返事はお試しで?
高橋隆盛は昨日、ずっと好きだった結城裕之に告白した。
ずっと親友であったが、高校に入って自分のケジメを付けようと勇気
を振り絞って言ったのだが、返事はまだもらっていない。
すぐに答えてくれるとは思っていなかったけど帰り際まで目が合うと避
けられてしまった。
隆盛 「はぁ〜。言うんじゃなかったかな…」
ずっと、帰ってから後悔していた。ダメでも友達に戻るだけだと思って
いたが、そう簡単ではないらしい。
いつも3人でいる時も手が触れればドキッとするし、冗談で飛びつかれれ
ば心臓が飛び出るくらいドキドキが止まらない。
そんな毎日を変えたくて、彼の特別になりたくて言った事だけど、その
せいで今、ギクシャクしている。
晴翔 「おはよう〜。何?元気ねーじゃん?」
隆盛 「あぁ、おはよ。ちょっとな…」
晴翔 「ふ〜ん。…お!ひろ、おはよう〜」
裕之 「あ!はるっおっはよー。りゅう!!お…おはよ…」
隆盛 「あぁ、ひろっ、あのさ〜」
裕之 「ごめん、今日日直だから…またね」
昨日の事を取消しにできないだろうかと考えてしまう。
今も話を避けるように行ってしまった。
空を見上げてもどんよりしていて、今にも雨が降りそうだった。
隆盛 「はぁ〜。やめときゃよかった…」
晴翔 「りゅう?悩みなら聞くぞ?」
隆盛 「いや、いいよ。」
晴翔 「ふ〜ん。」
(まぁ、考えてる事はわかるけど…そんなに落ち込むくらいなら話
してくれればいいのにー。まぁ今日中には治るかな?)
こうしてその日の授業が始まった。
体育ではいつもなら調子がいい隆盛が何やらヘマばかりして、心ここに
あらずと言った風だった。
ロッカーには相変わらず手紙が入っていたが、それも気づかずパラパラ
と落ちてもそのままという始末。
晴翔 「こりゃりゅうのが重症だな…」
裕之 「ん?どうかした?」
晴翔 「あのさ、りゅうへの返事どうすんだよ。早くいってやれよ!」
裕之 「え!あ、うん。そうなんだけど…」
晴翔 「あーー。見てらんねーわ。今日カラオケ行くぞ!そこでちゃんと
言えよ」
裕之 「うん。」
流石にもどかしくて見ていられなかった。
帰り際に晴翔が隆盛にも声をかけると部活が終わってからならと言われ、
カラオケ集合になった。
裕之 「はる〜、なんか不安だよー。」
晴翔 「大丈夫だって!ちゃんと自分の気持ち言えばいいんだって!」
裕之 「でも、おかしくない?僕ら男同士だし…でもこのままりゅうと
話しずらいのも嫌だし…」
晴翔 「まずは当たって砕けろって!それに、満更でもないぞ」
(こんなに近くにカップル成立ってなかなかねーって!すっげー楽しみ♪)
裕之 「どういう事?もう、変に緊張するんだけど〜」
晴翔 「俺から見ても隆盛はかっこいいと思うぞ?それに裕之だって結構
可愛いし、自信持てって!」
裕之 「それって慰めになってないよ!!」
二人でカラオケルームで話していると隆盛からもうすぐ着くと連絡が入った。
裕之 「どうしよう!」
晴翔 「落ち着けって!俺が二人っきりにしてやるから、そこでじっくり
話せって!ここなら誰も見てねーし、安心だろ?外で待機してて
やるから」
裕之 「うん、はるには迷惑かけてるね、ごめん。」
晴翔 「いいって!気にすんなよ!」
可愛い親友の裕之を抱き寄せて頭をぽんぽんと撫でると猫みたいにおとなしく
なった。
そんな時、部屋のドアが開き隆盛が入ってきた。
晴翔 「おう!遅かったな!」
隆盛 「…俺さ、帰るわ!」
裕之 「えっ!」
晴翔 「せっかくきたんだから、帰るなって!」
晴翔は隆盛を引き止めると部屋の中へと招き入れた。
何故か、席は晴翔を挟むように二人が座っていた。
(おいおい、これじゃーダメだろ?しゃーないな!人肌脱ぐか!)
わざと着信を鳴らして電話を取った仕草をする。
晴翔 「はい、もしもし。うん、ちょっと静かなところ行くから待って
うん、うん。分かってるって」
二人を残して晴翔は外へとでる。
残された二人が気になり外で聞き耳を立てる。
裕之 「りゅう…あのさ…昨日の事なんだけど…」
いまだに目も合わせられなくて視線を外したまま話しかけた。
隆盛の気まずい雰囲気にただ無言になっていた。
裕之 「あのね、考えてみたんだけど…僕達さ、男同士なんだよ…それでね」
隆盛 「いいよ。変に気を使わなくても…さっきはると一緒にいるの見ててさ
お似合いだなって。変な事言ったから避けられてるなら、忘れてくれ!
俺はさ、ひろを困らせたくないし、気持ち悪いよな?ごめん。どうし
てもって言うなら、これからは話かけないから…俺の事避けないで欲
しい」
裕之 「えっ!」
隆盛 「ごめんな!はるにも謝っといて!俺、帰るわ。」
席を立つと扉に方に向かっていく。
このままじゃダメだと、咄嗟に隆盛の腕を掴んだ。
隆盛 「触られるのいやだろ?」
裕之 「ちがっ…」
隆盛 「無理しなくていいから!」
ひろを振り解くと出ていこうとする。
裕之 「待って!なんで勝手に決めつけるの?なんで何も言わせてくれないの?」
隆盛 「…」
裕之 「りゅうの事嫌いじゃない!イヤじゃないよ!」
隆盛 「…じゃぁ…」
裕之 「でも、僕達男同士で、付き合うって言われてもわかんないよ!嫌いじゃ
ないし、このまま友達も辞めちゃうなんて嫌だ!ずっと一緒だったじゃん。
りゅうのいう好きってどういう意味なのか僕にはまだ分からない…。でも
嫌いかって言われると、大好きだって思う。離れたくないし、側にいたいっ
て思ってる。だから…」
隆盛 「それって…」
裕之 「だから…今はお試しで付き合ってみようと思う。それじゃーダメかな?」
真っ赤になりながら返事をしてくれる裕之に隆盛は驚きと嬉しさでいっぱいになった。
裕之の側に行くと、今にも泣き出しそうな瞳で見上げてくる。
それだけ勇気を振り絞って言ってくれたのだ。
いつもみたいに頭を撫でると、笑顔で返してくれる。
隆盛 「うん、いいよ。お試しでもいい、付き合おう!きっと好きにさせて見せる
から」
裕之 「うん…これからもよろしく。」
隆盛 「…」
(可愛いーー。これって抱きしめていいのか?いや、まだ早いだろ?そんな事して
さっきの撤回されたらどうしよう?)
ガチャっと音がして晴翔が戻ってきた。