本気出すから
深く長いキスを終えて離れた時には真っ赤になった裕之が力なく
地面に座り込んでいた。
隆盛 「大丈夫か?キスは慣れたんだろ?」
裕之 「ち、違うし。いつものと!」
隆盛 「どう違った?良かったか?」
裕之 「う…ぅん…。」
隆盛 「今度から本気のキスするからっ!またな!」
それだけ言い残すと隆盛は帰っていった。残された裕之はゆっくりと
立ち上がり家へと入った。
すぐに二階へと上がるとベッドへと潜り込んだ。
(恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい。)
いまだに鼓動が耳元で大きく聞こえて来ていていつも以上にドキドキ
が止まらなかった。
後日、発表されたミスコン優勝者の写真が大きく張り出されていて、
そこには慣れない接客をしている裕之の姿が大きく映し出されてい
たのだった。
松尾はしばらく謹慎をしているらしく体育の授業も会うことはなか
った。
そして変化といえば、あの日以来隆盛の触り方が焦ったくなった事
だった。
屋上はもちろん、空き教室に誘われキスまではいいのがだそのあと
色々と触れてはくるのだが、肝心なところには絶対に触れて来ない
ところだった。
裕之の表情を見て判断しているのか、その気になる前に衣服を整え
られ、頭を撫でられると微笑まれ教室へと戻っていく。
裕之 「あーーーーっ!!なんなんだよ!」
晴翔 「どうした?」
裕之 「べっつに〜。なんでもないもんっ!」
晴翔 「りゅうが最後までやってくれない!って感じか?」
裕之 「なっ!/////…なんで!!」
晴翔 「図星か?ヤって欲しいとか?」
裕之 「いや…わかんねー。でもいつも焦らされて、そのまま
ってのもちょっと…怖いけど…りゅうなら我慢できる
かなって思って…」
晴翔 「なら、自分で慣らしておけば?もしその時が来たらって
思うならさ。」
裕之 「慣らすって…まさか!?」
晴翔 「春花さんと美桜さんからもらったのがあるだろ?」
裕之 「あんなの無理だろ!痛かったし!」
晴翔 「へ〜痛かったんだ〜。」
真っ赤になって反論したのを後悔すると、裕之はすぐにいてもたっ
ってもいられなくなって出て行ってしまった。
その時出て行った扉の裏で聞いていた隆盛が晴翔の元へとゆっくり
歩いて来ていた。
晴翔 「聞いてたか?」
隆盛 「あぁ、これは…嬉しい反応だな…」
晴翔 「だろ?裕之ならきっとこういうやり方のがいいって言った
だろ?それに性急に求めない方が効くだろ?」
隆盛 「だが、こっちも結構我慢するのもきついがな」
二人の会話など知らない裕之は一人悶々としていた。
それから数日が過ぎて、隆盛のいるサッカー部は全国大会本戦へと赴
いていた。
初戦の相手は前回優勝チームで応援の意気込みも凄まじかった。
裕之 「んっ…りゅう…?…ひゃっ…どこ舐めてるのっ!」
隆盛 「落ち着くから…しばらくこのままでいさせて…」
裕之 「う、うん…んっ…あっ…くすぐったいって…」
トイレの奥の個室、そこで緊張を鎮める為と言われて裕之は隆盛の好き
なようにさせている。
最初は抱きしめられ、キスをするうち上着を脱がされ、上半身は裸のま
ま隆盛に触れられているのだ。
いろんなところにキスを落とし舐められるのは慣れるものではない。
でも、どこかくすぐったい以前に熱くなる顔に恥ずかしくて顔をそらす。
そんな事も見過ごしているかのように顎を掴まれ、目線が合う。
見られるのが恥ずかしくて、今度は裕之の方から唇を重ねる。
くちゅくちゅ。と音が響くが外の熱気や歓声に紛れて気づかれないだろう。
もちろんトイレは清掃中の看板と清掃員に扮した晴翔によって誰も入らせ
ないようにしている。
男性 「トイレ使えないのか?急いでるんだが…」
晴翔 「そうですか〜。ちょっと待って下さいね。奥はまだ清掃中なので
手前で済ませて下さいね!」
そう、大きな声で中に分かるように声をかける。
晴翔の声を聞き、隆盛は苦笑いを浮かべて裕之の口を塞ぐ。
裕之 「…!…んっ…っ…」
何度も触られ敏感になっている肌を擦られながらキスで声を塞がれているのに
誰かが入ってきた音が聞こえると、全身がより敏感になって声が漏れる。
用を足して出ていくと、奥の個室でガタンッと大きな音がした。
自分の足で支えられなくなった裕之を座らせると隆盛の嬉しそうな視線がふっ
てきた。
裕之 「ひどい…誰かいたのに〜!」
隆盛 「なんか期待してたみたいだったからさ?こういうのって興奮するかも
学校でもやりたいな〜」
裕之 「絶対に嫌だからっ!今日はどうしてもって言うから…」
隆盛 「うん、そうだな。もう平気だ!ありがとな…チュッ」
裕之のおでこにキスを落とすと、真剣な顔つきになって出て行ってしまった。
残された裕之はしばらくその場で固まっていた。
今出て行っても、身体中触れられた場所が熱くて観戦どころではなかった。
数分後トイレから出ると、外では晴翔が待っていてくれた。
出てきた裕之の首筋を見るやいなや、すぐにタオルを巻くと帽子を被せる。
晴翔 「首のタオル外すなよ。痕がついてる。」
裕之 「なっ…!!」
晴翔 「ほらっ!行くぞ」
そう言うと、裕之の手を引き席へ戻る。
いつもなんだかんだ言って裕之と隆盛のフォローをしてくれる晴翔には感謝
している。