後始末はきっちりと
月曜日になると、聖女学園ではとある噂が囁かれるようになった。
草壁真奈美の男関係だった。
掲示板に合成写真が貼り出されたり、学園に相応しくない映像な
ど、ある事ない事混ざっていた。
それもリアルでよく見かける人物を合成している為、一回でも
付き合った人は全て対象に選ばれていた。
草壁 「な!なんなのよ、これ!」
貼り出されたポスターを剥がすと回収していた。
が、ネットの掲示板にも色々な書き込みがされていて、気に
入らない男子への暴行を男に頼んだなどの記事まで出回って
いた。
最初はそこまで取り合っていなかったのだが、警察が学校に
来てからは密かに事実だとささやかれるようになった。
決めては商店街の防犯カメラの映像で、しばらく拘留された
のだった。
親も流石に放置できなくなって、動かざるを得ない状況まで
きた。
学校からは自主退学を進められて、風紀を乱したと批判中傷
され始めた。
草壁 「ちょっと!真悟あんたのせいで学校にいられなく
なったでしょ?どうしてくれるのよ!警察には呼
び出されるし、あんたが一人で勝手にやったって
言ってくれればいいのになんで私まで巻き込むの
よ!最低!」
神谷 「嫌だね、これなーんだ?」
そう言って取り出したのはボイスレコーダー。
そこにはあの日の一部始終と草壁真奈美からの電話が録音され
ていた。
神谷 「これを渡したら、すぐに解放されたぜ?悪い女に騙
されたってな!」
草壁 「裏切り者!あんたなんて知らないから!」
神谷 「破滅すんなら、一人でやれよ!」
草壁 「男はあんただけじゃないんだから!」
駆け出すように出て行くと、別の男の元へと向かった。
が、先に連絡が回っているので、誰も取り合ってはくれなかった。
居留守を使うなどされ、、会う事すら避けられた。
草壁 「隆盛…あいつの仕業ね。どこまでも私の足を引っ張るん
だから…許さない!いや…あの子をやった方が効果的ね」
家から包丁を持ち出すと鞄に隠して隆盛の通う高校へと向かった。
一週間でやつれた草壁真奈美はどこからどう見てもただの不審者に
しか見えなかった。
裕之はというと、初日は学校を休んだが、次の日からは隆盛が毎日
迎えに来ては一緒に通っている。
体育の授業は見学し、常に晴翔か隆盛が近くを固めていた。
前までなんとも思わなかったモブである裕之が最近色々な人の目に
留まるようになった。
いつもは隆盛の影に隠れて目立たない存在だったのが最近色気が出
てきたと噂が囁かれるようになっていたのだ。
裕之 「あ!ラブレターだ!」
隆盛 「あのな〜。俺がいるのにこんなもの貰って嬉しいのか?」
裕之 「そりゃ〜嬉しいよ。いつもりゅうばっかりにきてたんだ
もん」
隆盛 「どうすんだよ?それ!」
あきらかに機嫌が悪くなる。
最近は自分の感情を隠さなくなった分、晴翔以外と話すと態度が
つんけんして、裕之を連れ出そうと行動に移す事が多々あった。
あの日以来、裕之に触れてこなくなった。
前だったら、おふざけでスキンシップもしていたのだが、今は
全く触れようともしない。
キスすらしようともしない。
裕之 「はる〜。僕ってりゅうにとってどんな存在なのか
な?」
晴翔 「ん?何か悩みか?」
裕之 「あの日からずっと、りゅうのやつ触れようとしな
いんだけど?」
晴翔 「触れてほしいのか?んー?」
そういうと、裕之の脇をこしょぐり始めた。
裕之 「ちがっ…ひゃっん…違うってば〜、やだっ…
くすぐったい〜」
晴翔 「えー。やめないでって?」
裕之 「あはっははっ…違うって…いやっ…あっ…」
隆盛 「お前らなにやってんだ?」
隆盛が来ると晴翔はすぐに裕之を離した。
晴翔 「隆盛が身体に触れてくれないからつまんないー
ってさ!」
裕之 「わぁぁあぁーーー。違う!違うからね!」
恥ずかしくて真っ赤になりながら慌てる裕之を見下ろすと
いきなり顎を掴みクイっと持ち上げるとお互いの視線が合
うと頬に軽くキスをしてきた。
それだけでドキドキが止まらなくて裕之は気を紛らわすよ
うに晴翔に抱きついていた。
最近では男子からの手紙もくるようになったせいで隆盛が
威嚇する様に目を細める。
その数日後に草壁真奈美が包丁を持って会いにくる事など
誰も知りようもなかった。
帰りも何事もなく家まで送ってもらった。
隆盛 「一人で外に出るなよ!じゃーな!」
裕之 「うん…あのさ、上がってかない?」
隆盛 「あっと、用事があるから、今度にするよ。
またな!」
(せっかく誘われたのに〜、俺のバカ!なんで
素直に答えねーんだよ!)
裕之 「そっかぁ、うん、またね!」
なんだか寂しそうな裕之を見送ってから少し後悔していた。
さっさと帰ろうと思って振り返ると目の前に春花の姿があ
った。
春花 「あら?隆盛くんじゃない。中に入らないの?」
隆盛 「いえ、送ってきただけなんで…俺はこれで。」
春花 「裕之の事、嫌になったの?」
隆盛 「そんな事ないです。今のひろ見てると自分が
なにやらかすか分からないので…」
春花 「いいじゃない!青春は今だけよ。押し倒しても
構わないわよ。」
隆盛 「いやいや!おねーさん、それはちょっと。」
春花 「あんまりなにもしないとへそ曲げるわよ〜。や
りたいことはどんどんやりなさい。隆盛くんなら
きっと大丈夫よ」
隆盛 「はぁ。でも、今日は帰ります」
春花 「そっか、気をつけてね。」
(残念ね。もっとガツガツいけばいいのに)