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プロローグ

 瞼を閉じると今でも鮮明に思い出す、自分の名を呼ぶ、柔らかな母の声。

 あの頃は、とても幸せで満ち足りた日々だったと記憶している。


 ランベール王国屈指の名家、クルステア公爵家の娘として産まれ、何不自由なく育てられていたティアリーゼは、今のような未来が待っていようとは、想像すらしなかった。


 クルステア公爵夫人が儚くなったのは、ティアリーゼが僅か六歳の頃。

 幼いティアリーゼが大好きな母の死を受け入れるのには難しく、時間を要する。


 しかし公爵夫人が亡くなってすぐに、父公爵の後妻としてミランダがやってきた。ティアリーゼの義理の母となる女性だ。ミランダはティアリーゼとは二つしか歳の変わらない妹、マリータを連れていた。


 マリータも正真正銘、クルステア公爵の娘であり、ティアリーゼの腹違いの妹にあたる。

 子供の頃にはその意味が分からなかったが、今のティアリーゼは理解している。

 母が生きている頃から、父には別の家族が他にあったのだ。

 幸せな家族は、どうやらティアリーゼの幻想だったらしい。


 美しい継母ミランダに似た、ローズピンクの髪を持つ、華やかで天真爛漫な妹マリータ。


 当時のティアリーゼは己の居場所を守ろうと、新しい家族と子供ながら歩みよる努力をしていた。

 しかしミランダの方は、その思いを微塵も汲み取ろうとせず、またティアリーゼを受け入れるつもりはなかったらしい。


 普段は良妻を演じているミランダだが、忙しいクルステア公爵のいない所だと、ティアリーゼへの当たりを強めていった。


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