拉致は犯罪です
嫌々ついていくと、マンションの一室の前で立ち止まった。
先に入れと言わんばかりに促され、ドアを開けた。
中から聞き覚えのある声が聞こえて来て、靴を脱ぐのも忘れて土足
で入ると、中のドアを勢いよく開け放った。
ー2時間前ー
裕之は近くの公園を散歩しながらため息をついた。
いつも学校では行きも帰りも晴翔がついててくれたので、一人に
なる事はなかった。
だが改めて一人になると、なんだか心に穴が空いたみたいに寂し
く感じた。
いつもくる商店街まで足を運ぶと、少しずつ落ち着いてきた気がした。
今日も朝から無心でケーキを作っていた時も少し気が紛れて楽になった
気がした。
いつも心配性な姉が、同性の恋愛を応援してくれるのは心強かった。
きっと、家族に反対されたら、挫けていたと思う。
今では、少し勇気をもらった気がする。
友人の晴翔もいつも相談に乗ってくれるし、隆盛と裕之の仲を見守って
くれる。
裕之 「いつまでも弱気になってちゃダメだ!うん、ちゃんと話そう!」
改めて決意をするとスマホを取り出すと隆盛にかけようとすると目の前に
誰かの影がよぎった。
裕之 「あっと、すいません!」
ぶつかりそうになって避けると、その人物はまた目の前を遮ってきた。
裕之 「あの〜どいてもらえますか?」
神谷 「あぁ、すまない…なっ!」
ドカッ。…ドサッ!
いきなり裕之の腹に拳が入り、痛みでその場に倒れ込んでいた。
(な…なんで?あれ…)
意識はすぐに刈り取られ、神谷は自分の車のトランクへ裕之を押し
込んだ。
気がついた時にはどこかの部屋の中だった。床に転がされていて、
腕も足も縄で縛りつけられていて、身動きが取れなかった。
裕之 「…っ…ここはどこだろ?」
きょろきょろと見回すと、奥の部屋で物音が聞こえて来た。
誰かがいるようだった。
神谷 「お!起きたか?それにしても細い体してんだな?筋肉も
ついてねーじゃん。肌も焼かねーようにしてんのか?そ
れとも彼氏が白い方がいいって言ってるのか?」
裕之 「何を言って…?」
現れたのはさっき道を塞いできた男だった。
神谷 「神谷だ、よろしくな!今から抱かれる男の名前くらい覚
えておけよ!」
裕之 「どういう事…?抱かれる?誰が…?」
神谷 「かー!頭悪ぃな?お前がだよ!尻に俺の入れて腰振れって
言ってんだよ。ちゃんと観客も呼んであるからよ!」
裕之 「…えっ…な、なんで?」
神谷 「言っても分かんねーだろ?身体に刻み込んでやるよっ!」
そう言うと、胸ぐらを掴むと軽々と持ち上げベッドへ放り投げた。
上着を引きちぎるとボタンが弾け飛んだ。
インナーに手をかけると一旦手を止め、手近にあったハサミで切り
裂いた。
びりびりびりりりぃぃぃっーーー!!
服が避けて肌が露わになる。
いつのまにか裕之の体の上の馬乗りになると重さで動けなくなっ
ていた。
神谷という男がいやらしい笑みを浮かべて裕之の肌をゆっくりと
下半身へとなぞっていく。
恐怖で鳥肌がたち、小刻みに震えていた。
神谷 「怖いのか?怯えた顔のがそそるじゃねーか!」
裕之 「…やっ…助けてっ…」
神谷 「誰も来ねーよ。来るのは見物人だけだ!わかるか?」
顎を掴むと軽くキスをする。
神谷 「男でも唇は柔らけーのなっ!口開けろよ?」
裕之の口の中に無理矢理指を突っ込むと奥まで挿し入れた。
裕之 「うっ…ぐっ…ごぼっ…おぇっ…んんっ…」
苦しくてえずき、喉の奥から吐き気が段々と強くなって来る。
神谷 「噛むなよ?優しくしてやっからな〜」
そう言って指を抜くと舌を絡ませて深くキスをする。
初めてのキスなのに、知らない男とだなんて悔しくて涙が溢れ
てきた。
(こんなのいやだ…りゅう…せい…なんで避けちゃったんだろ?
なんで、こんなに好きなのに…今一緒にいられなかったんだ
ろう…僕は男が好きなんじゃない!りゅうだから好きになっ
たんだ…)
自分の気持ちに向き合うと、口の中を蹂躙している舌を思いっ
きり噛んだ。
神谷 「い゛っっっ…てぇぇーーー!!この野郎噛むなって
言ったよな?」
裕之 「気持ち悪いんだよっ!ふざけんな!解けよっ!」
バシィーーーン!
精一杯の暴れると、反撃とばかりに頬に痛みを感じた。
神谷 「自分の立場をわきまえろよ?優しくしてやろうって
言うのに、ただじゃおかねーよ!」
裕之 「…!?」
神谷の目が狂気を孕む。
唇から垂れる血を拭うと、裕之の首筋に噛み付いた。
一気に白い肌に歯を立てるとちぎれんばかりに噛み付く。
痛みが全身に伝播して悲鳴を上げた。
裕之 「いやぁっぁぁぁーー!痛い痛い痛い痛い!!やだっ
離してぇぇっぇーーー!」
神谷 「泣き叫べよ!おとなしくなるまでやめねーからなっ!」
噛まれた箇所から血が滲んでいて、歯痕がくっきりと刻まれて
いた。少し位置をずらして数カ所噛んでいく。
叫び続けたせいか声が枯れてきて、開きっぱなしの唇からは涎
が溢れ落ちた。
上半身は至る所に噛み痕を残され、本当に食べられているよう
な感覚さえあった。
痛みで意識も薄れて来た時、ガチャっと入り口の鍵が空き、誰
かが来たようだった。