆☆☆を押して評価とブックマークしていってください! やる気が……出ます! それでは何卒よろしくお願いいたします!

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[一言] ジャンル詐欺
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