避けられてる?
手の置き場に困っていると、晴翔が帰ってきた。
晴翔 「どうした?こんなところに立ちっぱなしで?」
隆盛 「ん?何でもない。はる何か歌うか?」
晴翔 「あーそうだ今回のアニメの主題歌が入ったって言ってたっけ?」
話を誤魔化すと隆盛は裕之と一緒に席に座った。
今度は隣の席に…。
外で一部始終を聞いていた晴翔は二人の変化に喜びを感じていた。
(生でBLって最高!しかも間近で拝めるって!)
腐男子の白石晴翔にとってはこれほど嬉しいニュースはなかった。
誰かと分かち合いたいが、それは許される事ではなかった。
これからは彼らの恋の進展を間近で見守っていくと心に誓うのだった。
隆盛 「そろそろ時間だな?」
晴翔 「あー。早かったな〜。」
裕之 「あのさ!はる!僕達付き合う事になったから!」
隆盛 「!!」
晴翔 「うん、よかったな!じゃー。帰るか!」
裕之 「うん!」
隆盛 「ちょっ…ちょっと待った!なんではるに言ってるんだ?」
裕之 「あっ!そっか。あのね、はるに相談してたの」
晴翔 「俺が後押ししてやったって訳!これからも二人の事応援すっからな!」
隆盛 「はるは、認めてくれるのか?俺らの関係…」
晴翔 「もちろん!親友が幸せならどんな恋だって応援するぜ。周りには知られ
ない方がいいけど、俺は二人には幸せになって欲しいし。」
隆盛 「はる…お前いい奴だな〜」
晴翔 「今更かよっ!」
こうしてめでたく結ばれる事になって親友同士の恋愛に晴翔は心躍らせていた。
が、次の日になってもあまり日常に変化はなかった。
裕之 「りゅう〜ご飯一緒に食べよ〜。」
隆盛 「あぁ、はるも屋上行こうぜ!」
晴翔 「う…うん。」
3人で過ごす時間は変わらず、二人にしても一向に変化はなかった。
晴翔 「あのさ〜。お前ら付き合ってから一週間経つけどなんも変わらね〜
のな?」
裕之 「ごほっ、ごほっ!変わらないって、何が?」
隆盛 「…」
晴翔 「ほら、もっとこう。ドキドキすることだよ。」
(ヤルことなんて決まってるだろ?抱きしめたり、キスしたり、アレやコレとか)
裕之 「でも、いつもドキドキするよ。」
隆盛 「あぁ、近くにいて、俺の事好きっていってくれるだけで満足だし…」
晴翔 「あ〜。そうなるのか…」
裕之 「?」
晴翔 「あーなんでもねーや。そういえばお互いの家には遊びに行かねーの?」
裕之 「え…/////」
隆盛 「あー。くるか?/////」
裕之 「行っていいの?」
隆盛 「もちろん。姉貴がいるけど親は帰ってくるの遅いし」
晴翔 「お!」
(これは…いい展開に!?うー。俺も覗きに行きてー)
二人が付き合いだしてから、スキンシップが減った気がする。友達同士であった
頃には抱きついたり、手が触れる事も何度もあったし、戯れ合う事は幾度とあった
のだが、今は少し触れただけで裕之が真っ赤になるので、それ以上触れられずにいた。
そしてそれ以外に変化があったのは隆盛の方だった。
いつもロッカーに入っているラブレターの相手にちゃんと会って断りを入れているよ
うだった。
裕之 「あれ?りゅうは?」
晴翔 「今日の分のラブレターの返事で呼び出され中」
裕之 「あぁ…なるほど。モテるもんね〜」
晴翔 「そんな奴の心を射止めた奴に言われたくねーよな〜」
裕之 「ちょっと見てくる〜」
晴翔 「おう、行ってこい」
大体呼び出されるのはひとけがない場所。
今日も女子生徒と話している隆盛を発見した。
何やら話し込んでいる。困った顔に隆盛に少し笑いが込み上げてきた。
(モテるくせに…あんなに困った顔して〜。相手の女子って可愛い子なのにな〜)
次の瞬間、いきなり女子生徒が隆盛に抱きついていた。
心の中で何かモヤモヤした感覚が湧き上がってくる。
隆盛が女子生徒の頭を撫でると、泣きながら女子生徒は走り去っていった。
ずっと隠れて見ていた裕之はすぐに出て行く事ができなかった。
別に自分がいるから断ってくれたのは分かるが、胸のモヤモヤはなかなか消え
てくれない。
隆盛 「ひろ?待っててくれたのか?」
裕之 「う…うん。用事は終わった?」
隆盛 「うん。一緒に帰ろう?」
裕之 「うん…」
隆盛と話しているとさっきのモヤモヤも消えて、ドキドキに変わる。
頭を撫でられるのも嫌じゃない、嫌じゃないけど。
さっき女子生徒を触った手で、触れられたくなかった。
咄嗟に触れてくるのを避けると走り出した。
裕之 「早く、帰ろう!」
隆盛 「あぁ、そうだな」
隆盛は触れようと差し出した手を避けられて、宙に浮いた手を握りしめた。
帰り道でもいつもと同じように裕之が家に入るのを見届けて、晴翔と自宅方面
へと歩きだした。
隆盛 「はる、ちょっといいか?」
晴翔 「ん?何かあったなら相談乗るぞ?そこの公園寄ってこうか?」
隆盛 「あぁ…」
ベンチに座ると、晴翔は隆盛が話出すのを待った。
隆盛 「何かさ、さっきひろに触れようとしたのを避けられた気がしてさ。
やっぱり告白見られてたからかな?ちゃんと断ったんだけど…」
晴翔 「ちゃんと断ったんならいいじゃん。それ以外に何かあった?」
隆盛 「いきなり抱きつかれた…」
晴翔 「それってひろも見てた?」
隆盛 「…多分?」
晴翔 「ふ〜ん。それってちょっとヤキモチじゃない?最近あんまり触れない
だろ?流石に人目がある時はダメでも、俺たちだけの時はスキンシップ
って大事だと思うぞ?」
隆盛 「恥ずかしくて…告白したら余計にドキドキしちゃって…」
晴翔 「うーん、でもさ、あまり触らなくなると、飽きられるぞ?その前に唇で
も奪っちゃえば?」
隆盛 「!!…一体、何を、言い出すんだ!」
晴翔 「いやいや、キスくらい普通だろ?男女では当たり前だろ?確かに男同士っ
てのはネックになるかもしれないけど、やることは一緒だぞ?」
隆盛 「初めてかな?」
晴翔 「あー。そりゃそうだろ?聞いといてやろうか?」
隆盛 「いや、いい。何も言わないでくれ。」
晴翔 「そう?今度家に行くんだろ?だったら、唇くらい奪ってこいよ」
隆盛 「まだ、付き合ったばかりだし…手も握れてねーし。」
晴翔 「はぁ〜?友達の時握ってたじゃん!」
隆盛 「それと、付き合ってからとは別だ!」
二人の純粋な関係に頭を悩ませる晴翔だった。