表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/61

予期せぬ戦い 2

 ーーー乗禍じょうか視点ーーー



 敵軍接近中の知らせを聞き急ぎ本邸へと戻ると、既に主だった配下達は集まっていた。

 一人一人の名前は思い出せないが、謁見の間に隙間なく並んだ諸将を見るに、殆どの者が集まっているようだ。


 配下達より一段高い位置に座り皆を見下ろすと、諸将は座りながらも深く頭を下げ、私への忠誠を見せる。


「報告せよ。」


 その様子に満足し、状況を説明させる。


「は!掲げられた旗を見るに、12家の貴族達が兵を挙げたようです。その数は3000近くになります。今までは各家が別々に行動し、更にアイテムかスキルを使って姿を隠していたようです。全員が合流した所で姿を現しました。」


「なんだと!?」

「我が軍は500にも満たない上に、この街は防衛に適しておらぬぞ!?」

「大迷宮に向かった者達はまだ戻って来ないのか!?」


 伝令が敵軍についての報告をすると、謁見の間が騒がしくなる。

 乗禍家の兵力は500に満たない。しかもその内訳には衛兵や街を拠点とする冒険者達も含まれている。

 その者達の多くは一般市民の出だ。『ユニット強化』で強化されてるとはいえ、砲台としてしか使えないだろう。

 これはダンジョン攻略をする上で、量より質を求めたからだ。

 雑兵がいくら集まった所でダンジョン制覇の役には立たない。当然の考えだ。


(その差を埋める為にも浪人達を強化していたが…間に合わなかったな。)


「我が軍の構成は?」


 強化した浪人達の数は殆ど覚えていない。

 数百人は強化したと思ったが……。


「最上級兵が30人、上級兵が200人、中級兵が270人です。ご存知の通り、中級は一般市民出身の衛兵や冒険者達です。最後に…新たに雇った下級兵の内、強化した者は500人程となっております。

 最上級兵は一般に言う一流冒険者達で、大迷宮の31層以降を潜っている者達です。復鬼一全様が率いる者達になります。

 上級兵は二流冒険者で、大迷宮の21層から30層までをメインに潜っている者達です。乗禍様の『ユニット強化』のお陰で、我々の殆どがこのカテゴリに入ります。

 中級兵は大迷宮の11層から20層を潜っている達です。一般市民の者が多く、敵に接近されると弱い為注意が必要です。

 一般兵は乗禍様の『ユニット強化』によって全ての兵が強化された為、現在我が軍には存在しません。」


「我が軍の兵力は1000か。」


 敵の兵士の質にもよるが、十分やりようは有るな。

 敵が精鋭を揃えていると言っても、一流の域に達する者は殆どいないはずだ。私達と違って『ユニット強化』が使えないのだからな。

 3000と言っても、半数以上は一般の兵士だろう。それなら大した戦力にはならん。


 因みに浮浪者や浪人などのチンピラ達については、我が軍では『下級兵』と呼ぶ事で統一させた。

 栄誉ある乗禍軍に浪人やチンピラが居ては困るからな。


「今回の連合軍ですが……恐らく大和の上層部が裏で動いています。これだけの大軍…それも複数の貴族家からなる連合軍が動いていると言うのに、大和の正規軍は全く動いていません。表向きは貴族家の暴走としながらも、大和が裏で指示しているのでしょう。」


 一人の部下の言葉に、また謁見の間が騒がしくなる。

 裏切りの心配が無いから気付いた事は全て話すように指示しているが…こうもうるさいと話にならんな…。


「乗禍様!大迷宮に派遣していた者達が戻って参りました!!」


 そんな中、冒険者達の帰還が告げられた。

 魔石を得る為に大迷宮へと潜っていた者達だ。

 急に王都が敵地へと変貌した中、何とか戻って来れたようだ。


 戻って来た者達の話をまとめると、やはり大迷宮、及び王都内で捕縛されそうになったそうだ。

 王都の別邸や乗禍家と関係のある施設も封鎖されているらしい。

 100人中80人程の配下達が戻って来たから、捕まった人数はそこまで多く無い。


「『回復』系のスキルを持つ者は退室し、帰還者の怪我を癒せ。悪いが完治するまで休ませる事も出来ん。それと、すぐに街全体に結界を張れ。これ以降は街への直接転移を禁じる。」


 これで上級以上の主力が210人になったか…。


「さて、どうするか…。何か考えが有る者は居るか?」


「街から打って出て、連合軍など蹴散らしてやりましょう!中級兵や下級兵は接近戦でこそ使えませんが、そんなものは敵を近づけさせなければ良いだけです!我ら乗禍家の精鋭の力を今こそ使うべきです!!」


「いえ、守りを固めるべきです。この街は防衛に適しておりませんが、それでも野戦をするよりも遥かにマシです。接近戦が不慣れでも城壁の上から攻撃すれば問題有りません。」


「それでは我々の持ち味が活かせぬであろう!いくら後衛の数が多いとはいえ、戦力で言えば我ら主力部隊の方が圧倒的に上だ!我々を活かす戦い方をするべきだ!!」


「主力部隊は重要です。だからこそ、序盤は直接戦闘を控えるべきかと。まずは後衛によって敵の勢いを十分過ぎる程に削り、最後に主力部隊で敵を蹂躙じゅうりんするのが最も効果的かと思います。」


 攻めに出ようと主張する者と守りを固めようとする者でお互いに意見をぶつけ合っている。

 防衛派には頭を使うのが得意な者が多く、やや攻勢派が劣勢か……。


「お待ち下さい。私に良い意見が有ります。」


「お前は……。」


 配下達が二つの陣営に分かれて論争を交わす中、一人の男が一歩前に出て来た。

 コイツは……誰だったか…。


言田げんだ!出しゃばるな!お主の息子が敵に捕まったせいで、乗禍様のお立場が悪くなったのだぞ!!」


 攻勢派の一人が男へと詰め寄る。

 ……そうだ。言田家の当主だ。息子は色々と気の利く男だったはずだ。


「だからこそ、私の手で名誉を挽回したいのです。……それに私の意見は攻勢派の皆様にとっても良き案かと思います。」


「良い案が有るなら聞こうでは無いか。話してみよ。」


 言田に詰め寄る者を下がらせ、話を聞く。


「攻勢派、防衛派、どちらも素晴らしき意見かと思います。ですが、ここは夜襲が一番かと。敵は隊列もバラバラで、各家毎に行動しています。要は連合軍という名の烏合の衆なのです。闇に乗じて攻めればたちまち四散するでしょう。」


「ほう…。」


 この短い間に、敵軍についてのより詳細な情報も集めているのか。

 敵軍がこの街まで来るのにまだ数日かかる。何度かチャンスは有るな。

 良さそうな案に思える。


「これなら攻勢派の方々も存分に戦えるかと思います。」


「……うむ。…悪くなさそうだな。」


 攻勢派の人間も頷いているし、問題無さそうだな。

 後は防衛派の方だが……。


「確かに、夜襲が成功すれば勝ったも同然ですが…。ですが、やはり防衛に徹するべきかと思います。もし失敗すれば我が軍は敗北します。仮に夜襲が成功しても、主力部隊の損害が大きければなんの意味も無いのです。これで大和との戦いが終わる訳では有りません。出来る限り主力部隊を温存しておくべきかと思います。」


 …これでも納得せぬか。

 確かに一理有る意見だが…。


「温存と言いますが、それはいつまでですかな?いつ大和の援軍が来るかも分からないのですぞ?多少の損害が出ても初戦で快勝し、敵の戦意をくじくのです。長く戦ってもジワジワと追い詰められていくだけです。」


「それは…。確かにそうですが…。」


 言田の意見に言葉を返せぬようだ。

 どうやら決まりだな。


「…そろそろ意見は出尽くしたようだな。今回は言田の策を採用する。すぐに準備を整えろ。」


 私が決定を下すと、皆が一斉に頭を下げる。

 今回私は参加しないが、一全率いる最上級兵達は参加させる。

 彼らの力が有れば、例え夜襲が見破られても負ける事は無いだろう。



 二日の時間が経ち、スキルを使わずとも見える位置まで敵が近づいて来た。

 我が軍も最低限の衛兵を残して城を離れている。

 今は夜襲の機会をうかがっているはずだ。


 敵軍は思った以上に統制が取れていないようで、夜に賭け事や飲酒に興じている兵士もいるようだ。

 どうやら我が軍の兵力が少ないと思い、既に勝った気でいるらしい。

 恐らく下級兵が増えた事も知らんのだろうな。


(我が軍の兵士達は『ユニット強化』によって大幅に強化されている。何も知らぬまま地獄に落ちると良い。)


 夜襲の決行は今夜。時間にしてもうすぐだ。

 私は城壁の上でその様子を眺めさせて貰おう。


(……動き始めたようだな。)


 我が軍の兵士達が動き始めた。

 私は事前に味方の位置を知っている上で『遠視』のスキルを使わせている為味方の動きが分かるが、スキル無しなら何も分からない状態だ。


「おお!敵陣に突っ込んで行きます!凄い勢いです!」


 周囲の部下達も歓声を上げる。

 この者達は『遠視』や『透視』、『暗視』などのスキル保有者だ。私が遠くから戦況を見る為、今回の作戦には加わっていない。


「……ん?今、先頭を走っていた部隊が消えなかったか?」


 一番端の貴族家を襲撃した後、瞬く間に敵陣の中程まで進んだ。

 だが、少し戸惑っているようにも見えるが……。


「乗禍様。『集音』のスキルを使います。」


「ああ。」


 部下に『集音』のスキルを使わせる。

 遠くの音を集めるスキルで、敵陣に居る味方の声がすぐ近くから聞こえてくる。


『どうなっている!敵陣はも抜けの空だぞ!?』

『テントの中は全て無人だ!人どころか馬も見当たらねえ!!』

『先頭を走っていたやつは何故消えた!!』

『落とし穴だ!!夜襲はバレてるぞ!!』


 味方の混乱する声と共に、敵陣が一斉に明るくなる。

 慌てて注視すると、味方の軍が囲まれている…!


「いつの間に!!」


 先ほどまではいなかったはずだ!


「恐らく『隠密』系のアイテムが使われたかと!私達の距離からでは、例えアイテムだろうと見破れません!」


「夜襲組は事前に『看破』系のスキルを使って、敵に気付かれるのを恐れたのかと思います!」


 部下が慌てたように声を上げる。

 味方の状況を説明してくれるのは助かるが、今はそれどころでは無い。


「援軍は出せるか?」


「この街に残っているのもギリギリの人数です。例え兵を出しても戦況に影響は無いかと…!」


「……となると、私が出るしか無いか。」


 私は今回の戦いにおいて最大の重要人物だ。

 私が戦場に出れば多くの敵が群がって来るはずだ。


「それだけはおやめ下さい!乗禍様が捕まってしまったら敗北が確定してしまいます!!」


「そうです!あそこにいる兵達は一騎当千の猛者達です!!敵の罠など食い破ってくれるはずです!!」


 部下達に止められ、浮かせた腰を下ろす。

 ……そう言えば、一全からも戦場に出ないように懇願されていたな。

 …ここは部下達を信じてみるか。

誤字脱字報告ありがとうございます。


もし面白ければブックマークや、

↓にある☆☆☆☆☆から、作品の評価をお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ