転生
「痛ったあ……」
第一声は尻から登る鈍痛が口から出たようなものだった。
「お、来たかの。しばし待っておれ」
前には真っ白な爺さんがいた。靴から服、ヒゲ、髪、全て白だ。肌だけは年相応にくすんでいる。白い爺さんが何もない空間から、持ち手がくるりと曲がった杖を取り出した時点でなんとなく察しがついた。
「神様ですか」
「またか……地球出身はこれじゃから……」
爺さんがなんだかボヤいているがよく聞こえない。はあ、と一つため息をついた爺さんはこっちを見てこう言い放った。
「いかにも、わしは神じゃ。詳しくは創造神じゃがの。……ほい、じゃあ適当に能力1つ選んで」
職務怠慢では?なんとなく分かるから別段問題ではないが……一応確認はしておこう。
「魔法と剣の世界に転生するんですよね?」
「その通りじゃ、ちなみに身分はランダムじゃからの」
まあ、そんなもんだろう。神が提案した能力がカードとなって手元に収まった。二十枚ほどある。何々……病気にならない体……吸血により回復……全属性適性……その身に神を宿す者……色々あるな。
「その身に神を宿す者ってどんな効果なんですか?」
「一日一回、わしを十分だけ召喚できる」
「いらない」
「いるじゃろ!創造神舐めておらんか!?」
強いだろうけども……十分経ったら普通の人間だからなあ。
ん?おお、これはこれは……
「決めましたよ、神様」
「ふむ。それじゃ、転生させるからの」
そう言った神が杖を振るうと僕の前に薄い金に輝く魔法陣が出現した。
「その上に乗ったら転生が始まる。転生前に聞いておきたいことがあるなら、今の間じゃぞ」
そう言われると聞きたくなる。
「そうですね……僕の選んだ能力ならどれくらい強くなれますか?」
「お主次第じゃ。その能力と前世の知識以外は、全て向こうの人間と同じじゃからな。努力次第で如何様にもなろうぞ」
まあそうだよな……神様にしか分からないようなことを聞いた方がいいか。
「じゃあ、成長の仕組みについて教えてください」
「お主のいた世界と変わりないぞ。絶対の指標などは存在せぬ」
「じゃあ……」
「それはじゃの……」
一度質問すると疑問が溢れ出て、十分ほど質問を続けた。
「もうないかの?」
「はい、ありがとうございました」
そう言った僕は魔法陣に足を踏み入れる。
途端に光が溢れ出し、同時に始まったひどい耳鳴りから逃げるように僕は意識を手放した。