何事もないお泊まり?
ドキドキしたお泊まりは何事もなく終わりを告げた。
朝、起きてからもお互い意識してはいたが、それ以上進む事なく
帰宅するとこになった。
裕之 「また学校でね。晴翔とも夏休みの旅行も決めなきゃだし」
隆盛 「あぁ、そうだな。ひろっ!」
裕之 「なに?…んっ…ぅ…」
隆盛は玄関で誰もいない事を確認すると、裕之の腕を引っ張り抱き
寄せた。
唇を重ねると、深く重ねた。
甘い声が漏れてそれ以上触れたくなるのを我慢すると、そっと離れた。
糸を引くように唾液が二人の間を伝うのを見て真っ赤になる裕之をな
がめると、にっこりと笑った。
隆盛 「ごちそうさまっ!!」
返事も聞かず、帰っていく。
その光景を陰ながら見ていた春花は脱兎のごとく部屋へと駆け上がる
と美桜達へ報告したのだった。
8月に入り、夏休みが始まった。
隆盛は朝から晩まで部活に勤しんでいるため、遊ぶ時間すらなかった。
裕之 「サッカー部って忙しいんだな」
晴翔 「今年は夏の予選期待されてるからな!明日だろ?見に行か
ねーか?」
裕之 「そうだね、はる行こう!」
晴翔 「って訳で、今日までの宿題くらいは終わらそうな!」
裕之 「うん…。ここってどうやって解くんだっけ?」
晴翔 「はぁ〜。ひろ〜ちゃんと覚えろよ」
そう言いながら面倒見のいい晴翔は一から順番に教えていく。
晴翔はこの前、春花から連絡を受けて、機嫌が良かった。
なぜなら、腐男子として推しカプがやっとキスまで辿りついたのだ。
隆盛と裕之のカップルを密かに応援して見守ると言う大切な役目を
になっている為、二人の距離が近づく事は嬉しい事だ。
今は隆盛の方が忙しいが、夏休みまでにはもう少し進展させねばと
旅行を画策したのだった。
晴翔 「そういえば、旅行なんだけど海の家で昼間だけバイト、
それから近くのロッジに泊まる予定だからな!予約は
全部しておいたからな。」
裕之 「本当!ありがとう。」
なんの疑いもなく喜ぶ裕之を見て少し罪悪感はあるが、それも推し
カプの為。
心を鬼にして宿題に取り掛かった。
翌日、晴翔と裕之は隆盛のチームが出る予選リーグが行われる会場
に来ていた。
裕之 「結構人気あるんだね」
晴翔 「そりゃそうだろ!相手高校は去年優勝したところだしな」
裕之 「えー。それ、りゅう大丈夫かな〜」
晴翔 「今年は期待の新人や、先輩方がいるんだしさ。応援しな
くちゃな」
裕之 「あ!りゅうだ!りゅーーーう!」
丁度バスから降りてきた隆盛達が会場へと入ろうとしていた。
裕之の声を聞いたのか駆け寄ってくると、晴翔と裕之に抱きついた。
もちろん裕之だけに抱きつくわけにもいかず、友達というていを守り
つつである。
隆盛 「来てくれたんだな!今日は絶対にいいところ見せねーとだ
!負けらんね〜な。」
裕之 「頑張ってね」
晴翔 「ひろの前で無様な姿見せんなよ!」
隆盛 「分かってるって!」
少し言葉を交わすと、遠くで隆盛を呼ぶ声が聞こえてきて、戻ってい
った。
試合は前のチームが長引いたせいで、少し遅れて始まったが順調に点
を稼ぎ勝ち抜け、予選突破まであと3試合となった。
帰ろうとしている晴翔と裕之の元に隆盛が走ってきた。
裕之 「今日はかっこよかったよ。」
晴翔 「おいおい、今日の得点王がこんなところで油売ってていい
のかよ。今から打ち上げだろ?」
隆盛 「いいんだ、今日は気分が悪いと言って抜けてきた。ひろちょ
っといいか?」
裕之 「なに?…りゅう?」
裕之の腕を掴むと顔を近づけると、小声で話した。
もちろん側にいる晴翔にはしっかり聞こえているのだが。
隆盛 『ご褒美が欲しい』
真っ赤になる裕之に微笑む隆盛。
そのままトイレの奥の個室に入ると、しばらくしてから耳まで真っ赤に
なった裕之と共に出てきた。
晴翔は神でも拝むように天へ祈りを捧げたのだった。
順調に勝ち進み決勝リーグまでたどりついた。
ここで優勝すれば全国大会への出場権が得られる。
応援の観客も増えて、席もすぐに埋まってしまう盛況ぶりだった。
裕之 「今日は入れるかな?」
晴翔 「決勝だからな〜。でも、今日は特等席で観戦できるぞ!」
裕之 「なんで?」
晴翔 「なんと、予約席が取れてるんだな〜。」
裕之 「おぉーー。すごーい!」
正確には隆盛が確保しておいたのだが、そこは秘密。
少しは尊敬の眼差しを向かられたい晴翔だった。
試合前に隆盛からトイレに呼び出されると奥に個室の前でキョロキョロ
と周りを見た。
裕之 「誰も居ないよー。入ってる?」
声をかけると、中からドアが開き中へと引っ張られた。
流石に堂々と行くと周りの期待もあって、人の視線が常につき纏う。
女性の目から逃れるにはトイレが一番だった。
隆盛 「わりぃーな。ちょっと緊張してさ…少しだけ我慢してくれ」
裕之 「うん…」
そういうと、裕之を抱きしめた。
裕之の匂いを嗅ぎながら首筋を舐める。
裕之 「…ひゃっ…くすぐったいっ…」
隆盛 「ちょっとだけ…」
興奮したようにキスをしていく。
あとは残らない程度の軽いものだが、いたるところにしていくので裕之
にはくすぐったくて仕方なかった。
笑い声が少し漏れるが会場のざわめきでかき消される程度だった。
裕之は声を出さないように手で口を押さえる、その手を退けると隆盛は
唇に舌を絡め、開いた中に入り込む。
裕之 「…ふぁっ…んっ…っ…」
鼻にかかった甘い声に酔いしれるように堪能すると離れていった。
隆盛 「行ってくるな!絶対勝つから!」
それだけ言うと、裕之を残して出て行ってしまった。
閉じた便座の上にに座り込むと裕之はいつのまにか全身が熱い事に気
がついた。