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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・96回


九十六回



 僕の意識の全体に「何とかして彼女のウワサや、様子を知りたい」とゆう気持ちがあって――


それがまったく何でもない(彼女のこととはまったく関係のない)ことでも、彼女のことを言い合っているように聞こえてきたりするのです。


とにかく彼女への思いさえ断ち切ることが出来たなら、まったくこのような幻聴など起こるはずがないのです。


 しかし、今の所、どうしようもなく彼女への思いを断ち切ることが出来ませんので、今は仕方がないんです。


「あの野郎、寮に悪霊がいるなどと騒いで、一人で苦しんでるんだってよ! 馬鹿な奴だ」


などとバカにされても、今の自分には、まったくどうしようもないんです。


これで少しはこの事が本当であるということを信じてもらえるでしょうか?


 とにかく今の僕にとっては、現実にハッキリとした証拠を見せてもらわなければ、どうしても現実の、ありのままの事に目覚めることが出来ないのです。


「どうせ遊び半分ぐらいにしか思ってないんだろう!」などと――


僕のことをいい加減に済まそうとするものなら、僕は本当に自分でもどうしていいか分からなくなります。


君から何の便りも来ないと、僕は次から次えと色んな妄想をして、喜び、苦しんでいなければなりません。


その事によって、この頃、気狂い(きちがい)みたいに「そう」と「ウツ」の起伏が激しくなっているのです。


 僕の仕事中の形相を見て下さい!


そうすれば、そのことが一目瞭然に分かるはずなんです。


仕事中もひっきりなしに彼女のことばかり考えて、色んな妄想をしています。



 彼女と上手くいって楽しんでいることなどを空想している時なんかは、仕事をしている事も全く忘れて、顔はニコニコ、態度はハツラツとしています。


彼女から振られたようなことを空想している時なんかは、悲しさに胸がしめつけられて、とても仕事をしている気分にもなりません。


そのように仕事中、コロッ、コロッと、僕の形相や態度の変わり具合を見ている周囲の人達なんかは、きっと――


「アイツ何やってんだろう! 仕事中にニヤニヤしたり、ショボ~ンとしたりして、まったく変わった奴だなぁ、気が狂ってるんじゃないか!」


などと受け止められているかもしれません。


 自分でも分からないんです。


そのような囁きに、いつの間にかのめり込まされて、空想の世界へと浸りきっているのです。


そしてそれが終わって、僕は身も心もグッタリしてしまうのです。


なんとかして君の思いを断ち切りたい!


そう思って、僕は毎日毎日この日記に胸のつかえを吐いているわけです。


 しかし、いくらやってもいくらやっても、なかなか君の面影は消えようともしません。


やはり、とにかく、君の口から現実のありのままの様子を聞くしかないのです。


「あんたが感じていることなんか、みんな嘘よ! 思っていることは嘘よ! ウチ達が寮に来ていることなんか嘘よ!」


ということを、ハッキリと示してもらわなければ、とても現実に目覚めることなんか出来そうもないのです。


君から、そのような言葉を聞くことは辛いことですが、仕方がないのです。





 六日の夜、七日、八日と、会社で企画されている、スキー会に参加することになりました。


あんまりこん詰めていると、本当に気がまいってしまいますし、彼女のことを胸の中に詰め込んだまま、スキー場へ行っても、自分の気持ちは晴れず、つまらない時間を過ごすことになるかもしれません。


しかしとにかく行ってみようと思っています。


 また、六日、七日、八日と、君にとっても時間をもてあそぶことだろうと思います。


そのような事を考えてみましたら


「アァ~、この期間に、もしかしたら彼氏に奪われはしないだろうか? 身を許してどうしようもなくなりはしないだろうか?」


などと思って、とても辛いのです!


もし本当にハッキリと、君から振られた後であったなら、そのような事を考えて悲しむ必要はないのだけど、今はまだとにかく、夢を見ています。


もしかして、もしかして……


などと、まだ諦めきれないでいるのです。


どうか、彼氏と行動を共にして、僕のことがまったくダメになろうとも、とにかく返事だけはください。


お別れの返事でも良いんです。


今の僕にとっては、とにかく君から一言葉でも、一文句でも良いんです。


現実のハッキリとした声というものをいただきたいのです。


この苦しみから――、この妄想から脱離する為にもねっ。


いつもいつも自分事ばかり言って申し訳ありません。




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