復讐は一人よがり
隆盛は家に帰ってから部屋のベッドに転がると足をバタつかせた。
隆盛 「あーーー!もう!なんであんな事言ったんだぁぁぁー!」
恥ずかしさに悶絶しているといきなりドアが開いた。
隆盛 「なっ!なに入って来てんだよ!」
美桜 「私の勝手でしょ?このチキン野郎が!好きなら好きで
押し倒すくらいの甲斐性を見せなさいよ!」
隆盛 「あのな〜、そんな事できるかよ!」
美桜 「キスの一回や二回したんでしょうね?」
隆盛 「してねーよ!ってか、なんでそんな事聞くんだよ」
美桜 「額やほっぺなんてノーカンよ!」
隆盛 「なんで知ってるんだよ!つーか…できるわけねーよ」
美桜 「ヘタレ…!」
隆盛 「あのな〜、勝手に言うなよ!震えてるのがわかってて
無理やりできるかよ!」
美桜 「ふ〜ん、やっぱりわかってないわね。怖がってても
好きな人からはちゃんと触れてほしいし、好きだって
気持ちをぶつけてほしいものでしょ?怖くても我慢し
てる相手に失礼よ!怖がってるのは隆盛!あんたに対
してじゃないでしょ?」
隆盛 「…」
美桜 「ちゃんと考えなさい。それと、例の子の方はそろそろ
限界だろうから何か仕掛けて来るかもしれないから、
気をつけなさいね」
美桜は言いたいことだけ言うと、出て行ってしまった。
裕之の姉にも自分の姉にも言われた言葉。
裕之を傷つけまいと触れないようにしていたが、それが返って傷つけ
てしまっているなんて思いもよらなかった。
次の日、朝迎えに行くと出てきた裕之を玄関で抱きしめていた。
驚いた裕之の顔と後ろにいる春花と目が合ってすごく気まずかった。
隆盛 「ごめん、おねーさんに見られてた…はずっ」
裕之 「えっ…あ…うん。ちょっと驚いたけど、嬉しかった////」
隆盛 「触れても大丈夫か?嫌なら言ってくれよ」
裕之 「大丈夫だよ!逆に嬉しいから…」
照れ笑いを浮かべる裕之を横目で見ながら抱きしめてキスしたい衝動
に駆られていた。
人通りが多いのでグッと堪えると平然を装った。
校門で呼び止められ振り向くと、そこには草壁真奈美の姿があった。
草壁 「隆盛、貴方一体なんて事してくれたのよ!私の人生めちゃ
くちゃじゃない!責任とってよね?もちろん取ってくれる
んでしょ?」
隆盛 「何を言ってるんだ!俺はお前がひろにした事を、絶対に許
さないからな!」
草壁 「なんの事?そんな奴のせいで…私は…私は…っ…」
ぶつぶつと言い始め、ゆっくりと近づいてくる。
鞄を握りしめて隆盛に縋り着くように手を伸ばすが、思いっきり叩かれて
隣にいる裕之を睨みつけた。
隆盛が裕之を庇うように後ろに隠すのが、それが余計許せないのだろう。
鞄から包丁を出すと、振り回しだした。
隆盛の腕には無数の切り傷がついていく。
裕之 「りゅう…」
隆盛 「大丈夫だから、ひろには絶対に触れさせない」
草壁 「なんなのよ!そんな奴のどこがいいのよ!男じゃない!絶対
後悔するわ。私は隆盛の事が…」
包丁を持っている腕を掴むと押さえつける。
そのうちに、騒ぎを見ていた学生が警察を呼んだのか、サイレンの音が響
いてきた。
警察の到着で草壁真奈美は取り押さえられ、隆盛は事情聴取に呼ばれた。
午前中は警察署に行っていたので、不安でたまらなかった。
晴翔 「大丈夫だって、心配すんなって!」
裕之 「うん…でも、僕のせいで…」
晴翔 「ひろのせいじゃないから!そこだけは勘違いすんなよ!」
力強く言い張った晴翔に少し驚いたが、裕之はゆっくりと頷いた。
午後の授業には隆盛も戻ってきていた、ほっとしたのだった。
放課後、3人でいるときに晴翔が先生という存在に色々と頼んでいた事を
話してくれた。
隆盛 「それで、あんなに切羽詰まった感じだったのか!」
晴翔 「仕込みは上場って来てたからね。裕之は大事な萌えカプだし
手伝ってくれる人も多かったみたい。」
裕之 「萌えカプ?」
隆盛 「それって姉貴が書いてるあれか?」
晴翔 「そうそう。見たことあるの?」
隆盛 「いや、怪しすぎて見てねーけど。書いてる時の表情がな…」
裕之 「何か書いてるの?」
晴翔 「ひろは知らないのかー。」
隆盛 「知らないままでもいいような、知っててほしいような…
だな」
晴翔 「ひろにはこのままでいてほしい気もするけど…見たいなら
うち来る?」
裕之 「えー。僕だけ知らないのは嫌だよ!行く!」
隆盛 「やめとけって、後悔しそうだし…」
そう言いながら、晴翔の家に後日行くことになった。
晴翔は事前に春花と美桜に裕之に薄い本を見せていいかを聞く事に
した。
晴翔 「って流れになっちゃいまして、見せてもいいですか?」
春花 「うーん、あいつ結構ピュワだし、私の絵って結構やばく
ない?」
美桜 「いいじゃん、心構えをさせておくのもいいかも。特に
ネコにはさ!」
春花 「そうなんだけど…迷うなぁ〜。」
美桜 「それよりも、今週の清春みた?すっごくそそる格好して
たよね〜。なんかさ、裕之くんにぜひ着てもらえないか
なって思うんだけど〜。コス衣装セットを…買っちゃった」
春花 「マジ!見たい!」
晴翔 「それ、俺もお邪魔していいっすか!」
春花 「いいに決まってるじゃん!」
美桜 「今度持ってくわ!裕之くん捕まえておいて!」
春花 「おっけ〜」
3人は密かに腐女子会話に花が咲き、しばらく続けられた。
結局、本を見せると言う話は、軽いBLまでという事で了承を得た
のだった。