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謁見の間②

「ユリウス殿下は、ご自身が精霊の愛し子だとご存じだったのですか?」


 イルがユリウスへと尋ねた。


「ああ。母上が残してくれた魔石を使用した、首飾りで知ることが出来た。石には、母上の声と共に僕やリドリスのことが込められていた」


「それは、今でも聞けるのですか?」

「今回王宮への召喚にあたり持参した」


「ではそれを陛下へ提示しておけば、お前の忌子の汚名は、遠の昔に晴れていたのではないか?」とのミハエルの問いに、ユリウスは顎に手を当てて思案する。


「しかしそうなると、代わりにリドリスが忌子として扱われることになってしまう。

 それにいきなり僕とリドリスの立場を入れ替える、というのも如何なものかと思ってね。

 リドリスの地位を奪い、僕の代わりにミルディンへ行かせるのは無理がある。

 だから僕が、リドリスに掛けられた呪いを解く方法を見つけ出すまで、黙っているつもりだった。リドリスに掛けられた呪いが発動したのもここ一、二年のことだったし、呪いが発動しなければそれに越したことはなかったんだけど」



 サイファーがすぐにリドリスを排除するつもりなら、ここまで手間の掛かった方法は取らなかっただろう。

 しばらくリドリスの安全は保証されていると見越し、ユリウスは呪いを解くための研究に勤しんでいた。


「お前はそれで良かったのか?」


 ミハエルの質問に、ユリウスは不思議そうな面持ちとなる。


「良かったも何も、僕はミルディンでの暮らしに不満はないが?むしろかなり気に入っているよ」

「ではユリウス殿下がこのことを陛下や我々にお話なさったということは、呪いを解く方法を発見されたのですね」


 イルの言葉にユリウスが肯首する。ユリウスを注視していたランベール王が、歩み寄って来る。



「まことか……?ユリウスは、私やリドリスを怨んでいないのか」

「特に怨んでなどおりませんが」

「怨んでないにしても、共に育っていないリドリス殿下のために長年魔法研究に勤しむなど、何か理由などはないのですか?」

「共に育っていなくとも、僕はリドリスのお兄ちゃんだからね」


 イルの疑問に、明朗な声で答えたユリウスの瞳は、穢れの色など一切感じさせない。

 彼が決して、忌子などと呼ばれるような存在ではないと、この場の誰もが確信していた。

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