はじめてのデート
裕之の風邪も治り普通に登校できるようになった。
晴翔 「心配したんだぞ〜、どうだった?」
(隆盛にプリントやら何やら持たせてやったけどあれからなんか
進展したのか?)
裕之 「ありがとう、りゅうが毎日お見舞いに来てくれてさ〜」
晴翔 「うんうん。それで?」
(どうなんだ?抱き合ったとか?BL本ではもうすでに…って事も
あるじゃん、気になるだろ?推しカプとしてはさぁ〜)
裕之 「ん〜?荷物届けてくれただけだよ…?他に何かあるの?」
晴翔 「うんん!何にも〜。そっかぁ〜それだけかぁ〜」
(何も進展せずかぁ〜)
裕之 「あ、でもね。今度りゅうにデートしよって誘われた」
頬を紅く染めながら言うのでそれだけでほんわかとした気持ちになった。
晴翔 「そっか、そっか。楽しめよ。何かあったらすぐに連絡しろよ」
裕之 「うん。はるはいつも頼りになるよ。」
晴翔 「俺はいつでも二人の味方だからな!」
(リアルBLの推しカプなんて応援しないわけにはいかないだろ!)
休憩にトイレで隆盛とばったり会うと誰も近くにいない事を確信して声をか
けた。
晴翔 「週末デートするんだって?」
隆盛 「なっ!なんで知ってるんだっ!!」
晴翔 「いいじゃん。せめて手を繋いだりはしろよ!せっかく友達から
恋人に進展したんだしさ」
隆盛 「まぁ〜な!」
晴翔 「ん?ポケットに入ってるのは何かな?」
隆盛 「まっ…やめろ!返せって!」
晴翔がつまみあげて見ると数枚の写真だった。
それも隆盛と裕之のお姫様抱っこや壁ドン、ソファーに押し倒したもの
まであった。
見つめ合って照れたような仕草でお互いのことしか見えていない姿に一瞬
ドキリとした。
写真の中の裕之はリアルより何倍も色気を感じた。
晴翔 「何これ?誰が撮ったの?」
隆盛 「はぁ〜。姉貴だよ。なんか原稿?とかの資料にしたいって…」
晴翔 「へ〜。いい写真だね。ぜひ俺にも焼き回し頼んで欲しいな〜」
隆盛 「嫌だよ!俺だけのなんだから〜」
晴翔 「って事はひろもこれって、知らないのか?」
隆盛 「あぁ…」
晴翔 「残念…そろそろ授業始まるぞ!」
そう言って写真を返した。
裕之に友達としてではなく彼氏の前にだけに見せる顔があるとは思わな
かった。
晴翔 「もったいないよなぁ〜。」
(じれったい〜。デートでも尾行しようかな?)
同じ考えの人があと二人いる事など知りようもなかった。
デート当日、朝から裕之が弁当を作っているのを温かな視線でみる春花
の姿があった。
もちろん春花も尾行するべく少し時間をずらして行動を開始する。
美桜と待ち合わせすると裕之と隆盛が合流するのを待つ。
晴翔 「あれ?オヤジ先生じゃないですか!」
一瞬尾行の事を忘れて二人は我に返った。
振り向くとそこにはイベントでいつも買いに来てくれる晴翔の姿があった。
『オヤジ』それは、二人のサークル名でもある。
春花はオジとして、美桜はヤジとして活動。
いつも二人は一緒のテーブルでしかも同ジャンルを扱うというので常に一緒に
活動していて、二人合わせて『オヤジ』として活動していたのだ。
そこに腐男子である晴翔が惚れ込んで先生としたってくれていた。
しかも、それが弟の友達だったというのだ。世の中狭いものである。
春花 「待って!晴翔くん。ここではおねーさんで呼んでくれない?それ恥
ずかしいのよ。」
美桜 「そうね、私も同感だわ。適当に付けたとはいえ、イベント以外では
やめてほしいわ!」
晴翔 「了解です。おねーさん!」
春花 「よし、裕之を付けるわよ」
美桜 「隆盛のやつ、今日こそは進展して欲しいわ」
晴翔 「ですよね〜。裕之のやつ結構ピュワすぎっすよ!おねーさんの弟
なのに」
春花 「ん?…なんか棘があるわね」
晴翔 「ないっすよ!俺、先生のファンなんで。」
そんな会話中にも、見ている先で裕之と隆盛が一緒にディズニーの入り口
へ向かって行くのが見えた。
地図を片手に会話しながらアトラクションに並ぶ。その後を追うように数
グループ間隔を空けて並んで様子を伺った。
春花 「なんかただの友達みたいな距離よね〜?耳くらい付ければいい
のに…裕之のやつ絶対似合うし」
美桜 「隆盛のやつ、手ぐらい握れって!耳!いいわね、指示出すわ」
春花 「なにそれ、だせるの?なら手も繋げって言って!」
晴翔 「あの〜おねーさん?ちょっと〜」
(わーーー。その指示嬉しけど…ちょっとやりすぎると怒られる
気がする〜)
美桜 「よーし、見てろよ!」
春花 「いいね、いいね!」
ノリノリの二人を止める事もできず、晴翔はただ裕之と隆盛のデートを眺め
ることしかできなかった。
(強く生きろよ!二人とも!)
その頃、後をつけられてるなど考えてもいなかった裕之と隆盛はデートを
楽しんでいた。
裕之 「次、これ行かない?」
隆盛 「いいな!並ぼうぜ。」
裕之 「みんな獣耳付けてるんだね〜。可愛い〜」
隆盛 「付けたいのか?」
(ひろがつけたら可愛いだろうな〜)
裕之 「いいよー似合わないしー。それに男女のカップルばっかじゃん」
ピロンッ。
裕之 「メール?」
隆盛 「あぁ、兄貴からだ…なっ!」
裕之 「何かあったの?」
いきなり真っ赤になって回るをキョロキョロし出した隆盛は諦めたように
何かいいただな顔をしていた。
裕之 「どうしたの?何かあったなら話して?」
隆盛 「なんでもない…あとで耳買いに行こうぜ。」
裕之 「いいってば〜」
隆盛 「いや、そうもいかなくなった。気にするな!」
裕之 「?」
なんのことか分からない裕之はそのまま言われた通りつけ耳を買いに行く事
になったのだった。