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再会

 馬車がランベールの王都へと辿り着き、そのまま王宮へと進んで行く。石畳の道を走る馬車の中から、見慣れた街並みをティアリーゼは懐かしい思いで眺めていた。


 城門を潜って、幾何学模様の庭園を進んだ先に荘厳な宮殿が聳え立つ。

 馬車から降り立って王宮へと足を踏み入れると、ユリウスとティアリーゼは別行動となった。


 それぞれ王宮の侍従に案内されて行き、ティアリーゼは、とある一室に案内される。


 扉が開かれると、そこには懐かしい姿があった。


「リタっ」

「お嬢様!お元気そうで何よりでこざいます」


 公爵家で働く侍女の中で、特に仲の良かったリタとの対面。ティアリーゼとリタは再会に手を取り合い、喜び合った。


 長旅を終えた直後とあり、ティアリーゼには王宮に相応しいドレスの用意がされていた。


 リタに手伝ってもらい着替えを終えると、次に化粧台に椅子を腰を下ろす。

 ティアリーゼの髪を、梳るリタの手の感触が懐かしい。


 髪を整えている間、二人は互いの現状を報告し合い、リタは王都の近状を交えて教えてくれた。

 リタはティアリーゼがミルディンに行った直後、公爵家の出仕を辞したらしい。そして今回ティアリーゼの登城に合わせて、特別に侍女役を名乗り出てくれたようだ。


 暫く侍女として働いていなかったにも関わらず、リタの髪結の腕は健在で、ティアリーゼのピンクブロンドの髪が綺麗に結われていく。



「辞める直前に可能な範囲で、言いたいことを旦那様にお伝えさせて頂きました」と言うリタは長年、父の家庭に亀裂を入れたくないとの思いを持つ、ティアリーゼの気持ちを尊重してきた。ティアリーゼがリドリスとの婚約を破棄され、辺境へと送られることが決まると、黙っていた内情をようやく伝えることが出来たようだ。

 それでも立場上、口出しするのは危険なように思える。だがリタの身を案ずるティアリーゼの意に反し、意外にも公爵は事態を深刻に受け止めていたとのこと。


「リドリス殿下のパートナーが、何故わたしなのかしら?」


 鏡越しにティアリーゼが問いかけた。

 実際ティアリーゼをエスコートするパートナーは、リドリスに扮したユリウスだが──


「それが、マリータお嬢様は一応妃教育を受けてはいらしたのですが、中々身に付かず……。最近では登城するのも嫌がっていらっしゃるようですよ」

「そうだったの……」


(妃教育が上手くいっていないのね……)


 マリータが勉学を好まないのは把握していた。

 それでもリドリスの側にいると覚悟を決めたのなら、真面目に向き合うだろうとティアリーゼは思いこんでいた。


 結局、努力も覚悟もなかったのかと知ると、残念でならない。しかしそれはもう自分には関係がないことだと、思考を断ち切る。

 そんなティアリーゼに、リタの声が落ちてくる。


「だから未だ正式に、リドリス殿下とマリータお嬢様は婚約を結べていないのです。それに、未だリドリス殿下とお嬢様の婚約が、解消されたとの公表もされておりません」


 次の瞬間、扉を叩く音が室内に響き渡る。

 返事をすると、王宮の侍女が告げた。


「クルステア公爵様が面会をご希望されております」


(お父様が……)

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