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プレッパーズ

ファイターファンタジーには今だに

ちんかわむけぞうは居なかった


東京で、何が起こっているのかは

大体理解している


彼等は、安全地帯の内側に

更に防壁を築いていた。

まるで、細胞セルのように、防壁で

細かく区画された東京の、一番最深部に

上級国民たちが住んでいた


一般国民たちは、セルの防壁を作るための

労働と引き換えに、生活物資を配給されていた



「働かざる者食うべからずか、嫌な世の中に

 なったもんだ」



まだこの時間にネトゲに入り浸っているのは、

セルの最深部に住む連中なのだろう


ミカが、夕食の準備を始めると言ってきたので、

タロはファイターファンタジーを去って

ホルガー・ダンスククラブに

ログインすることにした


様々な海外のネトゲに、この館の入り口は

あるらしく、

パスワードを入れると、

別サーバーに飛ばされる


ほとんどのネトゲが、オープンソースで公開

されたので、このような芸当が可能なのだ


謎の洞窟を進むと、ふいに巨大な石像が現れた


まるで古代のヴァイキングの戦士のような

男が、武装したまま椅子に腰かけ眠っている


3Dキャラのタロがその石像の前に来ると、

石像が顔を上げ、その目が光った



「このダサい演出、どうにかならんかね」



一瞬にして、ホルガーダンスククラブに

ワープしたのだった



///////////////////////////////////////////////



「今日は、”おしゃべり”を2匹と

 ”だんまり”を8匹仕留めた。


 ”だんまり”のほうは、

 仕掛けたクレイモア地雷で

 バラバラになっててよ、

 恒例の朝のお散歩の時に

 頭のある部分をバットで潰して回ったぜ!


 ”おしゃべり”のほうは、

 拳銃で応戦してきやがったから、

 俺のM4カービンでハチの巣にしてやった」



英語のチャットで自慢げに語るのは、

ネバダの武装農場経営のミスターホワイト


核シェルターだけでなく、

地上に食料生産手段を持っている


ミスターホワイトはタロに話しかけてきた



「そっちはどうだい?」



タロは答えた



「俺は、今ままでで”おしゃべり”を5、

 ”だんまり”を1だけだ」



ミスターホワイトは驚いていた



「今日じゃなくて、今までの累計で

 たったのそんだけか!

 あんたは平和主義者か?


 ...なるほど、ジャパンか、

 本当に平和でうらやましいぜ」



このクラブに居ると感覚が変になる


ミスターホワイトが言った



「ジャパンでは武器は持てないらしいな。

 どうやって

 ”おしゃべり”を5匹仕留めたんだ?」



タロが言った



「4匹は俺が罠に嵌めた、

 1匹は世界がこうなる以前に俺が見捨てた。

 まあ、俺が自力で仕留めたのは

 ”だんまり”の一匹だけだ、

 本当に恐ろしい経験だった...」



ミスターホワイトが言った



「なるほど、戦闘経験が少ないあんたは

 是非とも”お得生活セット”を使って

 武装を強化するべきだぜ!

 爆弾にナパームに毒薬くらいしか作れねえが

 工夫をすれば、クレイモア地雷を作れるし

 食料に毒を混ぜて置いとけば

 ”おしゃべり”は引っ掛かってくれる。

 攻撃こそ最大の防御って言うだろ?」



タロは問うた



「その、”お得生活セット”ってなんなんだ?

 俺は、親父から核シェルターを相続したから

 あまり詳しくないんだ」



ミスターホワイトが言った



「なるほど、核シェルターを作った親父さんは

 死んじまったのか?

 生きてたらこの状況をさぞ喜んだだろうな。


 まあいいとして、

 ”お得生活セット”ってのはな、

 核シェルターを発注したときに

 サービスでついてくるセットのことだ。

 中身は、何の変哲もない洗剤やら

 肥料の原料やらそんなものだが、

 それを使ってさっき言ったものが

 作れるってわけだ。

 作り方は、図書室に行けば書いてあるぜ、

 そんじゃあ俺は寝るわ、グッナイ!」



プレッパーズたちは、今や完全な自己肯定感に

浸っている。

無理もないだろう、散々、世間から白い目で

見られ、結局、自分たちのやっていたことは



”全てが正しかったのだ”

 


//////////////////////////////////////////////



タロは椅子から立ち上がると、

倉庫部屋に行った


積み上げられた物資の中を懸命に探す



「あったよ...」



英語のラベルが張られたそれらを引っ張り出す



「食料に毒を仕込むってのは良い考えだな...

 あわよくば重機レンタル会社の連中を

 全滅させられる。

 しかし、どうやって届ける?

 道に置いておくわけにはいかないし、

 こちらから

 お近づきの挨拶に向かうわけにもいかない

 

 一応、このまま、

 重機レンタル会社とショッピングモールの

 潰しあいを期待することにしよう」



サイコパスの思考に浸りながら考え込んでいると

ミカが夕食が出来たことを知らせてきた



肉と卵を使った料理は、心を優しくさせる



ミカが言った



「重機レンタル会社のあの乗り物と、

 ショッピングセンターの物資で、

 学校の避難者たちを助けてあげられるかも!

 皆が協力しあう流れにならないかな?

 その場合、私たちも何かやれることって

 あるかな?」



タロは思った



(その発想は無かったよ、でも、その感覚は

 大切にするんだぞ)



/////////////////////////////



ネバダ州ではもう真夜中だ


巨大な核シェルターには、

大家族が寝泊まりしている


風力発電に太陽光発電、

ポンプで地下水を汲み上げて

地上では、様々な農作物を栽培している


アフガンでタリバンと戦っていた頃に

比べると、今の状況もたいしたことはないと

思える


ミスターホワイトは寝る前に思った



「そういえば、あのジャパンの若者、

 世界がこうなる以前に”おしゃべり”を

 一匹殺ったって言ってたな。

 やっぱり、プレッパーズってのは

 どいつもこいつも狂ってやがるぜ!

 HAHAHAHAHA」




 

 

 




 

 

 


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