暴行は許しません
ひたすら悲鳴を上げて、地獄のような痛みに耐えている事しか
出来ず視界も霞んで見え始めた。
突然呼ばれた名前にさえ反応できずにいた。
隆盛 「ひ…ろ……ひろ!!」
神谷 「観客の登場か?」
隆盛 「何をしているんだ!?」
草壁 「あら!まだヤってなかったの?汚い交尾を見せつけ
てあげたかったのに〜、残念だわ。」
隆盛 「なんでこんな事を?なんでひろに手を出した?」
草壁 「何を言ってるの?男同士なんてどこに入れるか分かっ
てるの?お尻に突っ込むのよ?汚いじゃない?そのあ
と抱かれる女性の身にもなってよ。絶対嫌よ!それに
この子ったら誰にでも足開くって所を見せてあげよう
って思ったのよ?」
神谷 「おとなしくなって来たし、ヤりゃいいんだろ?真奈美?」
隆盛 「ふざけるな!」
裕之のズボンに手をかけた神谷をぶん殴ると裕之の上から退かした。
そのまま殴りつけ数回殴られたが、隆盛は鍛えている為ただじゃや
られなかった。
草壁真奈美の前に立つと、彼女は少し怯えたように後ずさった。
隆盛 「なんでこんな事やった?殴られたいのか?」
草壁 「隆盛、貴方は女性を殴る事なんてしないわ!それに彼も
同意でついて来たのよ?何か文句あるかしら?」
隆盛 「次やったら、容赦しないからな!」
ドスの効いた低い声で言うと、裕之の縄を解いた。
縛られた腕が擦り切れて血が滲んで来ていた。
皮膚も所々血が滲んでいて、痛々しかった。
隆盛 「ひろ、遅くなってごめんな。ひろ?起きれるか?」
力が入らないのか座り込んでしまう彼に自分の上着を着せると
抱き上げその場を後にした。
この格好のまま家に連れて行くわけにもいかず、一番近い晴翔の
家に行くことにした。
晴翔はいきなりの電話に驚き取ると、隆盛からだった。
晴翔 「どうした?」
隆盛 『もうすぐそっち着くだが、ちょっと服貸してくれ!』
晴翔 「ん?服?雨なんか降ってたか?」
隆盛 『今、着いたから入れてくれ!』
晴翔 「おう、分かった。ちと待ってくれよ!」
玄関を開けると、隆盛は裕之を腕に抱いて立っていた。
何事かと聞く前にすぐに家にあげると、部屋へと通した。
流石に親には見せられない姿だったからだ。
晴翔 「ベッド使っていいぞ」
隆盛 「悪ぃ。それと服と何か拭くものもあるか?」
晴翔 「消毒と包帯もいるかな?待ってろ!」
晴翔は家にある救急箱を取りにいった。
改めて見ると、手首には縛られ擦れた跡と身体中に歯形が残っ
ていた。
服は切り裂かれたようにビリビリにされていて、泣き腫らした
ように目元が腫れていた。頬は叩かれたのか、真っ赤に腫れて
いる。
晴翔 「何があった?まさか…りゅうお前じゃないよな?」
隆盛 「俺の…せいだ…。俺の…せいでひろが…痛かった
よな?ごめん。本当にごめん。」
裕之 「…」
ただ裕之の瞳から涙が溢れてきた。起きているのが辛いの
か横になると意識を手離していた。
隆盛 「ひろ…ひろ!」
晴翔 「眠っただけだ!ちゃんと説明しろよ!何があっ
たんだ!」
(よくも俺の推しカプを汚してくれたな…絶対に
許さない!)
密かに痛々しい裕之を写真に収めるとグループラインに
こっそりと流した。
それから、隆盛の話を聞きながら概要を整理した。
晴翔 「じゃ〜。その男が裕之を拉致ったって事か…。
流石に警察に行った方がいいよな?」
隆盛 「それだと、ひろも傷つかないか?」
晴翔 「確かに…だが、このままって訳にはいかない
よな…。ちょっと先生に相談しないと…」
隆盛 「だから学校には!?」
晴翔 「先生は学校の先生じゃないよ、俺らの味方だ。
知恵を借りるんだよ。まずは手当てしてから、
服はこれを着せて!親にはなんて言おうか?」
隆盛 「喧嘩してたら、裕之も巻き込まれたってひろの
親には言うよ!」
晴翔 「その方がいいか!目が覚めたら送るよ!」
家でおしゃべりをしていた春花と美桜の元に晴翔からの
メールが届いていた。
痛々しい裕之の写真と今日あった出来事の荒回しが書か
れていた。
『今は気を失ってるから、起きたら送って行くから親に
は言い訳を合わせてくれ』
と、追伸が書かれていたのだった。
その日は春花の誕生日もあってか、親も早めに帰って来
ていた。
母親 「裕之はどうしたの?」
春花 「今ちょっと友達が揉めてるみたいでそっちの
相談に乗ってるよ」
美桜 「代わりにお邪魔してまーす」
母親 「美桜ちゃん、ゆっくりしてってね」
父親 「裕之もこういう時は早く帰って来ればいいの
になぁ?」
春花 「友達思いなんだよ。いいじゃん!それにケーキ
も作って置いてくれたし。裕之のケーキ私は好
きだよ!」
母親 「そうね。裕之の分は後で取ってけばいいわね」
家族を囲んで春花の誕生日を祝った。
夜遅くに目を覚ました裕之の側には隆盛と晴翔が何やら話
あっていた。
裕之 「りゅう…はる?」
隆盛 「目が覚めたか?身体の方は大丈夫か?」
とっさに裕之に触れると痛いのか眉をひそめた。