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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・49回

  四十九回



十二月二十二日



 彼は部下の面倒を良く見、まとめあげる立派なお人です。

 あれほどの頼もしいお人がいらっしゃったら、きっと、できそこないのカボチャ頭達でもまとめ上げて、かしこい人達にも勝る大業が果たせられると思います。

 とても普通の人には出来ない(わざ)だと思います。


 そのような立派なお人に、どうして自分が歯をむき出しにして向かっていったかというと

 彼の優れた天分が羨ましかったのだと思います。


 いくら人を生かし、大業を果たせる立派なお人であっても

 自分は幸せな者達を見ると、どうしてかムカムカと意味なくして腹が立つのです。


 きっと自分が貧しい生活の苦しさを味わい、育ってきて

 そのような、いつの時世にもなくならない、不幸な人達の苦しみを思いやっているからだと思います。


 この点をもっと詳しく書けば、きっと君達にも理解してもらえるはずだと思いますが。

 今は少し風邪気味で、頭がボケていますので、またの機会に述べたいと思います。


 ただ今、言えることは、あれほどのお人が、自分の目的としている人達をまとめあげ、生かしてくれたならば

 これ以上に立派なお人はいらっしゃらないだろうと思います。


 しかしそれは高望みでしょうねっ!

 もし彼がそれを果たせるだけの力量を持ち合わせているお人であったら

 決して自分の心を理解できないはずはないし、あんなにけなすこともしなかっただろうと思います。


 いわば自分の目指している人達とは、

 自分のように、世にすね、ひねくれて、富や名声を無視する人達だからです。


 マァ~、早い話が、ここでいくら立派なお人として祭り上げられてるお人であっても

 自分の世界を築いていくのには、まったく対立していかなければならない存在のような気がします。

 それをここでやるかどうかは?分かりません。


 しかしいづれ対立しなければならない定めのお人だし、今回の経験は、その為に少しプラスになったような気がします。


 あれほど怖い人に立ちふさがれても縮こまらなかった自分の肝っ玉が本物かどうかは自信がありませんが。

 しかしあそこまでやれたことは、自分としても満足のゆくところです。


 今後はそう簡単にはいかないでしょうねっ!

 何故かって?

 やはり自分は肝っ玉が小さく臆病で、何の力量も持ち合わせていないことを見破られてしまっているからです。


 こんなに自分一人、生きていけるかどうかも(あや)ぶまれている男に何が出来ましょう。

 いさぎよく負け犬として立ち去った方がお似合いなのです。


 しかしそれでもまだ居残ろうと思う気持ちが残っているのは

 自分の方にも彼の弱点というものを見破っているからです。

 それは何かって?

 実に簡単明瞭な事なんです。

年の功(〇〇〇)にはかなうはずがありませんからねっ!


 エヘヘのヘ~~~だ!


 もうよしましょう!

 こんなくだらないことで対立するのは。


 とにかくこのようなことで人様のことにとやかく口をはさむことはないのです。

 お互いに自分のやり方で突き進んでいったら良いことなんです。

 今日までのことで、自分がそんなに彼等が批難しているほどの悪人ではないということを分かってもらえたことと思います。


 とにかく彼等にはまったく自分を理解する考え方というものを知らないのです。

 それでいて、いつもその場限りの、こじつけを言っているだけのことです。


 どちらの方を信じようと、俺シャマにはそれに対して、とやかく口をはさむ資格はありません。


 君達の判断で好きな方を選んだら良いことですからねっ!


 どちらにも良い面(優れた面)も、悪い面(劣った面)もあることだし

 それを決定するのは、やはり君達の判断と好みによります。



 話しは変わりますが。

 金、土曜日までの自分は、彼等のように根も葉もない批難を浴びせていることにカッカカッカと頭に血がのぼっていました。

 もう一声ひとこえ、聞いたならば、その辺の鉄棒を持ち出して脳天をかち割ってやろうとさえ思っていたのです。


 僕があれほどの、ぬけぬけしさと虚勢を張れたのは、何も度胸があるとか肝っ玉が大きいとかいうことからではないのです。


 あの時は本当に、こんなにまで自分が真実を述べているのに理解してもらえないんなら

 命を投げ出しても良い!

 と、最後の覚悟を出していたのです。


 たかがあれほどのことで

 と、おっしゃいますが。

 このように信念でまかされることほど悔しいことはないのです。

 とにかく俺シャマは、命を張りました!

 来るなら来てみろ!

 と、身を震わせながら、彼等の攻撃に身構えしていたのです。


「たかがあんな気の小さい奴に!口も、ろくすぽ(まともに)きけない奴に何が出来るのか!押し潰してしまえ!」


 といった、侮辱に負けじと、自分の方も


「何が気の大きい奴か。やり手か!」


 などと呟いて、ドッテリと(どっかりと)肝をすえました。


 そのような目くじら立てて、ふくれている自分の姿態を見て

 人様はまた自分の一番気にしている古傷に針をさしました。

 チクチクと、そしてそれはダンダン大きくなって、何の見境もつかなくなるほどに、血が脳天を渦巻くほどになりました。


 その形相を見て、人様は人情も見失ったような冷淡な言葉を吐き捨てたのです!


「ありゃ~、やっぱりヤクザの血をひいてるよ。頭に血がのぼったら何やらかすか分からないよ。恐ろしい奴だ!」


 などと、このような言葉をどこから引き出してきたのかは知らないが

 そんなデマが波紋を呼んで、ついには


「今まで寝ぐらもなく、ブラブラ放浪して来たんだよ」


「きちんとした家柄の人かと思っていたから、今まで好意を抱いていたのよ。自分の実家もないような人のところにお嫁になんか行けないわ!やはり実家があって、たまには里帰りできる人の方が良いわ!」


? ? ? ?


 もういつまでも、このようなごたくを並べ立てていても仕方がない!


 やはり田舎へ帰るしかないんだ!

 何も負け犬として帰るんじゃない。


 ありのままを見極めて退くんだ。


 君達にいくら語りかけても、チッとも自分の助けとはなってくれないし、張り合いがないのだ!


 もうよそうねっ!


 さようなら!


 バイバイ!



 彼は柄にもなく宝くじが当たって有頂天になってるし

 彼にお金が入ったら、たちどころに大将となる日は近いことだろう。

 彼に敬意を表して、俺はいさぎよく退くことにしよう!


 俺は、違った。

 また新たな人生の絵図を描くことに夢をたくそう!


 君達も精一杯お幸せにねっ。


 さようなら!


 あの世の者より!


 現世の人達へ!


【完】




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