嫉妬の監禁
足音が空き教室の前で止まると、ガラッとドアが開いた。
中に入って来たのは見覚えのある顔だったが、誰かは分からなかった。
松尾 「結城くん、お待たせ〜。一緒に帰ろう?」
裕之 「んーーー!んーーー!」
松尾 「そっか、話せないんだったね。ごめんね。」
勢いよくガムテープを剥がされ唇の周りがうっすらと赤くなった。
裕之 「どうしてこんな事するの?早く解いてよ!」
松尾 「だってさっき寝てたからこの教室に運んでおいたんだよ、縛
ったのはごめんね、すぐに帰っちゃいそうな気がしたから」
裕之 「な…なんで?りゅうやはるが待ってたのに…」
松尾 「そろそろ返事を聞こうと思ってね。この前手紙入れたんだけど
ちゃんと読んでくれた?」
裕之 「手紙?…いつの事?」
松尾 「ちゃんとロッカーに入れたのに…読んでもくれないんだ?」
裕之 「本当に知らないんだって!」
松尾の声が一段と低くなる。
松尾 「隣のクラスの奴の名前なんて覚えてない?」
裕之 「ごめん、でもさっき食べに来てくれたのはちゃんと覚えてるよ!」
松尾 「でも、写真一緒に撮ってくれなかったよね?なんで?撮りたくな
かった?」
裕之 「あれは、誰とも撮らないから!君だけじゃないよ!」
松尾 「松尾!松尾広樹だよ。君じゃないし、ちゃんと覚えて」
裕之 「松尾くんね、うん、覚えたからこれ解いて」
穏便に説得する事にした。
今いるのが更衣室として使っていた空き教室じゃないとなると隆盛がくる
事もあてにできない。
松尾 「解いたら逃げるよね?帰る前にお話ししよう?」
裕之 「今日は疲れたから早く帰りたいな〜って」
松尾 「少しくらいならいいだろ?それとも誰か待ってるの?」
裕之 「…」
松尾 「そういえば白川晴翔と高橋隆盛とは仲良かったよね?僕も仲
よくしたいだけなのに…高橋が邪魔なんだよ!わかる?」
裕之 「へ〜そうなんだ〜」
松尾 「余裕そうだね?これなら余裕でいられないよね?」
裕之 「ちょっ…待って…いやっ…触るな!」
着替えた制服のボタンを外していくとブレザーの中のシャツのボタンも
外し出した。
中にはTシャツも着ているが薄い生地で夜の気温には寒かった。
前を全部はだけさせられるといきなり、首を掴まれた。
裕之 「ぐっ…苦しっ…やめっ…、かはっ…かはっ!」
松尾 「これは…誰につけられたの?結城くんってそういう事だっ
たんだ…」
裕之 「な…なにを?」
松尾 「なら、僕ともいいよね?」
裕之の首筋につけられた赤い痕を見つけた松尾はその痕の上に噛み付
いて歯形を残した。
裕之 「いやぁっぁ!痛い、痛い、やだっ!助けて!」
松尾 「少しは黙っててよ、すぐには返せなくなっちゃうけれど…
そういう事が好きなんだよね?ちゃんと僕ともしようよ!」
裕之 「な…なに?なに言ってるの?」
ハンカチを裕之の口に突っ込むと、胸の飾りに爪を立てて噛み付いた。
裕之の声にならないくぐもった悲鳴があたりにこだまする。
拉致された時と似通っていて、顔色が真っ青になっていく。
下半身をゆっくりと撫でられビクッと体が反応する。
ズボンのチャックを下ろすとそのまま一気に引っ張り脱がされた。
松尾 「結城くんはどういうのが好みかな?焦らされる方がいい?
それとも…痛くした方がいいかな?泣いたってやめないよ?」
松尾の手つきがいやらしくなっていく。布の上からでも分かるくらい
執拗に触ってくる。
唯一身につけているパンツに手をかけると大きな音が響いてドアが外れ
内側に倒れてきた。
隆盛 「ひろー!!大丈夫か……てめぇーひろに何触ってんだ?」
晴翔 「ひろ!!」
隆盛は怒りの形相で松尾の方へと駆け寄ると殴り飛ばしていた。
裕之 「んーんんーーー!んんーーー!!」
隆盛 「ひろに汚ねー手で触ってんじゃねーよ!痕をつけるなんて
許さね〜。」
晴翔は回り込み縄を解いてくれた。
すぐに松尾を殴る隆盛を止めにかかった。
裕之 「りゅう!もうやめて!これ以上やったら、全国大会行けなく
なっちゃうよ!」
隆盛 「あぁ、ひろ大丈夫か?まずは服を着よう!それからっ…どこ
か痛むところはないか?」
裕之 「大丈夫だから…りゅうとはるが来てくれたから…」
隆盛は素早く裕之の身なりを直すと、ズボンを履かせた。
確認する様に身体中を触ると、ぎゅっと抱きしめた。
隆盛 「いきなりいなくなって怖かった…また何かあったんじゃないかと
不安で、不安で…」
裕之 「うん…僕も怖かった。でも、きっとりゅうが来てくれるって信じ
てたから…」
隆盛 「遅くなってごめん。これ…首に跡が…」
裕之 「うん、さっき締められたから…」
隆盛 「くそっ!許さね〜。もうちょっと殴っとくか!」
裕之 「いいって、大丈夫だから。」
そういうと下で気絶している松尾を見下ろした。
松尾を置いてそのまま教室を出ると家に向かって歩きだした。
晴翔はそのまま隆盛に裕之を任せこの事を先生へと連絡を入れるらしい。
晴翔 「ちゃんと送ってけよ!」
隆盛 「あぁ。そうするよ」
裕之 「そんなに心配しなくても…」
裕之が言いかけたが、すぐに隆盛に遮られると隆盛に手を引かれ歩きだした。
隆盛 「今日のやつ隣のクラスのやつだよな?毎回くどいくらい手紙入れて
きたやつだからもっと注意しとくんだった。」
裕之 「手紙?そういえば何度も手紙書いたって…」
隆盛 「あぁ、男からの手紙なんて気持ち悪いだろ?それに内容も一人よが
りの気持ち悪いものだったしな。ひろには見せたくなかったんだ」
裕之 「りゅう…」
隆盛 「心配だったんだよ。ひろって可愛いし。男子から人気がるからさ」
裕之 「男からモテても嬉しくないよ。りゅうだけで十分だよ!」
隆盛の頬にチュッと音を立ててキスを落とした。
隆盛 「あんまり煽るなよ。待てなくなるから…」
裕之 「僕はりゅうだけだよ!」
人の気持ちも知らず隆盛を煽ってしまい、裕之の家の前だというのに抱きしめられ
長いキスを強要された。
誰も行き交う人はいなかったが、見られれば近所から何を言われるかわからない状況
ではあった。