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断真家と滋深家

 皆の存在が近くに感じられる。

 配下でこれだと、眷属にしたらどうなるんだろうか。

 いつか眷属も作るんだろうが…楽しみなような怖いような…。

 聞きたい事はあるが、そこまで急ぐ事じゃ無いだろう。もう少しこの感覚に浸っていたい。

 そう思い、滋深を見る。


「洲君の存在が近くに感じられる…。」


 奈子も同じように感じているようだ。


(え?洲…君…?奈子?何故名前で…。)


 頭が混乱する。まるで、ずっと忘れていた何かを思い出せそうな感覚だ。


「…奈子?」


 思わず名前で呼ぶと、驚いたように奈子が振り返ってくる。


「洲君…。記憶が…?……ううん。違うか…。」


(どう言う事だ?記憶…?昔の…誰かの研究所で…。奈子と……。ッウ!)


 頭が割れそうだ。


「…どう言う事だ?さっき諏訪がダンジョン研究とか言っていた。それと関係あるのか?…それに断真家の復興ってどういう意味なんだ?」


 痛む頭を押さえて何とか言葉を紡ぐ。


「…うん。そろそろ知らなくちゃマズいよね…。全部話すね。『回復』。洲君の頭痛には効かないかもしれないけど、少しでも和らいでくれると良いな。」


(…頭は痛いままだが…癒される。)


 怪我じゃ無いと回復は効かないと言われているが、その通りのようだ。

 それでも癒しの効果があるだけ大分マシになってくれた。


「断真家は元々士族なんだよ。大分前に没落しちゃったけど、今でもいくつかの家とは関係が続いてるの。…滋深家とかとね。その関係で私と洲君はよく遊んでたんだよ。」


(断真家が元士族…そう言えば親父が酔った時言ってた気がする。でも没落した貴族家なんて五万と有るし、そこまで珍しいものじゃ無いな。それよりも、滋深家と繋がりが有ったなんて…。小さい頃仲良い子が居た気がするが、顔が出てこない…。)


 思い出そうとすると頭痛がする。


「それで、私達がまだ小さい頃に滋深家の研究施設に断真家をご招待したの。その日は大々的な発表が有るから他にも幾つかの家が集まってくれたわ。…あくまで内輪の話なんだけどね。」


 そうだ…。

 奈子と……一緒に見てた。


「でもその日に限って事故が起こっちゃったの。『解析』や『鑑定』を使ってダンジョンの物質を調べる研究だったんだけど、その日は何故か空中に真っ黒い穴が開いて…そこから何かが飛び出して……洲君の方に向かったの………。」


(……。)


「何かにぶつかった洲君は倒れちゃって…記憶が途切れ途切れになっちゃったんだ…。他に後遺症が無かったから断真家は許してくれたんだけど…。…今更だけど、ごめんね。滋深家の研究のせいで…。」


(…余り思い出せないけど、何となく…その時に古代の記憶を得たんだと思う。そうなると滋深家の研究のお陰でオレは力を得たのか…?)


 昔の事故の事は特に何とも思わなかった。

 それより辛そうな顔をしている奈子を見るのが嫌だ。


「特に後遺症も無いし大丈夫だよ。避けれなかったオレが悪いんだ。」


「洲君…。ありがとう…。あれ以来事故の事を思い出すと頭痛がするって話を聞いて、同じクラスになるまでは話しかけるのも控えてたんだ…。夏休みからはまた昔のように戻れて楽しかったよ。」


「オレも楽しかったよ。改めてありがとうな。」


 そんな秘密が有ったなんてな…。自分の事だが驚きだ。

 親父の野郎…もっと前に言えば良いものを…。


「断真家は没落したけど、また何か功績が有れば復帰可能だよ。後見役はずっと滋深家が担当してるんだ。だから断真がダンマスになって出世すると、滋深家も復興の道を歩める訳よ。…いやー、二人が幼馴染なのは知ってたけど、断真が記憶喪失なんて初めて知ったよ。」


 諏訪が捕捉説明をしてくれる。


(なるほどな…。だから最初に両家の復興と言っていたのか…。)


「でも命令された通り、当分?は秘密ね。断真が後継者だってバレると…下手すると内乱が起きかね無いんだよねぇ…。」


「内乱?いくら何でもそれは無いだろう。」


 諏訪の言葉を否定する。

 大和の有力な貴族家は強い力を持っている。

 そういう家に限って王家への忠誠心は高いし、とても反乱が起きるとは思えない。


「アタシもそう思いたいんだけどねぇ…。ダンジョンマスターを輩出する家は結構酷い家が多いのよ。…逆かな?殆どの家が、ダンジョンマスターの魅力にやられて腐敗していっちゃうの。国から最大級の支援が有って、全ての貴族から一目置かれる。多くの一流冒険者達が集まり、あっという間に大和でも有数の力を持つのよね。

 だからすぐに権力に溺れちゃうの。新興の家ほどその傾向は強いのよね。

 …大和にダンジョンマスター関係の資料が少ないのって、歴代のダンジョンマスター達が消していってるからなの。理由は簡単で、自分が大迷宮を支配した後に変な情報が有っては困るから。それで結局失敗しちゃうんだから、本当に救いが無いわ。」


(道理で…古代の記憶にあるダンジョンマスターと現在のダンジョンマスターでこんなに違う訳だ。)


 権力を集めないとダンジョンの攻略が出来ないと考えてるんだろう。

 それ自体は正しいと思うが、結局それが原因で失敗している気がする。

 かなり昔から悪循環に陥っているんだろうな…。


「今では古くて力のある家しかダンジョンマスター関連の知識は持って無いんだよ。滋深家も昔からダンジョンの研究をしているから目を付けられててね。研究資料を奪おうと目を付けられてるみたい。」


「なるほどな…。ダンジョンマスターの記録が少ないのはそのせいなのか。」


「そーそー。特に最近はダンマスの周囲に異常に強い奴らが増えちゃってるの。今まで二流くらいの冒険者がいきなり一流以上の力を得てねー…。そのせいでかなり上層部は困ってるらしいわよー。」


(急に力を…。となると、やはり他のダンジョンマスターは小規模ダンジョンを支配しているようだな…。擬似コア作成だけでなく『ユニット強化』もしてるみたいだ。)


「その力を得る行為…オレにも出来るぞ。ちょうど良いから皆にもスキルを与えよう。」


 今回の騒動を片付けた事でまたダンジョンコアにアクセス出来るようになった気がする。

 夢で告げられた気がするが…これは気のせいかな。


「うーん…。やっぱり出来るんだ…。となると、本気で内乱の可能性が高くなりそう。…あ!もちろんお願い!いやー、これからは断真様って呼ぼうか?旦那様でも良いよ?」


「…旦那様って呼ぶならこの話は無しだ。後…出来れば魔石を用意出来るか?それも大量に。強化には魔力が必要なんだ。これだけの人数だとかなりの魔石が必要になると思う。」


 11層の支配エリアからも移すつもりだが、それでも足りるか不明だ。


「ごめんごめん。もう言わないって!…でも、魔石かー、道理で…。少し前から魔石の値段が高騰し始めてるんだよねー…。」


(魔石が…?大和のダンジョンマスター達に魔力の操作なんて出来ないと思うが…。…いや、コアに直接供給する方法ならいけるのか?だが…そんな事したら不純物だらけでおかしくなると思うが…。)


 オレが魔石からわざわざ魔力を抜いてるのは、魔力を操作する事で自分の魔力にしているからだ。

 こうしなければ小部屋にただ魔力を注いでいるだけとなり、自分のモノとはならない。

 そしてこの過程を経る事で魔石の不純物も消えていく。

 魔石の不純物は元の魔物の負の感情のようなモノで、これが有るせいで未だに魔石を使う時は異物感と戦っている。


 人間は治癒能力があるお陰である程度使用しても問題無い。

 コアにも同じ機能が有るかもしれないが…。


(小規模ダンジョンのコアだし大した事無い気がする。しかも自浄作用とかを大和のダンジョンマスターが理解するとも思えん…。際限なく魔石を注ぎ込んでそうだな…。)


 不純物をダンジョンコアが取り入れ続けたらどうなるのかは不明だ。

 でも絶対にろくな事にはならないと思う。


「オッケー。でもアタシ達もまだ未成年だし、そこまで大量には無理だと思うよー。」


「ああ…。それは仕方無いさ。」


「とりま、コレ渡しとくねー。あの後コッソリ貰っておいたんだ。どう?アタシって凄くない?」


 そう言って諏訪が三つの物体を渡してくる。

 何か札に包まれているようだが…。


(これ…!茨山達が持ってた擬似コアか!道理で無い訳だよ…。)


 オレも探してみたが見つからなかった。

 泣く泣く諦めていたが、まさか諏訪が回収していたとは。


「ああ。凄い。超凄い。これならきっと足りると思うぞ!」


 何にせよ、手にする事が出来て良かった。

 少し勿体無いが、魔力が足りなければこれを使おう。


「そ、そうっしょー。アハハハーー……。……手。」


「え?!…ああ!ごめん!」


 つい手を握りしめていた。慌てて手を離す。

 興奮していたにせよ、女子の手を握るなんて恥ずかしすぎる…!


(…あれ?諏訪も顔が赤いぞ?)


「祥子は受けに周ると弱いよね♪」


「箱入り娘はこれだから困るよな…!」


「蘭も似たようなものでしょ…。」


 福良と林と黒田が話し始めたが…。


(まさか…。普段軽いノリだから気付かなかったが、男との接触が苦手だったのか…。)


 全然気付かなかった。


「断真は…ダンジョンマスターになる為にずっと頑張って来たのか?」


 四人でふざけ合ってると思ったら、林が声をかけてきた。


「そうだな。だから鉄人なんかじゃ無かったんだ。…悪いな。」


 つい謝ってしまった。

 以前林は鉄人に憧れていると聞いた気がするし、期待に添えなくて悪いと思う。


「へっ。謝るんじゃねーよ。むしろ尊敬するぜ。偉大な夢を追いかけるなんて男らしくて最高じゃねーか!」


「蘭はダンマなら何でもウェルカムですからネ!」


「あたぼうよ!ウェルカムはよく分からねーが、間違いないぜ!」


(林…ウェルカムくらい知ってろよ…。黒守にからかわれてるぞ…。)


 二人のやり取りを聞いてたら力が抜けてきた。


「オレがダンジョンマスターとしてできる事は『魔物召喚』と『自身と配下の強化』『他者を配下、眷属化にする』くらいだ。強化はそこまで大した事は出来ない。」


 少し性急な気もするが、オレが出来る事も告げておく。

 配下にした事で皆への信頼感がかなり増している。

 裏切られるなんて考えは殆ど無くなっている。


「え…?でもさっきスキルを与えるって?スキルって大した事だよね?」


「奈子…そうか。その辺の事を言って無かったな。皆を強化するのは『ユニット強化』を使うんだが、本来は深層のダンジョンコアにアクセスしないと出来ないんだ。オレはたまにアクセス出来るだけだから、いつも出来る訳じゃ無いんだ。」


 詳しい理由は不明だが、時折出来るようになる。

 と言っても次でまだ二回目だがな。


「…そうなんだ。」


「それと、1層の小部屋と11層の一部エリアがオレの支配区域となっている。あの騒動の時の魔物達は11層から呼んだ手下達だ。」


「え……?ごめん……。もう一度言って?」


「…?あの魔物達はオレが呼んだんだ。昼に訓練を抜け出してな。嫌な予感がしたから念の為にやったておいたが、大成功だったよ。」


 我ながら最高の機転だった。


「あ…。あの魔物達はやっぱりそうだったんだ。……ううん。そうじゃなくて。それも凄いんだけど、その一つ前に言った事。支配区域って……?」


「ん? オレはダンジョンマスターになったって言ったろ?1層の小部屋を支配した事でダンジョンマスターの資格を得たんだ。11層は擬似コアというものを見つけてから支配した。つい最近だな。」


「…………。」


「奈子?」


 奈子が固まってしまった。…いや、他の皆も止まっている。

 一体どういう事だろう。


「「「えええええ!!!???」」」


(急に大声で…!?防音の個室とか言ってたけど、大丈夫だよな?)


 軽く耳鳴りがする。…誰も来ないし、外には声が漏れてないみたいだ。


「ど、どういう事!?大迷宮の支配なんて大和始まって以来の快挙だよ!?」


(奈子がこんなに慌てるの初めて見るな。)


「…これが後継者って事かー。大和が長年かけて出来なかった事がいつの間にか達成されてるなんてなー…。」


(諏訪も遠い目をしてるし…そんなに凄い事だったのか。)


「…一部だけだぞ。」


「一部でもとんでも無い事なんだよねー…。以前別の迷宮からコアを持ってきて実験した時は、大量の『刺客』が現れて大失敗に終わったよ。大迷宮は封鎖されて、大和のトップ達が必死に沈静化に当たった程だよ。」


(大迷宮の封鎖って…最悪の事態じゃないか。…オレのした事って一歩間違えれば大惨事になってたかも知れないのか。大丈夫だと確信していたとはいえ、改めて知ると怖いな…。)


「そ、そうなのか。でもまぁ無事済んでるしな!」


 諏訪にそう答えておく。

 余り深く考えると眠れなくなりそうだ。

 何人か呆れた表情をしているが、凡人に変な期待をしないでくれ…。


「…うん。洲君はそこまで無理な事はしないって信じてる…よ…?」


(奈子…そこは言い切ってくれ。確かにポーション買ってなかった事とか有ったけどさ。)


「ともかく、そういう事だ。11層の魔物てした達はまた今度見せるよ。魔石の用意が出来たら皆を強化するからまた教えてくれ。それまでは大人しくしていよう。」


 無理矢理話を終わらせる。

 以前得たオレのスキルも話し、実際にスキルが取れた事も伝えておく。


(レベルについては伝えて無いが、どうせ少ししたら色々変わるんだ。その時に教えよう。)


 ずっと話していたせいでもう外が暗くなっている。

 途中で色々と質問されたりしたので、思った以上に時間がかかった。

 皆は林の家に泊まるみたいだが、オレはそういう訳にはいかない。

 諏訪や黒田には誘われたが断っておいた。


「じゃあ、また明日な。」


「うん。またね。」


 最後に見送りに来てくれた奈子に声をかけて寮へと帰る。

 林達は寮まで送ると言ってくれたが流石に断っておいた。


(今日は色々有ったな…。まさか皆を配下にして…奈子と幼なじみだった事も判明するとはな。…生憎殆ど覚えていないが、それでも嬉しいな。)


 魔石を集めるのに少し時間がかかるかもしれないけど、それが集まったらいよいよ強化だ!

誤字脱字報告ありがとうございます。


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