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会食

 皆で食事をする。

 今日は各家の当主が集まるからか、いつもより豪華な料理が並んでいる。

 冷めた料理は先生が温めなおしてくれたので、味については文句は出ないだろう。


 それぞれ家族ごとに集まって食事し、親と子でワイワイと話し合っている。

 主に、親がお金の事で娘を叱り、娘が先程の父親達の行動を責めている感じだ。

 皆の母親も来ていたようで、諏訪父や黒守父は二人がかりで責められている。


「お袋…。さっき言った通り、これからも色々有りそうなんだ。迷惑かけるけど、宜しくな。」


「宜しくって言われてもね…。私は普通の主婦だよ?王様に会うなんてとても…。」


 お袋にもダンジョンマスターになった事を話し、親父が手紙を見せてくれた。

 大和で王様に会うのは非常に栄誉な事だが、一般市民からすると荷が重すぎる。

 オレ達一家は皆小心者のようだ。


「断真さん。大丈夫ですよ。私達もついていますから。」


 奈子母がお袋に話しかけ、談笑を始めてしまった。

 …奈子母が助けてくれるなら有り難いが、話は長くなりそうだな…。


「…洲、改めて言うが、よくやった。断真家は元士族だから、学園の中等部には通うしきたりになってるんだ。私は中等部で挫折したが……よく頑張ったな。」


 …道理で、地元の学校じゃ無くて王都の学園一択だった訳だ。

 オレはダンジョンマスターになると決めていたから気にもしなかったけど…。


「ああ。ありがとう。……さっきオレを売った事は忘れないからな。」


 …少しは奈子の父を見習ってくれ。

 あの人は真っ先にかばってくれてたぞ…。


「馬鹿もん。アレは高度な戦略だ。洲は学生だから大した事にはならん。断真家への被害を避けた方が、お前が戻ってきた時に助かると思ったんだ。」


「…親父、もう少しうまく言い訳してくれよ。…目線が泳いでいるぞ。」


『戻ってきた時』って、捕まるの前提で考えていやがったに違いない…。

 十分過ぎる程大した事だろうが…。


「ッハッハッハ!そう細かい事は気にするな!…しかし、ここの料理は美味いな。いつもこんなご馳走を食べているのか?」


(…誤魔化しやがった。……はぁ。責めてばかりいても仕方無いし、もう良いか。)


 見捨てられた事は忘れずに覚えておこう。


「…いつもじゃ無いけどな。そこそこ利用させて貰ってる。普段はもっと普通の料理だけど、味は絶品だぞ。」


「…ったく、学生なのに贅沢ばっかり覚えてたら後で困るぞ?いつの間にかハーレムまで作りおって…。全く、羨ましい。」


「……ハーレムなんて冗談は止めてくれ。この場では洒落にならないぞ…。」


 この親父、さっきのやり取り見てなかったのか?

 諏訪父と黒守父は……聞こえないようだな……。


「む……。そうだな。この話は止めとこう。そう言えば、滋深さんの娘さんにはちゃんと礼を言ったのか?」


「お礼?」


 何を言ってるんだ?この親父は。


「ん?まだ言って無いのか?夏休みにお金を送ったのは、あの子がお前の現状を知らせてくれたからだぞ?…全く、ポーションを買うかで散々悩んでいるなんて知らされた時は、顔から火が出る程恥ずかしかったぞ?」


「アレか……。先生から聞いたと思ってたが、奈子から聞いてたのか…。」


 知らなかった。

 後でしっかりお礼を言っておかないとな。


「……そうそう。『奈子』ちゃんから教わったんだ。堅物かと思っていたが、学園生活を楽しんでいるようで何よりだな。」


(……くそ。つい奈子を名前で呼んでしまった。親父はニヤニヤ笑ってやがるし、最悪だ……。)


「……そんな顔するな。親としては本当に嬉しいんだ。…今までのお前はどこか張り詰めていて、いつか爆発しそうだったからな。…良いチームメイトと出会えたようだな。」


「……親父。」


「…だが、婚約が済むまでは絶対に手を出すなよ。断真家の国外追放なんて簡単に出来る方々だからな…。」


 親父が少し顔を青くしながら話す。

 ……確かに親父にとっては大事な話だろうが、折角の良い話が台無しだよ。

 そんな関係じゃ無いと言うのに…。


「……分かったよ。」


 真剣な表情でずっと見つめてくるので、取り敢えず返事をしておく。

 …なんで親とこんな話をしなきゃならないんだ…。



 その後は親父やお袋と一緒に、皆の家族の元へと挨拶をしてまわった。

 皆親と一緒だからいつもと様子が違って面白かった。きっとオレも同じように思われてるだろう。

 親父とお袋はずっと緊張しっ放しだった。

 最後に奈子の両親とも話をした。

 奈子には夏休みの礼を言ったが…それを聞いていたお袋と奈子母がはしゃぎ出してしまった。

 ……親も交えての会食なんてするもんじゃ無いな。学生にはかなりの苦行だ…。


「…さて、そろそろ今後の事も話しておきましょうか。」


 そんな事を思っていると、諏訪父が全員に向けて声をかけてきた。

 それぞれ挨拶も終わり、食事もひと段落ついた所だ。


「本日は断真洲君がダンジョンマスター、それも大迷宮の正当後継者だと言う素晴らしい話を聞けました。そしてそのチームメイトとして、ここに居る少女達が選ばれたとも…。とても名誉な事です。親としてサポートしていく為にも、今後はより連絡を密に取り合いましょう。

 そして、ここからが本題です。

 これからは豪牙家や乾家と協力し、国と交渉して行く事になります。…これは基本的に豪牙家、乾家、諏訪家、滋深家が担当する事になると思います。…詳細は後ほど調整しましょう。

 こちら…と言うよりは、断真君達の要望としては、今まで通りのチームで攻略を続けられる体制を維持する事と、大和と良好な関係を築いていく事……それで良いんだね?」


「はい。」


 諏訪父の言葉を肯定する。

 オレとしては全面的な支援が欲しい訳じゃ無いし、ダンジョンマスターとバレても今までと同じ生活が出来れば良いだけだ。

 勿論大和とは良好な関係を維持したい。


「分かった。……それだとほぼ要望は無しになってしまうので、断真家のご両親とも相談して色々考えさせて貰うよ。断真君の要望は必ず叶えるから安心して欲しい。

 交渉自体は我々で行うから、子供達は関わる必要は無い。…聞きたいなら教えても良いが、根回しや利害調整の話だからつまらない話だと言う事は覚悟して欲しい。

 断真君はこれから色々な人と面会する事になるから、それだけは覚えておくように。」


「分かりました。」


 どうやら国との話し合いは代わりにやってくれるようだ。

 本当に嬉しい。これでやっと面倒な事から解放される。


「乗禍家との戦いは……いずれ起こるのは間違い無いが、まだ少し先になるはずだ。これから根回しも進めていくし、数ヶ月は先になるだろう。ただ、あちらのダンジョンマスターは理性を失っていると言う話だし、攻められた場合はその限りでは無い。

 …その間、皆はダンジョン攻略を頑張るように。少なくとも30層をクリア出来なくては、乗禍家との戦いは見学になると思っていてくれ。」


 …数ヶ月か。戦いは三年になってからかもしれないな。

 オレが乗禍家との戦いに意欲的だと手紙に書いてあったんだろう。

 わざわざ参加条件を教えてくれた。


(30層をなるべく早くクリアしないとな…。)


 ダンジョン探索中は中立派からの護衛もつくらしい。

 遠巻きから見守り、乗禍家の人間が襲ってきた時には駆けつけてくれるようだ。

 オレがダンジョンマスターだと言う事はバレないようにするが、念の為の保険と言う事だ。


 ちなみに、一旦この話し合いが終わったら契約書は作り直すそうだ。

 今のままだと外部にオレの事を話せないので、その調整をする為だ。


「……話は終わったようだな。それじゃあ断真君、ちょっと体を動かさないか?娘が強い武士もののふと言うから、ずっと気になっていたんだ。」


 諏訪父の話に返事するよりも早く、福良父が声をかけてきた。

 ソワソワとしながら、子供のように目を輝かせている。


(……福良と同じように戦闘好き(バトルジャンキー)か…。)


「む。それなら私も是非戦いたい!娘を任せる……チームメイトとして任せられるか確認したいからな!!」


 黒守父も腕まくりしながら叫び出す。


「お父さん…。気持ちは分かるけど、こんな所でやらないでよー。」

「ダディ!恥ずかしいデス!止めてください!」


 福良と黒守は恥ずかしそうに止めているが、止まりそうにないな…。

 ……奈子の言った通り、この二人とは戦う事になるのか。

誤字脱字報告ありがとうございます。


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