恋人紹介
雨が続いて憂鬱な日が続いていた。昼も屋上に行けず、空き教室で弁当を
食べていた。
隆盛 「ひろ、今週の土曜日家に来ないか?」
裕之 「うん、いく?はるは?」
晴翔 「すまん、俺はその日用事があってさ。ひろだけで行ってこいよ。
エロ本あるか散策してこい!」
裕之 「なっ!」
隆盛 「そんなもん、ねーよ!」
晴翔 「冗談だって!まぁ、楽しんでこい!りゅう、ちゃんと頑張れよ!」
意味深な言葉を残してチャイムが鳴った。
教室へ戻ると授業が始まる。
裕之はさっきの言葉の意味がわからないまま週末になった。
ー前日ー
隆盛 「なぁ、姉貴?明日さぁ恋人連れてくるからしばらく出ててくんない?」
美桜 「はぁ?何で私が出てかなきゃなんないのよ?どんなやつか見てやろう
じゃん。見極めてやるわ」
隆盛 「何でだよ!嫌われたらどうすんだよ!」
美桜 「それならこそまでの関係だたって事よ。」
隆盛 「最低だな!いい、絶対に合わせないから!」
怒って部屋に籠ると裕之に電話をかけた。
裕之 『どうしたの?何かあった?』
隆盛 「ごめん、明日ちょっと家入れないかも…」
裕之 『そっかぁ〜、ならうち来る?』
隆盛 「いいのか!そっちも姉貴いるよな?大丈夫か?」
裕之 『平気だよ、話しておいた方がいいかな?』
隆盛 「どうやって説明したらいいか迷うよな?悩ませてごめん。」
裕之 『謝らないでよ。僕も好きだから返事したんだし。』
隆盛 「俺も好きだよ。明日そっち行くな!」
裕之 『うん。待ってる』
隆盛の家には行けなかったけど、裕之の部屋に付き合って始めて招待するのは
ドキドキして掃除機を取りに行くと掃除から始めた。
春花 「あんた、今何時だと思ってるのよ?何で掃除なんか…」
裕之 「あ、ごめん。ねーちゃん!ちょっと明日ともだ…今付き合ってる人
が来る事になってさ」
春花 「え…!あんた恋人できたの?」
裕之 「う…うん。あのさ、母さん達にはまだ言わないで」
春花 「いいわよ。でも、ちゃんと紹介しなさいよ!おやすみ」
裕之 「うん…。」
あっさり引き下がった姉に少し安堵した。
姉には晴翔と隆盛の事はただの友達という形で知られている。
それがまさか付き合っているといったら、なんて反応するだろう?
もちろん話さないというのもあったが、家族だし、いつかはバレる気がする
なら、この機会に話してしまおうと考えていた。
いつも裕之のやる事に口出しする事はないから、今回も反対はされないだろ
うと考えていたからだ。
土曜日、両親は仕事で出掛かると、隆盛が家にやってきた。
裕之 「ねーちゃん、びっくりしないでね。」
春花 「なによ?さっき恋人来たんでしょ?紹介しなさいよ。」
裕之 「う…うん。僕の恋人ってさ、高橋隆盛なんだ!」
隆盛 「隆盛です。いつもお世話になってます」
春花 「……」
(はぁぁぁっぁぁーーーー!マジか!裕之の彼氏って隆盛くんだったの!?
マジでいい!すっごいイケメンになってるしってこの事、美桜知ってるの
かな?)
裕之 「ねーちゃん?あのね、まだお試しって感じで付き合う事にしたんだ…
だから。」
春花 「ん?あー。いいの、いいの。気にしないで。そっかぁ〜。隆盛くんかぁ
それで、どこまでいったの?キスはしたよね?今日はうちに来るって事
は…風呂沸かしておこうか?」
隆盛 「いや、あのっ!」
裕之 「なんで風呂?」
春花 「まだ早いか?どうなの?」
隆盛 「まだ…何も…」
裕之 「だから付き合うって事になったってだけだって!」
春花 「キスくらいするでしょ?」
裕之 「まっ…まだに決まってるじゃん!」
春花 「そっか、まぁ〜隆盛くん、うちの裕之をよろしくね。私、ちょっと
出かけてくるから、今から二人っきりよ!頑張りなさい!」
それだけ言うと、春花は家を出ていった。
裕之 「ごめんね。ねーちゃんが変な事いって…」
隆盛 「いや…そんな事ねーよ。なんか認めてくれるって嬉しな」
裕之 「そうだね。はるだけだったからね」
隆盛 「ひろ…あのさ〜」
窓の外でこっそり眺める春花に気づかない二人が顔を近づける。
外ではドキドキしながら中の様子を眺めるのだが、本人同士はなかなか進展しない。
隆盛は裕之の髪に付いたゴミを取ると、すぐに離れてしまった。
隆盛 「ゴミがついてたから…」
裕之 「う…うん。ありがとう。あのさ僕の部屋いく?」
隆盛 「そうだな…」
友達だった頃には何度も入った事があるが、付き合い出してから初めて入ると
それだけでなんだかドキドキしてしまう。
掃除もしっかりされていて、机の上には可愛くもない猫のぬいぐるみが置いて
あった。
隆盛 「これってぬいぐるみもあるんだな?」
裕之 「うん、可愛いでしょ?実はTシャツもあるんだよ!」
出してきたのはいつも鞄に付けている目つきの悪い猫だった。
色々なグッズがあるらしくところ狭しと並んでいた。
ベッドの下の机の前に座ると、学校での事や晴翔の事など他愛も
ない会話をした。
春花 「裕之いい?」
裕之 「うん、いいよ!なに?」
ドアがノックされ春花が紅茶とお菓子を持って入ってきた。
春花 「隆盛くん、ゆっくりしていってね」
隆盛 「はい、ありがとうございます」
裕之 「ねーちゃん、ありがとう」
春花 「いいのよ、気を使わずにゆっくりね」
意味ありげな言葉を残して出ていった。
もちろんすぐに隣の部屋へと入ると壁に耳をつけて聞き耳を立てる。
(早く押し倒しちゃいなさいよ!っていうか、どっちが上にな
るんだろう?やっぱり裕之はネコかしら?)