1 はじめに 「鎌倉殿の十三人」について
来年のNHK大河ドラマは、三谷幸喜氏脚本の
「鎌倉殿の十三人」
その主役となる北条義時を、英雄退場後の時代を担った人物という観点から書き始めた文章だったのですが、結局、北条義時については、わずかなことしか書けていません。
北条義時について、ほとんど何も知らない、という方でしたら、必要最小限のことは第5章に書きました。
途中からは、以下のようなことを書いております。
・真の歴史と、物語としての歴史
・英雄退場後の時代を担った人物をキーワードとして、日本史、世界史において、私が北条義時的ポジションにいるとイメージしている人物を列挙
私は少年時代より、英雄という存在に大きな興味を持っていた。
六学年歳上の姉が持っていた、子供向けの、日本の歴史を全12巻にまとめたシリーズでは、小学生の中学年だった頃は、先ず
第4巻の「源氏と平家の戦い」と
第7巻の「戦国の武将たち」
ばかり読んでいた。
日本史においては、その時代が、様々な英雄が登場する最も劇的な時代という認識があったからだ。
やがて他の時代にも興味がおこり、小学生卒業までにはそのシリーズ全12巻は、全て読んだ。
中学生になった頃から世界史にも興味を持つようになった。
世界史において、典型的な英雄と言えば、アレキサンダー大王とナポレオン。その物語を熱心に読んだ。
世界史についても、その興味は、やがて世界史全般に広がっていったかと思う。
少年時代の私には、英雄崇拝的な心情はあったのだろう。
24歳の時に出会った、田中芳樹氏の「銀河英雄伝説」の初期からの熱心なファンでもあったから、英雄という存在については、尽きることのない興味を持ち続けていたのであろう。
が、私は、「英雄」という存在そのものよりも、どうも英雄の周辺にいた人物。あるいは英雄退場後の時代に、最も共感を持っているようだ。ということも少年時代から気が付いていた。
私の少年時代、スポーツの世界においては、
プロ野球の長嶋茂雄と王貞治。
大相撲の大鵬
が三大ヒーローであったか思う。
私もこの三人については、特に幼少時は熱心に応援していた。
と同時に、私は、長嶋と王が不在のジャイアンツ。
大鵬が不在の大相撲界というものを想像し、いったいどういうふうになるのだろう、と考えて心の中で愉しむというような渋好みの心情も多分に持っていた。
そして、どうも、こちらの心情のほうが私の本質のようだ、ということにも気付いた。
英雄という存在に対する興味も、その個性と影響力が際だって大きければ大きいほど、その周辺にいた人物、その英雄が退場したあとの時代の渋さが際立つ。
そういう意味での興味であったのだろうと思う。
さてタイトルに書いた北条義時。
三谷幸喜氏が脚本を書かれる来年のNHK大河ドラマ
「鎌倉殿の十三人」の主役となる人物である。
そしてその活躍した時代背景を考えると、まさに英雄退場後の時代に主役となった人物である。
私は「集団指導体制」という言葉に心惹かれる。
三谷幸喜氏、その物語作りは、私など比べるべくもない
大きな才能を持たれた方だか、この点においては、私と共通する心情を持たれているようだ。
氏が作られた映画「清洲会議」は、信長亡き後、天下をどう治めていくかについて
羽柴秀吉、柴田勝家、丹羽長秀、池田輝政が議論した群像劇である。
「鎌倉殿の十三人」というタイトルを見たとき、この十三人というのが何を意味するのか、直ぐにはわからなかったのだが
「もしかして評定衆のことかな」と思った。
ウィキペディアで調べてみたら、果たしてそのとおりだった(評定衆の前段階の合議制開始時点の構成人数だった)。
鎌倉幕府の初代将軍、源頼朝が亡くなったあと二代目の将軍となり、鎌倉殿と呼ばれる頼家はまだ年若く、1199年に始まった十三人による合議制がその原型で、評定衆として制度化されたのは1225年、と説明されていた。
北条義時は、その十三人の内の一人で、その中で最も年が若い。
三谷幸喜氏は
「今、その十三人の名前を、きちんと列挙できる人はほとんどおられないでしょう(私もできません)。でもこのドラマを見終わる頃には、誰もがその名前を言えるようになっている。そういうドラマを描きたい」
とインタビュー記事で、その意欲を語っておられた。
歴史好きであっても、あまり取り上げられることのない、馴染みの薄い時代。
この時代を氏がどのような興味深いドラマに仕上げていただけるのか、私も楽しみに来年を待ちたい。
さて、北条義時は、英雄退場後の時代に主役となった人物と前述した。
では、退場した英雄とは誰なのか。
年齢は、北条義時より四歳だけ年上に過ぎない。
「鎌倉殿の十三人」でもそのドラマの初期には大きく取り上げられるのではないかと思う。
次回は、その英雄について書いてみたい。