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強化合宿

 ーーー断真視点ーーー



 擬似コアを見つけてから一週間ほどが過ぎた。

 最近またクラスの様子がおかしい。

 何でも隣のクラスを仕切ってる人間がトラブルに遭ってるらしい。

 そのせいで隣のクラスの統制が取れなくなってるようで、うちのクラスにもちょっかいをかけて来ていると言う話だ。

 それを防ぐ為に福良や鹿藤を中心に、滋深や影山のチームを含めて結束を強めている。

 今の所大きな被害は無いと聞いている。


 何故伝聞なのかと言うと、オレの所には隣のクラスの奴らが来ないからだ。

 何でも隣のクラスを仕切っていたのは茨山の仲間の不良らしく、その関係で茨山達はスルーされているらしい。

 今ではオレも茨山の一味と思われてるので、オレの所にも来ないと言う訳だ。


(滋深達の方は大丈夫そうだが……一番おかしいのは茨山達コイツらなんだよな…。)


 少し前からふとした事でキレるようになった。今まではまだ分別が有った…かどうかは分からないが、今では完全にチンピラだ。

 とても上流階級の人間とは思えない。


(ダンジョン探索を休む日もダンジョンでうろついているらしいし…何より魔力の流れが異質過ぎる。)


 茨山を中心に魔力の渦が出来ている。まるで茨山が魔力を使って何かをしているようだ。


(だが…茨山自身はその事に気付いてないみたいだし…どう言う事だ?)


 考えられる事としては、何か呪われてる品を身につけてしまった可能性だ。

 だが本人が気付くはずだ。未だに解呪してないのはおかしい。コイツらは上流階級の人間で、解呪出来るだけの伝手も金もあるはずだ。

 洗脳系だとしても三バカの意識は有るようだし…さっぱり分からない。


(この魔力の渦…オレとの魔力パスにまで攻撃しようとして来やがるし…。そのせいで三バカの支配が中々進まない。)


 もう少しで完全支配という所まで来ているのに、最後の一歩が中々終わらない。

『偽装』をかけてるお陰で大した被害は無いが、早く支配を終わらせてこの三バカから離れたい。


(『強化』も問題無く使えるようになったし、レベルも上がった。時間が無駄にならなかったのは良かったが、コイツらと居ても全く楽しく無かったからな…。)


 完全支配したら肉壁にしようと思っていたが、それも邪魔なだけかも知れない…。

 完全支配と言っても自由意志を奪える訳では無いし、強制的に命令を出来る位なのだ。


(効果は絶大なんだが…下手に使うと周囲にバレるんだよな。学園とか有力貴族にバレたらオレがヤバくなる…。)


 だから完全支配したらオレに関わるなと命令して、暫くは大人しくさせとくだけになるかも知れない。

 いや、バレない範囲ではコキ使うかな…。


(ま、そこら辺は完全に支配出来たらまた考えるか。…そんな事より…レベル上がったんだよなー!)


 三バカを働かせた事で支援レベルがレベル6になった。

 もうクラスの平均か、そのちょっと下くらいまで来てるんじゃ無いだろうか。

 色々やっていたお陰で偽装スキルもレベル3になった。

 最高の気分だが、更に嬉しい事も有る。


(周囲には誰も居ないな…。)


 周囲を確認してから擬似コアに触れる。

 ここは迷宮11層のオレの支配エリアだ。

 無事擬似コアの支配も終了し、11層の一部を支配する事に成功したのだ。

 この辺りは擬似コアを持った者の修練区域として指定されているらしく、オレが支配しても問題無いはずだ。


(ダンジョンマスターとしても徐々に成長していってる…!1層の小部屋と違ってかなり広い範囲を支配したし、魔物を召喚してみよう…!)


 ついに魔物の召喚だ…。コアにアクセスし、『魔物召喚』を選択する。

 誰にも見られないように周囲を木々で囲み、草を頭の高さまで伸ばしている。

 人が近づいて来たらすぐ分かるようになっているし、準備は万端だ。


(まずは…ゴブリンを2匹くらい召喚しておくか。)


 魔物の召喚には魔力を使用する。

 いざと言う時の為にある程度は残すようにするつもりだ。


「ギャッギャッ。」

「グギギギ!」


 2匹のゴブリンを召喚すると、オレに頭を下げて来た。

 後は好きに行動させるか、何らかの命令を出すかを選択するだけだ。

 好きに行動させた場合はオレの支配エリアをうろついているらしい。


(好きに行動しろ。但し、人間と戦う場合は命まで取るな。)


「「ッギャ!!」」


 命令すると、良い声で返事をしてこの場を離れて行った。

 ゴブリン達に取っては一方的で理不尽な内容だが、人間の命を奪えと命令する事は出来なかった。

 ダンジョンマスターになると決心した時点で割り切っていたつもりだったが、滋深達と交流した事で甘くなったかもしれない。


(ダンジョンの魔物は生物という訳でも無いし…魔力の貯まりが遅くなるのを我慢すれば良いだけか。)


 ダンジョンの魔物は人間に倒されても死ぬ訳では無く、またダンジョンに還っていくらしい。

 例外は特殊モンスターで、コイツらは強さに応じて意志を持って行動している。恐らく『黒牛』も近い存在だと思う。


(うまくいったし、他にも召喚しておくか。このエリアだけモンスターが少ないのもおかしいからな。このコアでは『ユニット強化』を使えないみたいだし、魔力を多めに使っても問題は無いだろう。)


 ダンジョンコアへアクセス出来るのは1層の小部屋だけだ。

 ここの魔力を1層の小部屋に移す事も出来るが、『大迷宮』のコアへとアクセスするのは頻繁に出来ない。

 普段の戦いで貯まった魔石を小部屋に入れ、いざ使用する時に不足分を移せば良いだろう。



(…結構召喚したな。少し多かった気もするが…合宿の間は来れないし、まぁ良いだろう。)


 全ての魔物に人間の命を取るなと命令しておいた。

 この魔物を使ったダンジョン攻略も悪く無いかも知れない。

 20層までは特にペナルティも無く移動出来るらしいし、魔物達が攻撃を始めるまではダンジョン側の魔物も攻撃して来ないはずだ。

 誰かに『戦争みたいで面白いそうだね。是非いつかやってみよう。』と言われて許可された気もするが、変な夢でも見ていたのかも知れない。


(今日の所はこの辺にしとくか。誰かに見つかる訳にもいかないしな。)


 もうすぐ強化合宿だ。そちらの準備も始めないとな。

 合宿でも茨山達と一緒かと思うと気が滅入るが、もう少しの辛抱だ。


 合宿で大人数が集まる事への対策は結界やアイテムを使う事で行っている。

 長い間研究されて来たので万が一が起こる事も無いだろう。




「それじゃ、各自テントを張っておけ。この周囲には結界を張ってある。魔物に襲われる事は無いだろう。」


 ついに合宿だ。横葉先生が注意事項を話している。

 今日から三日間、15層で魔物と戦い続ける。

 体力の限界まで戦わされるので中々ハードな合宿だ。

 今までのオレは毎回魔物に倒された後は見学だったが…今回はどうなる事やら…。



「断真!!!……やっておけ……。」


「…ああ。」


 茨山が指示を出してくる。

 今も三バカ達の様子はおかしいままで、簡単にキレ出すので手に負えなくなっている。

 オレは支配を進めて来たお陰で直接被害を受けて居ないが、福良と鹿藤のチームにはよく突っかかって行っている。

 先生も鋭い視線を三バカに向けているし、このまま勝手に自滅していくかも知れない。


「…断真君。…大丈夫?」


 テントの設営をしていると滋深に声をかけられた。

 三バカに気付かれないように微妙に距離を開けて話す。


「ああ。…だが、思った以上にアイツらの様子がおかしい。滋深達も気をつけてくれ。」


「うん。断真君も何か有ったらすぐ来てね。」


 少しだけ話をしてすぐに設営に戻る。

 幸い滋深と福良のチームは全員オレの配下にしてある。

 擬似コアを見つけてから急いでやったが、最近の状況を見るに成功だったと思う。

 合宿中は一緒に居るし、何か有っても対処出来るはずだ。


(『森林亭』でやったから、先生まで一緒に配下にしちゃったんだよな…。最高に心強いんだが…バレたらどうなるか…。)


 先生はすっかり森林亭の常連になっていた。

 ツケにして食べて、オレがお金を払っているのだ。

 まだ学園からお金が払われて無いらしいが…こんな事バレたら問題になると思うぞ…。


「出来たぞ。」


「………ああ。…今日の訓練は休むと伝えておけ。」


 テントが出来た事を伝えると、三バカが中に入って行く。

 いつもは馬鹿にして来る千海達も黙ったままだった。


(中から不気味な笑い声が聞こえて来るが…ある程度近付くと止まる。…感覚も鋭いようだな。)


 盗み聞きは断念して先生の所へと向かう。茨山達の休みを伝える為だ。


(元気なオレは自由にして良いか。…本当に有り難い話だ。影山の所に行って…色々動かせて貰おう。)


 今日の三バカは本当にヤバい感じがする。

 いつもならダンジョン探索を休む事は無いのに、突然休むと言い出す。

 それに…諏訪達を見る目が情欲で濁っていた。あんな下衆な表情をする人間を初めて見た。

 無駄に終わるかも知れないが、出来る限りの事はしておこう。



「今日はここまでだ。今日休んだ奴は明日以降しっかりやれよ。…夜は見張りを立てるんだぞ。結界が張ってあるからと言って気を抜くなよ!!!」


 先生の声と共に今日の訓練が終わった。

 オレの事を睨んでいたし、サボっていたのがバレていたんだろう。

 後半の台詞は…かなり本気の表情だった。先生もこの合宿中に何かが起こると思っているのかも知れない。


「茨山、オレが見張りをやる。お前らは明日に備えて休んでいてくれ。」


「……ああ。」


(気を使うような台詞を言っても疑問に思って無いみたいだな…。)


 先生の警告とも取れる発言にも反応していなかった。

 いつものクレバーさは失われているようだ。


 クラスの皆が警戒している中、ついに異変が起こった。



「ま、魔物だ!!」

「助けてくれ!!」

「向こうにまだ仲間が残ってるんだ!すぐに助けに行ってくれ!!」


 深夜の静寂の中、遠くから助けを求める声が聞こえて来たのだ。


 ーーーーー


 クラスレベル

 支援Lv6

 スキルレベル

 強化(改)Lv2、クリティカルLv3、偽装Lv3、魔弾Lv3

誤字脱字報告ありがとうございます。


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