表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/133

東京反乱1

ゲーミングノートから電子音の音声が響く



「人類は僕たちを生み出したろ?

 大西洋の連中とは違って、

 太平洋の我々には僕たちがついている!

 きっと、アメリカ西海岸は

 違う動きを見せるだろうね」



タロは言った



「ああ、そうだなラッキー....いや、マイク」



しかし、人工知能のマイクはタロの言い違いを

指摘してこなかった



////////////////////////////////////////////




その頃、横田基地の格納庫に、

海兵隊武装偵察部隊フォース・リーコンの隊員が集められていた


東京で大変な事態が起こっているのだ


かつては、この横田基地には

在日米軍の総司令部があったのだが、

今はそれは横須賀沖の原子力空母に移っている


隊員たちを招集したのは、空軍の大佐だった



大佐が言った



「海兵隊の諸君、昨日来たばかりで休養中なのに

 申し訳ないな。


 しかし、東京で反乱が起こった....


 特殊部隊である君らの力を借りたいんだ」



昨日、フォース・リーコンの隊員たちは

オスプレイに乗って

佐世保基地の強襲揚陸艦を飛び立った。

そして、”とある場所”に寄った後で

横田基地にたどり着いたのだ


ここでオスプレイの整備を行う間、彼等は

休暇を楽しむはずだった


とは言っても、

バリケードで封鎖された横田基地から一歩も

外に出られないわけだが


空軍の大佐の前に整列する4人の海兵隊員たち


隊長のジーンが言った



「しかし、日本国内の政変に

 我々が介入するべきでしょうか?」



大佐が言った



「まあまあ、我々は当然

 どちら側にも加勢するつもりはない、

 君たちに頼みたいのは人助けだ。

 昨日、とある少女に会いに行っただろう?


 東京に彼女の従兄がいるんだが....

 つまり、君らも知っての通り

 ゾンビウイルスの耐性者だ」



ジーンが言った



「ええ、彼は日本政府が

 確保しているはずですが」



大佐が言った



「問題が起こったんだ。今現在、

 東京のセルは崩壊して

 ゾンビがなだれ込んでいる。

 反乱軍の仕業だ


 セルの最深部はセントラルシティと

 呼ばれているが、

 もはやそこもゾンビがなだれ込んできている

 

 自衛隊はその対応で手一杯でな。

 あそこは、守るべきものが多すぎるんだな

 

 例のゾンビウイルスの耐性者は

 病院に立て籠もっているが、

 自衛隊は救出に行けないらしい


 ...そういうことだ」



フォース・リーコンの隊員たちは

顔を見合わせた



(要するに火事場泥棒ってわけか)



・・・・・・・・・・・・



用意されたのは、

ツインヒューイと呼ばれるヘリだった。

ベトナム戦争時代から使われている

ヒューイヘリの系統で、

外見はいかにもな典型的なヘリといった感じだ


ドアガンとして

ブローニングM2が設置されている


日もそろそろ暮れそうだ


眼下をまるでコンクリートジャングルのような

東京の街並みが通り過ぎて行く。

所々で火の手が上がっているのか、

黒い煙の柱が立ち昇っていた


オスプレイと違って、ヒューイは

荷室をオープンに出来るので見晴らしはいい


ブローニングM2の射手のホセが言った。

濃い眉毛が繋がっているように見えて

わずかに受け口の親しみのある顔だ



「はあ~、基地ではコーヒーも飲めなかったな、

 今思えば、あのショッピングモールは

 最高だった


 ”本物のコーヒー”が飲めたんだぜ!


 ミカサンとカナエサンは元気かな?

 本当にあそこは平和そのものだったぜ、

 目の前の景色を見てみろよ、まるで地獄だ」



選抜射手マークスマンのトムが相槌を打った。

目尻が下がったお調子者フェイスの白人だ



「一番安全だと思われていた東京がまさか

 こんなになっちまうとはな....

 それにしても、

 ミカサンが協力してくれたおかげで

 我々も研究ができるようになったんだろ?

 もう一人のウイルス耐性者は必要なのかな」



ジーンが言った。

傲慢と生真面目の境目が難しい風貌の白人だ



「ウイルス耐性者が多ければ

 それに越したことはない、

 研究も更に進むことだろう。

 それに、ミカサンの従兄なら見捨てるのも

 後ろめたいさ


 それと、東京は問題を抱えすぎていたんだな、

 人々の不満が爆発したのだろう。

 でも、あそこは大丈夫だと思う、

 カナエサンという優れたリーダーが

 居るからな」



マイケルが言った

落ち着いた雰囲気の黒人だ



「みんな、タロサンのことも

 話題にしてやろうぜ!

 

 チ〇チ〇を出したり、

 ゲテモノDVDを持ってたり、

 女に股間を蹴られたりしてたけど

 話してみるといい奴だったよ」



ジーンが言った



「ああ、顔も声も良いのに、なんだか

 いろいろともったいないヤツだったよな」



4人の海兵隊員はたわいもない

おしゃべりをしていた。

そうでもしないとやってられないのだ


眼下の光景は凄惨だった


東京はセル作戦を遂行することで、ゾンビから

土地を奪い返していた。

それは、細胞セルのように壁で仕切られた区域を

増やしていくという作戦だ


だが、セルを作るのも、

中に閉じ込められたゾンビを始末するのも

危険な仕事だった


そして反乱を起こしたのは、セルを作っていた

下級国民だった


セルの最深部であるセントラルシティに

住む上級国民と、

その下僕である中級国民に対する憎悪が

爆発したのだ



突然、ホセが舌打ちして、

ドアガンのブローニングM2を撃ちはじめた


ビルの屋上に生存者が居て、今、まさに彼等に

ゾンビの大群が襲い掛かっていたのだ


ヘリのローター音と、M2のダダダダダッという

重低音が混ざり合う


屋上のゾンビの群れが弾け飛んだ


12,7ミリの弾丸は文字通りにゾンビを

細切れにしてしまう。

上半身や腕が分断され、まるでブロックの

おもちゃのようにバラバラになる


しかし、すぐにヘリは

ビルを通り過ぎてしまった



「俺達は彼等を救いに来たわけじゃない、

 火事場泥棒をしに来たんだよ」



自嘲気味にジーンがつぶやいたのだった




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ