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ユリウスを交えて

「お初にお目に掛かる、クルステア公爵。辺境に篭っているため、挨拶が遅れてしまって申し訳ない」


 クルステア公爵の向かいに腰掛けたユリウスは、曇りのない真っ直ぐな眼差しを向ける。

 貴族との関わりが気薄だったとは思えぬ程、毅然とした立ち振る舞い。そして彼の纏う神秘的な気迫に感嘆し、クルステア公爵は目を見張った。

 クルステア公爵は首を垂れる。


「お初にお目に掛かります、お会い出来て光栄にございますユリウス殿下。……本当に弟君とよく似ておられる。しかしその思慮深さと、意思の強さを合わせ持つような眼差し。流石、王族として相応しい」

「挨拶はさて置き、さっそくだが本題に入りたい。現在リドリスは床に伏せていて、婚約に関する件は保留となっているが……僕とティアが王宮に呼ばれたことで、何かしら話が進むと思われる。僕ら兄弟の婚姻は、クルステア家に大きく関わっているからな。

 リドリスとティアの婚約も破棄されていないことだし、落ち着いたら改めて双方で話し合いの場が設けられるだろう」



 端的に必要な内容だけ述べるユリウスの言葉を耳に、ティアリーゼは密かに自身の手を握りしめた。

 クルステア公爵はしばし思案したのち、再び口を開く。


「ご判断は全てランベール王家、そしてティアリーゼにお任せ致します。

 無責任と思われるかもしれませんが、私としてはティアリーゼの意を出来る限り尊重してやりたいのです。今更ですが……」

「僕としても同意見だ。ティアリーゼにとって最善の道が開けるよう、善処しよう」




 :.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:



 話を終えると、ティアリーゼがユリウスと共に部屋を出て向かった先──


 精緻なレースの天蓋が付いた寝台に、薔薇の刺繍が施された長椅子など。豪華な調度品が品良く纏められたこの部屋が、ティアリーゼが王宮滞在に当たり、用意された一室である。


 ちなみにユリウスは、リドリスの私室を使う予定らしい。本物のリドリスは現在、王宮敷地内の離宮で養生しているのだという。



 二人が部屋に足を踏み入れると、毛長猫がとてとてと奥からこちらへ歩いて来る。


「にゃ〜ん」

「中々下手くそな鳴き声だな」


 ユリウスに指摘され、ユーノが「ふん」と鼻を鳴らす。


 猫姿のユーノは人語を話せる代わりに、猫の鳴き真似は難しかったようだ。

 頭を手でぽんぽんとしてくるユリウスに、ユーノは不快そうな眼差しを向ける。そんなユーノに、ユリウスは気掛かりとなっている疑問を投げかけた。


「お前もこの部屋で寝泊まりするのか」

「安心しな、寝る時は隣の応接室にいるから。ついでにティアの護衛役もしといてやるよ」


 普段ユリウスには喧嘩っぱやく、言葉遣いも悪い彼だが、意外と面倒見が良いことをティアリーゼは知っている。

 信頼する人達が自分の側にいてくれることが、これ程まで心強く感じるのだと改めて思った。

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