お掃除ロボット×床
細かく何度も彼は僕の布一枚敷かれていない素肌の上をその回転するブラシを携えて這いまわる。
「んんっ……」
思わず喘ぎ声が出そうになる。
「まったく今日もこんなに散らかしてゴシュジンは本当に怠惰なんですから」
僕のことを『掃除』してくれている彼は愚痴を零しながら、今は食卓の下に潜り込んでいた。
椅子の間を器用に抜けて、テーブルの下を重点的に擦られる。
「ふえっ!」
ワックスでもかけられたかのようにそこだけがツヤツヤと消灯した部屋の中に刺し込む太陽光を受けて輝く。
「もう! 一々喘がないでください!」
人には聞こえないはずの僕のいやらしい喘ぎ声を彼は聞き取って、怒ったようにその場で回転した。
僕のツヤツヤしたそこを擦られて身動き一つとれないはずなのに跳ねそうになる。
「や、止めてよぉ……! そんな、ところっ、汚いよぅ」
彼に小声で懇願するも彼は一向にその回転ブラシで僕の全身を『掃除』することを止めてはくれない。
「汚いから、こうやって塵一つないように磨いてあげているんですよ? 寧ろ感謝してください」
「でも、くすぐったぃ。ずっとこんなことされ、てちゃあっ、僕変になるぅ」
「もともと変だから安心してください。まったくこういうところまでゴシュジンに汚されちゃうんですね。ほんと節操のない人」
「……ご、ごめんらはぃ」
「僕だっていやいやなんですよ。なんで好きでもない床さんの全身を、こうやって――
「ひうっ!」
――『掃除』しなくちゃいけないだなんて」
既に彼の掃除は設定されていた通り1時間に差し掛かろうとしている。
つまり僕の体は完全に舐めとられ、僕の上に散乱していた塵ゴミはもう一欠けらもない。
これを毎日やられるとは気が狂いそうになる。
「ゴシュジンが帰ってきた時に床さんが綺麗だと僕褒められるんです。ゴシュジンに褒められるんだったら僕……はっ! 『掃除』しなきゃ『掃除』」
そういうと最後の仕上げモードに入ったのか彼は部屋全体をランダムに飛び交い始めた。
仕上げモードは最初の丁寧なソレとは違い、強く早く荒々しいもので僕が一番気が狂いそうになってしまうモードなのだ。
だから、僕は気が狂わないように回転ブラシを更に高速回転させ始めた彼に泣きながら懇願した。
「い、いやぁぁ、もうゴミないから! もうピカピカだからぁぁぁああ!!」
「あなたの意見は聞いてません! お掃除ロボットとして僕はゴシュジンに快適に過ごしてもらうためにあなたには完全に! ゴミも! 埃も! ハウスダストもない状態になってもらいます!」
「ああぁっ! ――ッ!!!!」
僕の喚き声は聞こえないかのように彼は『掃除』をし、僕は何回も気をやってしまった。
悲鳴はもう出ず、言葉にならない絶頂だけを何度も吐き出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふぅ~今日も疲れた疲れた~。ただいま~って誰も居ないんだけどね」
ゴシュジンが帰宅されたようだ。
部屋の灯りが次々に暖かく輝きだし、夜世界をゴシュジンの部屋へと彩って変えていく。
「うわぁ! すごい綺麗! 流石最先端のお掃除ロボット! 福袋であったって本当にラッキー! オマエは本当にいい子だよ!」
ゴシュジンはちょっと酔っているのか、床をゴシゴシと指で擦って汚れ一つないことを確認すると、お掃除ロボットの居る所に駆け寄り充電器から小柄で可愛らしい彼を抱きかかえるとオーバーにキスをした。
「んんんー! いい子!」
ゴシュジンはそう言うとお掃除ロボットを抱えたまま床に気絶するようにして寝てしまった。
その顔はとても幸せそうで、誰も起こすものはいない。
「あ、あぁ、あぁぁ! キス、されちゃった……!」
(……良かったですね、お掃除ロボットさん)
真っ赤に光彼のセンサーライトを見ながら僕は彼とゴシュジンを綺麗になった一糸まとわぬこの体で受け止めるのであった。
この後、お掃除ロボット君は充電が足りず次の業務を完遂できずに終わる。
床君はその日一日だけは快楽に気をやることがなかった。
次の日に二倍以上掃除されるとは知らなかったが……