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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・100回


百回



 二月九日


 こんなことを彼女に言うことは辛いことなんだが……


こんなことを言ったら、今まで築いてきた彼女とのロマンスも、壊れることになるだろうが……


俺はあえて言わなければならないのだ!


人間として、男として、僕は彼女の冷えきった心と、我が儘さを許すことが出来ないのだ!


僕達が初めて、そして最後のデートをした時、僕は言っただろう? ……


「アンタが男を自由に操る要領でも身に付けたら、きっと怖い存在になるだろうなッ」って――


その言葉の裏には、やはり彼女の抜きん出た美貌によって、男の心を引きつける力が備わっていること……


僕みたいに、その美貌に恐れおののいて近寄ることすら出来ず――


従って、はたから片思いという苦しい恋心を温めなければならない事態に追いやってしまうこと――


それほどまでに彼女は、女として素晴らしい魅力を備えているのである。


それは昔の僕にも当てはめられるものであって――


とにかく、自分が何もしないでも彼女達が恋心を抱いてしまうのである。


そして、それを通して僕は彼女達の目の前に姿を出すことすら出来なくなってしまったのです。


それはどうしてかって?


当たり前でしょう、ずっと前の日記にも述べましたように――


例え自分が何にもしなくても、自分のことで思いつめ、悩む者がいるとしたら……


同じ兄弟(姉妹)として、その者の苦しみを黙って見過ごす訳にはいかないだろうと思うのです。


僕においては、やはり自分が本当に好きだ! と思える相手(女性)にしか、最終的に心が開けない、かたくなな性分だから――


もし自分が好きにもなれないような女性ひとから、そのような苦しい恋心を打ち明けられたら、断るにも断れないし、さりとて断らずにはいられないということもあって、ものすごく心を痛めるのです。


あまりにも思いやりがありすぎてねッ!


だから僕は、そのような事で心を痛めるくらいなら、最初からそのような娘の出ないように、彼女達の目の前に姿を現さない方が良いだろうと思って、これまでじっと身を潜めていたのです。


 しかし、彼女の場合はどうですか!


最初の頃の日記でさんざん批難していたように


「別に自分がしたことじゃなかったら、例え自分のことで他の男性が思いつめ、苦しんでいたとしても知ったことじゃないわ! 全然ウチとは関係ないじゃないの!」


と、冷たい言葉を吐くほど、我が儘な性格を持っているのです。


その我が儘さで、堂々と自分が気にいらなくなったとゆうような男性を次から次えと振っていく――


僕にはそういった思いやりのない娘は許せないのです。


今までさんざん色んな方便を使って、そのような愛の世界をうたってきましたが――


少しでも彼女の心に思いやりがあって、優しぃ女心というものを芽生えさせようと思ってねッ。


それがどれくらい効果を発揮したか自分には分かりません。


ただ今言いたいことは、あれほど僕がねんをおしていたというのに、返事をくれないこと……


それによって、やはり彼女は昔のままの冷たい心と、我が儘さのかたまりでしかないのか? ……と、悲しんでいるのです。


「あの人は遊び半分な気持ちでやっているんだから、返事出す必要はないわ! あの人のことなんか全然問題にもしてないわ!」などと……


そんなことを言って! そんなことを言って……


アァ~、もう僕は待ちくたびれましたよ。



 彼氏とのことはどうなったか分かりません。


もしかしたら、自分が感じ取ったごとく


「そう彼が言ったら、モタイさんは逃げてしまったって!」


ということで、まだ彼氏に身を許していないのかも知れません。


どうして、そのような行動をとったのか?


「ただ慌てただけよ! 別に藤田さんとのこと気にしてでのことじゃないわ! 今度チャンとしてからだったら、彼に身を許してやるわ」


ということで、僕の事なんかまったく考えてもいないのか知れません。


それならそれで良いから……


どうして一言、僕に返事をよこしてくれないのか!


それが腹立つのです。


本当に我が儘な娘めっ!


屁こいて、おっんじまえ!



 こんなことを言うと、君は、またプイッとそっぽを向くだろう!


「イヤ! そんなこと言っちゃ、謝って!」


と、君はすぐすねてしまうだろう。


やはり君は、我がままなんだ。甘えん坊なんだょ。


だから僕みたいに、その我が儘さをそっと聞き流し、許してやるような、心根の優しい男性でなくちゃダメなんだよ。


僕がいくら君のような我が儘さを許してやるからって、それで決して君を甘やかしたりはしないんだよ。


そうでもしなければ、君はとても素直な気持ちにならないし、上手くいくもんじゃないからね!


しかしそのような心遣いも、君に通用するかどうか分かりませんがね!


 とにかく君は我が儘で、心ではとても男性の心をとらえていられる身分じゃないんだよ。


マァ~、今日のところはこれくらいにしておきましょうか。


とにかく早く落ち着くべき所へ落ち着いてくれなくちゃ~


僕も目ざわりで、どうしようもないんだよ!



◇◇◇◇◇◇◇


 僕はそっと横目で彼等の華やかな青春を見やった


こんな所にも、幸せがあるのか? と仰天しながら


銀翼の翼をつけて、飛び回っているスキー野郎達を見やった


いかにもこれが青春だと言わんばかりに、堂々と雪氷の上を滑っている若者達の姿を見やった


たかが骸骨の衣をきた肉欲のかたまりでしかない、人間野郎の欺瞞に満ちた青春を嘲り笑いながらも


うらやましい目で見つめていた


アァ~、これが青春なのか!


こんな所にも青春のオアシスがあるのか! という


驚きと物珍しさで、彼等の華やかな青春を見やった


不幸の、暗い人生を


ただひたすら突っ走っている僕の目は


一瞬彼等の神々(こうごう)しいまでの青春の光に目がくらんで、棒立ちになってしまった


アァ~、これが幸福というものか


そして、これからの長い人生において、チョクチョクそのような幸福の果実を手にしてみたいと思った


本当に有難う!


このような幸福もあることを僕に教えてくれて……


 ◆ スキー場での感想◆





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