決着
ーーー復鬼完次視点ーーー
「乾、テメェ…!」
「…もう君達は囲まれているよ。」
乾の言葉と共に二階の教室や廊下の明かりが一斉につく。
…外を見ると、言田率いるチンピラ共も囲まれているようだ…。
(やはり罠だったか…。)
だが、心構えは出来ていた。
罠など力で粉砕するだけだ。
「うろたえるな!いくら風紀委員だろうと、何十もの強化がかけられた俺達の敵じゃねえ!!後の事など考えず、敵を殲滅しろ!!!」
部下達を一喝する。
時間が経つ程に俺達が不利になる。
バフが消えない内に敵を片付けなければ。
「「「はい!!!」」」
不良達は青い顔をしながらも動き出した。
…中毒者達も覇気の無い顔で後に続く。戦闘力としては不良達に劣るが、限界を超えても暴れ続けるゾンビのような奴らだ。
風紀委員と言えども苦戦するだろう。
「…よそ見してる余裕が有るのか?」
背後から、声と共に無数の斬撃が放たれる。
「不意打ちかよ!!」
即座に四つを切り捨て、残りの二つを左手で打ち払う。
(イテェ!!…だが、耐えられる。バフと俺の『頑強』が有れば、奴の『斬撃』は怖くねえ!!)
乾のウゼェ所は、剣士で有りながら『斬撃』スキルによって斬撃を飛ばしてくる所にある。
魔法よりも遥かに精密で連射も出来る斬撃が無効化出来たなら、もう乾を攻略出来たも同然だ。
「…まさか、素手で打ち払うとはね。これは長期戦を覚悟した方が良さそうだ。」
「そんな事、許すはず無ぇだろうが!!」
後ろに下がる乾を追撃する。
何度も攻撃するが、完全に攻撃が受け流される。
「それが乾家秘伝の『受け流し』か。…実際に受けてみると面倒臭ぇ技だ。だが、これでも防げるか!?受けてみやがれ!『焔』!!」
「…よく勘違いする人が居るが、魔法系のスキルだろうと受け流せるよ。……このようにね。」
俺の放った焔を剣で払い、そのまま上空へと軌道を変えていく。
…くそ!これが代々受け継がれた技って事か!
「これならどうだ!『一刀両断』!!」
『怪力』を込めた一撃だ。
しかも今は大量のバフが乗ってる。
これなら流石の奴も…!
「……これは。ギリギリだったな…。」
(マジかよ…。どうなってやがる。俺のスキルは全て進化済みだぞ?いくら名門が受け継いできた技とはいえ、無傷なんてありえねぇ!!)
いや、ギリギリと言っていた。
体力の続く限り攻め続ければ…!
「今度はこちらから行くぞ。『斬撃』。」
「またそれか!さっき防いだのを見ていただろうが!!」
しかも今度は一撃とはな!
剣で簡単に切り払う。
『パキィィィン』
「……は?」
剣が…真っ二つに折れやがった。
馬鹿な。この剣はSランクの名刀だぞ?こんなに簡単に折れるなんて有り得ん。
しかもさっきは四つも切り落としたんだぞ?
「続けるぞ。『斬撃』。」
「ッグ。ギャアアアアアア!!!」
左手で防御したが、全然防げねえ!一体どうなってる!!
(…腕に力が入らねぇ…。服もボロボロだ。)
あちこち切れてはいるが、致命傷だけはなんとか避けられている。
だが、このままでは…!
「クソ!ふざけるな!!一対一で貴様に負けるなど有り得ん!何をしやがった!!」
二発目の『斬撃』から急に強くなりやがった!
これではまるで…!
「…何もしてないよ。『受け流し』同様、『斬撃』も乾家が代々伝えてきた技だ。普段は威力が高すぎるので押さえていたが、久しぶりに全力で使わせて貰ったよ。」
「この俺に…手加減してただと…!?」
「今は全力で使ってる。…そろそろ終わろう。皆の戦いも終わったようだ。」
乾の言葉に周囲を見回すと、部下達が全員打ち倒されている。
風紀委員の奴らは…数人座り込んでいるが、全員無事だと!?
俺も刀が折れ、左腕は使い物にならん…。
(だが…ここで退く事など出来ん。せめて腕の一本でも手土産にしてやる!)
「ックソ!やってやる!!」
「行くぞ。『斬撃』。」
乾の斬撃を、殆ど動かない左手を犠牲にしてやり過ごす。
そのまま右手で掴みかかろうとした所で…。
「『瞬撃』。」
と言う言葉を、最後に聞いた気がした。
ーーー断真視点ーーー
本部の明かりがつくと共に、豪牙先輩を先頭に駆け出す。
向かうは本部に入ろうとしているチンピラ共の場所だ。
「我が名は豪牙厳無!将が居るなら出て来い!!」
豪牙先輩が名乗りを上げて敵の注目をひく。
50以上はいる敵を相手に、少しも怖気づく様子が無い。
(凄いな。オレなんて緊張で手が震えているのに…。)
こんな集団戦なんて初めてだ。
強化合宿と違って敵は人間だから、余計緊張する。
「豪牙だと!?お前ら!!アイツを狙え!!アイツを倒せば私達の勝利だ!!」
敵陣から大きな声が響く。
その直後、バラバラに何十ものスキルが放たれていく。
(豪牙先輩!)
事前に囮役をやると言っていたが、流石に心配になる。
敵陣から炎や氷、光や土といった様々なスキルが豪牙先輩に飛んでくる。
「『防御』!」
先輩がスキルを使用すると同時に着弾していくが…。
「ハハハ!!良いぞ!いくら豪牙家の人間と言えど、60ものスキルを一度に食らった事などないだろう!!ノコノコ出て来たのが運の尽きだ!!」
砂煙が舞い上がり、視界が急に悪くなる。
…やがて、風によって砂煙が晴れていくと…。
「進め!敵がこちらを狙っている間に接敵しろ!!乱戦になれば遠距離攻撃など怖くないぞ!!」
攻撃を食らう前と全く同じ姿の先輩が立っていた。
オレ達に号令を出すと、自らも敵陣の声のした方に走っていく。
「なんで動ける!!60ものスキルだぞ!?有り得ん!!……くそ!私に強化をかけろ!!その後はまた豪牙に攻撃だ!!」
また敵から号令が飛ぶが、指示が遅すぎる。
もう風紀委員の先頭は敵と戦い始めているぞ。
「ええい!!早くしろ!!」
幾つかの光が一人の男を包み込んでいく。
どうやら何人かは命令に従ったようだ。
(10に満たないバフを得られたが、代わりに居場所はバレたな…。)
「…そこか!『豪撃』!!」
先輩が正拳突きをすると、衝撃波が敵目掛けて飛んでいく。
…途中に居た兵士達が面白いように吹き飛んでいく。
(拳で戦うと聞いていたが、本当に剣を使わないんだな…。)
大和ではかなり異色だ。
西洋剣を使うオレよりも少数派だろう。
「うわあああ!……くそ!!『雷撃』!『風撃』!!」
「『防御』。」
敵の攻撃も全く意に介さず、目当ての敵の元へと進んでいく。
オレ達の向かっている敵右翼とは逆側に敵のリーダーが居るようだ。
(集団の先頭が戦い始めたか。オレ達もすぐだな。)
先頭が敵と戦い始めると、二列目はその次の敵と戦い出す。
敵は囲もうと周り込んで来るが、それより前へ進んでいくスピードの方が速い。
「オレ達も戦うぞ!」
気合を入れて剣を握ると、後ろから諏訪達に声をかけられる。
「適度にねー。『水龍』。」
「頑張りましょう。『風虎』。」
「行きマスよー。『光凰』!」
諏訪、黒田、黒守がスキルを使う。
…それだけで、敵が一気に混乱していった。
「龍だ!!やべえぞ!」
「虎だ!こんなの勝てねえよ!!」
「光った鳥…?なんだこれ…ギャアアアアア!!」
十人近くを一気になぎ倒し、前方に空白地帯が出来る。
折角のスペースが出来たので、前衛組と一緒に移動する。
(…相変わらず弱い。これならすぐ終わりそうだな。)
たまに錯乱状態の敵がいるので、そいつらにだけは注意が必要だ。
敵味方関係無くスキルを使ってくるので、巻き添えを食らう可能性が有る。
「『豪撃』!!」
「ギャアアアアアアア!!!」
敵左翼の方から、豪牙先輩と敵の断末魔が響く。
…どうやら敵のリーダーは倒したみたいだな。
「断真。乱戦だから注意しろ。こんな場所で怪我してもつまらんだけだぞ。」
敵を数人倒していると、先生に声をかけられる。
…福良も林も軽く流す感じで、諏訪達後衛がその分頑張っているようだ。
「分かりました。」
…敵も徐々に逃げ出し始めている。
ダンジョンマスターからの命令で逃げるなと指示されてるはずだが、もはや恐慌状態になってるのだろう。
これからは掃討戦になりそうだ。
「断真達は付き合わなくて良い。それより治療者の救護に当たってくれ。」
周囲に散った敵を探しに行こうとした時、豪牙先輩に声をかけられた。
ウチのチームには奈子も居るし、治療を優先した方が良いか。
倒れたり座っている人に声をかけていくと、思ったより怪我人が多い。
自爆技や流れ弾に当たったみたいだ。
(そこまで傷は深く無いが、奈子が居て助かったな。)
ポーションでも治せるが、奈子に治して貰った方が嬉しいだろう。
今となっては戦友だし、出来る限りの事はしてあげたい。
敵は重傷者だけ手当てをし、他は後回しだ。奈子が治療する必要も無い。
治療を終える頃には空が薄らと明るくなってきた。
建物内部で戦っていた風紀委員達に怪我人が多く、治療の方が戦闘よりも忙しかった位だ。
あちらは敵の主力部隊で、複数のスキルと大量のバフをかけた不良達は相当強かったらしい。
治療が終わった後は一旦帰らせて貰い、後日また報告を聞く事になった。
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