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ペットの同伴は

 晩餐を終えるとサロンに移り、ユリウスとティアリーゼはミハエル、イルとお茶を共にすることにした。


 デザートはカスタードクリームの上にメレンゲが浮かんだ物。口の中に運ぶとふわふわのメレンゲがすぐに溶け、甘いのに軽い口当たりで食後に丁度良いデザートだった。


 ティーカップを置いたユリウスが、その場の全員に向けて話し始める。


「先程陛下から手紙を受け取ったのだが、王宮へと召喚されることとなった。来週にも出立しなくてはならない」


 ユリウスの言葉と共に、室内は水を打ったように静まり返った。静寂を破ったのは、イルの僅かに笑みを含んだ声。



「成程、そろそろランベールの建国祭があるようですが、もしやそれと関係がおありですか?」

「リドリスの体調が良くないみたいなんだ」

「わざわざお前に知らせる程、容体が悪いのか?」


 ミハエルの質問に、ユリウスは分からないと返答する。


「手紙には体調不良としか書かれていない。そこで、僕にリドリスのふりをして建国祭に出席するようにとのお達だ」

「なにっ」

「建国祭に王子が体調不良など、不吉でよろしく無いそうだ」

「相変わらず、魔法の何たるかを理解していないくせに、迷信ばかりを気にする国ですねぇ」


 嘲笑するイルに、ユリウスは「知らないからこそ、恐れているのだろう」と言った。


 人は未知なるモノへ恐怖を抱く生き物だとユリウスは考えている。


 先程から動揺の色を浮かべているティアリーゼに、ユリウスは視線を向ける。


「ティアも僕のパートナーとして、建国祭に出席して貰うことになるから、一緒に王都へ同行してくれるかな?」

「は、はい」


(リドリス殿下の替え玉としてご出席なさるというから、てっきりパートナーはマリータだとばかり……)



 ついユリウスの横に立つマリータを想像してしまい、ティアリーゼは胸が痛んだ。


 話が一区切り付いたかと思われたが、ミハエルの能天気な声が室内に響く。


「む、ではこの城を留守にするのか。しかし建国祭か、楽しそうだな。私は祭りが大好きだ」


 ミハエルは付いてくる気満々のようだ。隣でイルも楽しげに口を開く。


「では我々はソレイユの使節団と合流して、正式にランベール建国祭へ出席することに致しましょう」

「おお、その手が合ったか、でかしたぞイル!」

「お前達、付いて来る気か」


 イルの口振りからして、予めソレイユ側とある程度、話がついていたのではないかと疑ってしまうようなイルの口振りに、ティアリーゼは呆気に取られていた。



 :.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:.:*:


 ミハエルとイルとの話を終え、続いてもう一人の客人、という名の居候──妖精さんことユーノをサロンへと呼んだ。


「──といった理由で暫く城をするにするが、ペットの妖精さんはどうする?ペットを王宮に連れて行っていいのか、僕には分からない」

「誰がペットの妖精さんだ!」


 肩をそびやかして声を荒げるユーノはしばし考えたのち、一つ提案する。


「妖精じゃなくて、動物か何かに姿を替えられたりしないか?」

「む、もしや付いて来る気か?それなら猫さんはどうだろう?ペット禁止でなければ良いのだが……」

「ペット言うな。しょうがないから着いて行ってやると言いたいところだが、俺も別件で王都に用事があるんだよ」

「それなら自分の魔法で虫とかに姿を変えればどうだ?」

「出来ないから言ってんだろ!それに虫は嫌だ、猫にしろっ」

「そうかそうか、そんなに猫にして欲しいか。仕方が無い、ならば僕の手で猫にしてやろう」

「用事が済んだらお前を倒すための修行の旅に出るから、ちゃんと元の人間の姿に戻せよ」



 人に物を頼む態度とは思えない程、偉そうに踏ん反り返るユーノ視界に入れながら、ティアリーゼの胸中には僅かな不安が過ってう。


 今回の目的は、ユリウスがリドリスの替え玉として建国祭に出席することにある。予め事情を知っているミハエルやイルはさておき、ユーノを連れて行っても大丈夫なのだろうか。

 ティアリーゼが疑問を浮かべていると、ユリウスが微笑んだ。


「ユーノのことは心配しなくていい」

「は、はい」


 考えを見透かされたようで驚くティアリーゼに、更にユーノが安心させるように語り始める。


「俺は放浪の旅兼、魔法修行のために世界中を飛び回っている。当然ランベールの王都にも寄ったことはあはるし、何ならランベール王子の顔も知っている」

「え、そうなのですか?」

「だからコイツと王子の顔がよく似ていることも気付いていたから、事情もある程度予想はついてる。けどその辺りには興味ないし、口出ししないから安心しな」

「そうだったのですね」



 ティアリーゼが安堵したのを見届けると、彼は「んじゃ、この話は終わりだな」と話を切り上げ、妖精の羽を羽ばたかせて部屋を出ていった。

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