新しい配下
あれからも快進撃は続き、27層まで順調に進む事が出来た。
学生の内からここまで到達しているのは大和史上初めての事で、現在では三年の乾先輩や総番達よりも深く潜っている。
ただ、乾先輩は風紀委員の先輩とペアで潜っている為、深層への挑戦には消極的という話だ。
総番の方も学園内で組んでいるチームでは無理をしないらしい。
だから学園で一番強くなったと勘違いするのは危険だ。
20層踏破までは乾先輩達と総番とでチームを組んでいたが、結局性格が合わずに解散したらしい。
チームを組んでいた頃は歴代最強のチームとの呼び声も高かったようだ。
レベルも順調に上がり、全員が中級職に到達している。
一流というにはまだ早いが、もうすぐ一流という位置には来ている。
それと、無事に影山や鹿藤達を強化する事には成功している。
影山とは色々有って、結局正式な配下として迎える事になった。
『ユニット強化』こそしていないが、大幅に能力値は上昇しているようだ。
以前チームを転々としていた事も有ってクラスメイトの人柄についても知っているので、今後仲間を増やす時は協力して貰おうかと思っている。
そして、先生についてだが……。
「ふ、ふふふ……。二学期一杯で解雇か……。折角学園の教師になれたのにな……。ハハハ……。」
『森林亭』で昼間っから酒を飲んでいる。
茨山達の騒動の責任を取らされる事になってしまったのだ。
先生に落ち度は無いのだが、総番達が今回の腹いせにやったというのが諏訪の見解だ。
オレ達のクラスに多数の怪我人を出したのと、茨山達の監督不行届というのがクビの理由らしい。
休校明けに会った先生は灰色に燃え尽きていた。
「ホントに酷いよねー。先生は全然悪く無いのにねー。もし良かったら新しい就職先、世話してあげようかー?」
「なに!? ホントか!! ……いや、仮にも生徒の世話になるなんて…。」
「住み込み可で三食付きだよー? 断真の借金も残ってるし、生徒がどうとか言ってる場合じゃ無いと思うよー?」
「そ、それは……。」
今は諏訪が先生を慰めて?いる所だ。
このままなし崩し的に仲間にしてしまうらしい。
こんな事しなくても普通に頼めば承諾してくれると思うが……絶対諏訪は楽しんでやってる。
「お、ま、け、にー。今なら足の治療も出来ちゃうよー?ほらほらー。この契約書にサインしちゃいなよー。」
「足の治療だと!?…そうか、諏訪家は上との繋がりも広いんだったな…!何故それを先に言わん!」
先生が諏訪から契約書をふんだくって何も見ずにサインする。
それを見た諏訪と黒田が悪い笑みを浮かべている。
(……先生、契約書は読もうぜ…。)
先生の傷心につけ込んで、悪徳業者のような行為が目の前で繰り広げられている気がする。
……いや、仲間に引き入れるはずだから、そこまで酷い事はしない……はずだ。
「(放っておいたらどっかの派閥に取られちゃうからねー。…契約で縛って、他に行けないようにしておくんだよー。)」
諏訪が小声で話してくる。
校長を始めとして良識派も多くいるので、早めに手を打っておきたいらしいが…。
(その割には笑顔が怖いんだが…。…考えないようにしておこう。)
きっと大丈夫だ。仲間を信じよう。
「はーい。ありがとねー。これで先生はアタシ達の仲間だよー。」
「ああ!足が治るならダンジョン攻略も手伝ってやれるぞ!後一ヶ月もすれば教師でも無くなるしな!ハハハ!」
さっきとは打って変わって、楽しそうに酒を飲み始める。
足が治るのが本当に嬉しいようで、ゆっくりと左足をさすっている。
「先生……。」
その姿を見て、これ以上奇策に頼るのは良くないと感じた。
しっかりと話し合うべきだ。
諏訪も同じ気持ちのようで、ゆっくりと頷いている。
「(もう話しても大丈夫だよー。契約書にサインして貰ったから、アタシ達の事は誰にも話せない。アレは『契約』のスキルを使って作られた契約書なんだー。)」
……少し気持ちは違ったかも知れないが、取り敢えず話そう。
「……先生。」
「んー? なんだー? 断真はまだ飲んじゃダメだぞー?」
「…いえ、実はオレ、ダンジョンマスターなんです。」
「……そうかー。」
(…分かってるのか?)
飲みすぎたんじゃないかと心配になるが、ここで止める訳にもいかない。
「オレの配下になってくれませんか?役割はオレの護衛です。報酬は…「良いぞー。」」
全て言い切る前に先生が承諾する。
そして先生の体が光り、オレへと伸びてくる。
(……完了した。)
まだ酔ってるのかと先生を見ると、真面目な顔でオレを見つめていた。
「……まさか、断真がダンジョンマスターだったとはなぁ。…道理で、最近おかしな事ばかり起きる訳だ。」
「…平穏に暮らしたいんですけどね。」
10層のボス部屋はともかく、茨山達の事は完全に想定外だ。
学園が休校する騒ぎにまでなったし、オレも迷惑している。
「…じゃぁ、少し前からワタシが強化されてるのも断真がやってたのか?」
「…はい。すみません。」
「いや、謝る必要は無いさ。アレのお陰で先安を撃退出来たようなもんだからな。」
先生レベルになると、僅かに強化されただけでもすぐ分かるようだ。
先生はダンジョンマスターの関係者とも同じチームだった時があり、急に強くなったり弱くなったりする話を聞いた事が有るらしい。
今回似たような話をよく聞くので、オレ達の中にダンジョンマスターの関係者が居ると睨んでいたみたいだ。
(……そこまで分かるのか。…今後は本当に気をつけないとな。)
ダンジョンマスターの力を使うのは皆に聞いてからにしよう。
「悪意は感じられなかったし、取り敢えず様子を見ていたのさ。校長にも報告して無いから安心しろ。……しかし、断真!よくやった!!これで大和のダンジョンマスターどもは痛い目を見るぞ!!!いやーー、こんなに旨い酒は初めてだ!!!!」
…本当に大和のダンジョンマスター達が嫌いみたいだ。
(…ずっと治療出来なかったんだし、当たり前か。)
先生のクビに関わっている総番もダンジョンマスターの関係者だし、因縁の関係と言えるだろう。
「それじゃ、先生は冬休みから森林亭のウェイトレスだ。アタイはダンジョンに集中したいし、人手が欲しかったんだよな!」
「林…。何を言ってる?ワタシはウェイトレスなんて柄じゃ無いぞ?」
「先生……。契約書くらいしっかり読めよ。アレ、森林亭の雇用契約だぞ?」
「は!? なんだと!? ワタシはダンジョンに潜るんじゃ無いのか!?」
「アタイらが強くなるまでは、指導員としてたまに参加する位だぜ。後はウェイトレスだ。任せたぜ!」
(…そういう契約書だったのか。)
林と先生の話を聞いて、オレも初めて知った。
四六時中オレの護衛をしている訳にもいかないし、それだけのお金も出せない。
森林亭ならよく来るし、ちょうど良さそうだな。
「ック!ハメられたか!!……まぁ、足が治るなら良いか。お前らもすぐ強くなるだろうしな。」
先生と一緒に迷宮を潜る場合は、学園に認められる記録にはならない。
あくまで生徒同士のチームで潜った結果のみが成績や記録に反映される。
ただ、オレ達はずっと前から学園に報告してないし、全く問題無いだろう。
二学期も18層辺りを潜ったと言えば良い。
『真偽』のスキル持ちが確認を取るので、基本的に嘘は通用しない。
ただ、潜ってない場所を潜ったという場合だけが問題なので、逆については聞かれる事も無い。
27層まで到達しているオレ達が「18層を踏破しました。」と言っても、嘘をついた事にはならないのだ。
(後は筆記試験だが……こっちは皆で勉強だな。)
オレも一学期からダンジョンに夢中になっていたので、今回は頑張らなければ。
「そういや、断真は森林亭に下宿するのか?ワタシが護衛するなら、近い場所に居て欲しいんだが。」
先生の言葉に固まる。
まさか、先生からも言われるとはな…。
「いや、オレは男子寮で過ごす予定ですよ。…影山がオレを護衛する事になってます。」
「…影山が?…そういや、一緒に補修を受けてから仲良いんだったか。……だが、厳しいんじゃ無いか?影山の『隠密』は逃げるのにかなり有効だが、気付かれない内に襲われたら意味無いぞ?」
「……いや、命をかけて守ると言われました。絶対守ってみせると…。」
「……どういう事だ?そういう関係じゃ…無さそうだが。」
先生がとんでも無い事を言う。
そんな訳無いだろうに…。
「いや、少し前にそんな話が出たんですよ。で、その時は下宿で決まりかけたんです。……それも、ここに居る奈子達を含めて皆で下宿するって形で。」
あの時は焦った。
今時、異性の同級生と一つ屋根の下で暮らすなんて有り得ないだろう…。
そんな事になったらオレの精神が持たないぞ。
「…ふむ。それで?」
「それで、オレとしても流石に気恥ずかしかったんで、影山に相談したんです。…そうしたら、絶対に守ると誓われました。影山もオレと福良…達が一緒に暮らすのが嫌だったようです。」
…なんなら相部屋にしようとまで言われたからな。
全力で断ったが、それだけ影山も必死みたいだ。
(ただ……影山って福良の事を天然で大人しい子だと思い込んでいるんだよな。本性を知ったらどうなるんだろう…。)
「はにゃ?」
チラッと福良を見ると、首を傾げていつもの言葉を言われた。
……何か態度に出ていたか?
「ふーむ…。正直気合でどうにかなる話じゃ無いんだが…。他に何か手は打ってあるのか?」
先生が困った顔をしている。
……いや、先生だけじゃなく奈子達もだ。
この件に関してはオレ達男二人がワガママを言ってる形だからな……。
「……一応、奈子が『式神』で警護してくれてます。オレ達が寝ている間も常駐し、何かあれば皆に伝わるようになってます。」
「それなら一応は大丈夫か……。影山が時間を稼ぎながら騒げば鹿藤達も来るだろうからな。」
少し呆れたようにしながらも納得してくれた。
…これでオレの平穏が保たれる。
少しだけもったい無い気もするが、一緒に暮らすようになったらそんな事言ってられないはずだ。
絶対に精神が保たない。
この事も有って、影山を正式な配下とする事になったのだ。
せめて少しでも強い護衛を、という理由だ。
「じゃあまた明日な。」
「またね。洲君。」
奈子達に声をかけ、森林亭を後にする。
昼頃から話していたはずが、いつの間にか日が傾いている。
先生の治療は明日、お酒が抜けてから行う。
奈子は初めての治療に不安がっていたが、基本的に失敗する事は無いようだ。
怪我が治っても先生は今まで通り杖をついて過ごす。
敵の油断を誘う為に行うので、オレ達もそのように接しなければいけない。
先生のスキルやレベルはやはり凄かった。
超一流の域には達して無いし、ブランクが空いてるから数値よりも弱いと言っていたが、オレ達よりはまだまだ強い。
早く追いつかないとな。
寮まで送ってくれた林達とも別れ、男子寮へと帰る。
最近では女子に送って貰うのも慣れてしまった。
余り嬉しい事では無いが、拒否するなら森林亭暮らしだからな…。
(寝る前に皆のスキルをまとめてみるか……。)
以前まとめた時からかなり成長している。
久しぶりに見てみよう。
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断真 洲
クラスレベル
沙門Lv2(全体的な能力が向上される。)
スキルレベル
超強化【進化、統合】Lv5、偽装Lv5、魔断【覚醒】Lv4
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滋深 奈子
クラスレベル
陰陽師Lv2(遠距離系、特に陰陽師に関係する能力の強化。)
スキルレベル
式神Lv7、超回復【進化】Lv3、禍津魂【覚醒】Lv3
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林 蘭
クラスレベル
近衛Lv2(近接系、他者を護衛する能力の強化。)
スキルレベル
挑発Lv7、根性Lv6、玄武【進化】Lv4
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福良 せつな
クラスレベル
牛鬼Lv2(近接系、暴れれば暴れる程能力が強化されていく。)
スキルレベル
防御Lv7、反撃【覚醒】Lv5、狂牛化【進化】Lv3
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諏訪 祥子
クラスレベル
巫女Lv2(遠距離系、巫女に関係する能力の強化。)
スキルレベル
予知Lv4、水龍【覚醒】Lv4
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黒田 衛美
クラスレベル
軍師Lv2 (遠距離系、軍師に関係する能力の強化。)
スキルレベル
分析Lv6、風虎【覚醒】Lv4
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黒守 真理火
クラスレベル
天使Lv2 (支援系、他者を支援する能力の強化。)
スキルレベル
光陣Lv6、光凰【覚醒】Lv3
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横葉 由奈
クラスレベル
烏天狗Lv6 (近接系、一人で戦う場合に能力が超強化される。)
スキルレベル
一点突破【解放】Lv5、精密攻撃【解放】Lv4、心眼Lv10、無双【解放】Lv6
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