ある日の日記・97回
九十七回
とにかく休戦!
休戦としましょう!
君のことを考えてばかりいたら、楽しめるものまで楽しめなくなってしまいますからねっ!
だからスキーに行った間は、極力君のことは考えないことにしようと思っています。
君も許してくれるでしょうねっ!
「ウチを置いて自分は楽しみに行くなんて勝手な人ねっ。アンタがそうするんならウチも楽しむわよ!」
などと言って、僕を困らせないで下さい。
とにかく僕はこの先の長い戦闘の為に、鋭気を養わなければならないのです。
だから! ねっ!
しばらく休戦にしましょう。
君のことは忘れることにします!
今日も、少し何かのウワサがありましたねっ。
「あの人とのことがハッキリするまでは、誰にも身を許さないわ」
「他に好きな娘がいるの、その娘を紹介してやるわ!」とか
断裁の相棒が何やら、先にウソ言った彼女がいるとゆうことを言って、問題になったことやら……
マァ~、とにかく帰ってから詳しく書きます。
本当は、もう君を自分の我が儘な押しつけによって、縛り付けたくなくなったのです。
好きなようにしてください。
そうして自分が完全に諦めなければならなくなるのだったら、それでも構いません!
とにかく、僕もこの二日間、精一杯楽しんでこようと思っています。
君も楽しく過ごしてください!
二月八日
「とにかく、ただ今!」
「とにかく、ただ今!」
帰ってきたって、ちっともこの先、生きていくことに喜びを感じられない有様ですが……
とにかく帰ってきました。
この旅行の機会を利用して、あるいは君達(悪霊君達)の誘惑のワナから逃れられるかもしれないという期待も持っていましたが……
しかし、とてもとても……
どうしても……。
帰ってくる早々、君たちの声が舞い込んで来ます。
アァ~、せっかくこの二日間というもの、君達のことを忘れて楽しい人生の喜びを味わっていられたとゆうのに、またか……。
またこれから、君達の囁きに心煩わされ、悩んで行かなければならないのかと思うと、またもや、目の前に怪しげな霧が立ち込めてくるのを感じます。
まったく、君達の誘惑にはかないっこありませんよ!
僕の前途を……
将来、輝かしい人生を切り開いている自分の姿を見られるのか?
それとも君達の罠にハメられて、全てがメチャクチャにこわされてしまった、敗北者の自分の姿を見なければならないのか? は、分かりません。
その霧によって、自分の前途の姿をまったく見通すことが出来ないでいるのです。
他の人達には、このようにまったく自分の未来が、どのようになっていくのか? ということが分からないってことはないでしょう?
今現在の生活状態、自覚から推測すれば、大体の目度が立ってくると思います。
しかし僕にはどうしても先々の計算(数字)をはじき出すことが出来ないのです。
それは何と不幸なことでもあり、また反面、謎に包まれた宝物を探し歩いていく期待と夢に包まれた人生のようでもあります。
今の自分には幸せになろうと思えば――
他の者を征したり、皆から好かれたり、また女性の人達から好かれたり出来る天分を与えられているように思います。その事を思えばの話ですが――
幸せにもなれると思います。
しかし半面、あまりにも人間が良すぎるのか、僕にはまったく「幸せになるのが悪いみたいで……」という、自己破壊欲望が強いみたいなんです。
その二つのことが、今後、自分がどうなっていくのか? ということを分からなくしているのです。
もう本当に幸せになるべきものなら、幸せになりたい!
不幸せのままで終わるべき人生であるなら、あっさりと諦めて、その覚悟を持ちたい。
今の僕には、そのどちらの道を行く(進む)べきなのか?、迷っているのです。
どうしていいか分からないでいるのです。
そのどちらの道を進めるのか?
その決断を下せるのは……
恥ずかしながら……
男として不甲斐ない話ですが、やはり一生の連れ合い女性にかかっているように思われるのです。
いつもいつも同じ結論ばかりしか出ません。
「それが分かってるんなら、どうして持とうとしないのか?」
と言われますが……
だからこそ、その女性と巡り会うことは、特別の夢とロマンスを抱いているのです。
ごくありふれた結び付きというめぐり逢いなど考えもしません。
夢も見ません。
期待もしません。
何か……
まったくヒョンな出来事から、予期もしていなかった恋心が芽生え、そして
「アァ~、この人と一生を共にし、朽ち果てても悔いはない!」
と思えるような人と巡り会うことを、ただひたすら夢見ています。
このように、性解放がしかれ、フリーセックスや、その事をタブー視することがなくなってから、その風潮の中で、育ち養われてきた人達の思想と、豊富な経験からしてみれば、まことに滑稽な夢に見えるでしょうがねっ!
「そんな屁の支えにもならないようなロマンスばかり見て、苦しんでいるなんてナンセンスだよ! 女なんてその辺にゴロゴロ腐るほど居るじゃないか!」
「ちょっと指を動かせば、女なんてすぐに手に入れられるよ! お前も少しずるくなってもいいから、どんどんアタックしてみろよ! そうすればそんな悩みなんて、いっぺんに吹っ飛んでしまうからよ!」
僕はいつもいつも彼等から、そのような叱責を浴びせかけられます。
それによって、自分の心がどんなにかきむしられ、悲しんでいるかとゆうことを、まったく彼等は気にも止めないでねっ……
僕はもう沢山なんです。
確かに僕にも昔、そのような汚れ果てた風潮の中にトップりつかっていた頃もありました。
そのような頃には
「やはり、これが人間の(男と女)のありのままの姿なんだ。今まで美しい夢を抱いてきた夢事が、まったくウソッパチなことだったんだ!」といって
昔の美しい憧れを嘲り笑い、蹴り捨てようと思ったこともありました。
しかし……
僕にはやはりダメだったんです。
とてもそのような醜い生き物だとは認めたくなくなったのです。
「そんな馬鹿なことがあるもんか! ただの動物同然みたいに、何の心の結び付きもなく、くっつき合うなんて……、そんな儚い存在(男と女の存在)であるはずがない! あってたまるか!」という、ものすごい反発感が生じて、今は……
どうしても動物的欲望をあらわにすることも、また極端に言えば、そういった醜い現実を見せつけられるのが恐ろしくて、女性にも声をかけることを拒み、僕は一人
「いくら良い男だからって、何にも喋らないんじゃねぇ~。喋らなくちゃ~、どんな人かも分からないし、だから付き合う気にもならないのよ!」
という、彼女達の冷たい捨てゼリフに、どうにも抵抗することも出来ず、僕は沈黙していなければならないのです。
そして相変わらず、美しいロマンスを夢見、その人と巡り会える日の訪れることを待ち望んで行くしかないのです。




