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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・47回

四十七回



 しかしそのような幸せなんて僕には不似合いなんです。

 彼等は、いつも自分が本心を言ってるというのに


「何言ってやがんだ!自分本意な奴のくせに」


 と、すぐあらぬ風に解釈して、自分を悪者呼ばわりしてばかりいます。


 別にそのように悪者にされても、自分としてはまったく良い目を見たいという気持ちなど微塵もありませんから、それほどこたえはしないことだけど。


 ただあちらの姉さん方達にだけは、僕の本当の気持ちを理解してもらいたいのです。


 もうこの会社の人達に理解してもらおうという高望みなどコレッポッチも持っていません。

 しょせん、生きてきた世界が違っているのです。

 根っから肌が合わないということでしょうか?


 イヤ!

 それは違いますねっ。


 僕のような、極端に偏った(かたよった)性格の持ち主だけが、このようにどのような世界に入っても皆と馴染めないということでしょうねっ!


 同じ人間として生まれてきて、これほどまでに力をつけてきたというのに

 その力を生かすべき世界がみつからないのを悲しく思います。

 とりわけそういうことなんです。

 そのように、滅多に好きになれる人のいない中で

 このようにウマがあい好きになれる川口の人達と、どうしても離れるのが悲しいのです。

 出来たら一生、兄弟姉妹のような間柄で付き合っていきたいと望むのはあまりにも高望みなのでしょうか?


 とりあえず、今自分が一番苦しい(悲しい)ことは、そのように好きな人達に会いにいくためには、お金を使わなければならないということなんです。

 別にお金を出し惜しみしている訳ではありません。

 先日述べましたように、もし自分にそのようなお金を費やしてもビクともしないような、多くの収入があったら

 まったく行き通うことを煩わしく思うことはないのです。


 ただその苦しみに耐え難くなってきていますので、苦しんでいるのです。


あぁ~


どうしてこの世(人生)というものが、うまくいかないのだろうかと嘆きます。


 それでも続けられるだけ続けて、通おうと思っています。


だからママさんも、そんなにつれない言葉をはかないで、もう少し寛大なお心を持って、やさしく見つめて下さいよ!ねっ。末長く。


 この前パチンコ屋で、亭主連れのエッチャン(昔失恋した人)を見かけました。

 実に明るく幸せそうな姿を見て、僕は一瞬縮こまってしまいました。

 どうしてあんなに素晴らしい人を振り捨ててしまったのかと

 自分の頭を金棒で殴りつけたい気持ちでした。


 本当に女らしく‥‥、昔の子供っぽい可愛らしいエッチャンとは一変して

 女の喜びを心身(肌)、一杯に満喫して、これ以上の幸せはないといった顔をしていました。


 あの笑顔が僕の傍らに付き添っていたなら、

 僕は今頃、本当に幸せ一杯で、この会社で身を立てていることにも、惜しまず突き進んだことでしょう。


 その幸せが‥‥


 その張り合いが‥‥

 今の僕にあったなら、このようにふて腐れて、皆から毛嫌いされ、孤立することにもならなかっただろうと思います。


 久しぶりに会ったんだから、声ぐらい掛け合ってもよかったのだけど

 エッチャンの幸せそうな姿にくらべて、今の自分の身柄は未だに彼女の一人もいず

 会社で身を立てることすら危なっかしくなっている、はかない身だったので恥ずかしかったのです。


 今の、このみすぼらしい姿を彼女に見透かされたくなかったのです。


 本当に‥‥


 とにかく幸せそうなので安心しました。

 やはり自分が恋しただけの人であったのです。

 素晴らしい人です。

 僕も早く彼女の幸せそうなまなざしに縮こまらなくていいような、素晴らしい彼女をみつけて、幸せな家庭を持ちたいと思っています。


 早くみつけたいですねっ。

 そしてお互いに昔の思い出をツマミにして、楽しく朗らかに語り合えるようになりたいものだと思います。

 そして姉さん、妹さんともねっ!


 いつ、どこから、どのような人をもらうかは分かりませんが

 やはり自分にとって、彼女達と縁を切ることなど考えられません。

 末長く付き合っていきたいと思います。



 これは勘違いかも分かりませんが。


 ひょっとしたら、その姉さんがウチの会社に訪ねて来たのではないかと思います。

 あんまり僕が色々、会社の人たちから批難ばかりされているので、心配して来てくれたのではないかと思います。


 とにかく本当に、この日記に書いている苦しみを味わっています。

 ママさんには「悩みがなくて悩んでる」などとウソぶいていますが

 やはり僕にも悩みがあるのです。

 イヤ、あり過ぎてその重みにおしつぶされそうになっているのです。


「まったく悩みなどないと思っている人が、一番悩みを抱えているのねっ。ウチに来たときには悩んでいるなどという顔はまったくみせないんですよ」


 とにかくこの自分の苦しみを‥‥、悩みを‥‥

 この会社の人達はまったく理解してくれないのです。

 どうしてか?は知りません。

 僕にもそれが不思議でならないのです。

 こんなに真剣にウソ偽りのない悩みを訴えているというのに

 まったくまともに受け止めてもらえないのです。

 理解してもらえないだけだったらまだ自分の方としても、彼等の冷淡さを許してやることも出来ます。

 それをまったくかけ離れた誤解をして、自分を悪者呼ばわりするのです。


 こうなってみれば、もう僕にもまったく彼等に好意を示す気持ちなど失せてしまって

 そんなに悪ぶることもないと思うようなことでもふて腐れて

 わざわざやるような、ひねくれ者になりさがっているのです。


 その悪ぶりを自分の本当の姿として、彼等は益々自分を悪者に仕立て上げていきます。 もう僕も、彼等の醜態を改めさせる善意などひとかけらさえありません。


 悪者にしたけりゃ、とことん悪者にしてみろ!

 そんなに偽りの自分を仕立て上げても、結局彼等は負け落ちていく定めにあるということを予言していいほど

 自分の信念は汚されることはないと確信しています。


 だから今の所、彼等の言いたいように

 やりたいようにやらせておこうと思います。

 このような偽りの闘争によって引き起こされた出来事も、一つ一つ味のあるものだし


 過ぎてしまったなら、きっと楽しく素晴らしい思い出として残っていくだろうと思いますからねっ!


 もうこのように同じことの繰り返しばかり言っていても仕方がありませんねっ!


 時間と労力の無駄です。



 とにかく成り行きにまかせていましよう。


「おっ!ますます面白くなってきたぞ!」


‥‥という悪霊君の皮肉な横顔に口づけして、彼等が成すがままにまかせていようと思います。


 やはりこのような出来事が起きているのは、自分の仕業(しわざ)ではなくて、確かに彼等(悪霊君達)の仕業だと思うのです。


 僕はその事を知っていますから、自分がいくら悪者にされてもかまいません。


 いよいよ居られなくなったら、ここ(寮)を出ていけばいいことですからねっ。

 簡単明瞭です。

 実に!



 話しは飛びます。


そのように僕のことを心配して来てくださった姉さんは、本当に美しくて素晴らしい人なんです!


あのように素晴らしい人など、この会社には一人も居ません。


「あんなに素晴らしいお姉さん達がいるので、ウチ達とチッとも遊ばないのねっ!あれじゃ無理ないわ」


 ということです。

 ハイ


 とは言え、やはりこの会社にも一人、彼女に匹敵するほどのお人がいたのです。


 それが自分が死ぬほど苦しみ、恋い焦がれた人なんです。


 その彼女をどうして自分があれほど慕ったかは、君達も知っているように


 その姉さんとウリふたつのように似ていたからなんです。


 彼女に差し出した手紙に書きもらしたことが一つあると言ったのは、この事だったんです。


 とにかく本当によく似ているのです。

 顔立ちはねっ!


 しかしその彼女を、ママさんが見立てたところによると


「見かけはソックリでも、中味は月とスッポンほどの違いがあるわ!姉さんの方はもう少し優しいところがありますわ!」


「そうねっ。でもウチもあの娘の年頃にはあんなだったかも知れないの。

 とにかく男の人から声をかけられただけで背筋がゾ~ッとした頃があったのよ!今、あの娘が彼を好きになれないのは、まだ若くてあの子の良さを見いだせないでいるからよ。

 本当はあの二人が一緒になればきっとうまくいくんじゃないかと思うのよ!マァ~、それが叶えられないのは、二人のリズムがマッチしなかったのねっ。

 可哀想に。良いわ!ウチがもっと良い娘を見つけてやるから(これは作り事)」


 などといった会話も聞こえました。

 僕も本当にそう思っていたのですが、どうしても叶えられず

 このような結果が出てしまいましたので。

 もういさぎよく退こうと思います。


 これ以上しつこく付きまとうことは、彼氏にも悪いですし、あまり見た目の良いものではありませんからねっ!




和チャンはどうしてるんだろう?

 彼氏から振られたっていうし、きっとしょげてるんだろうなぁ~。

 もし俺で良かったら付き合いたいのだけど

 何しろ女の心というものがサッパリ分からないからなぁ~。


 それに自分の方から声を掛けるド胸もないし。

 悔しいなぁ~

 今ならまだ間に合うというのに。

 こんなにグズグズしていたら、また舌のこえた奴から横取りされるんだろうなぁ~。


 アァ~、どうして神は私に欲を与えてくださらなかったのだろう?

 嫌われても嫌われても、図々しく声を掛けるクソ意地があったなら、きっと和チャンを、ものにできると思うのに。


本当に悔しいなぁ~




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