ある日の日記・92回
九十二回
アァ~、もう僕は本当にビクビク顔で――
君達(悪霊君達)の命じることをやり遂げています。
君達は言ったじゃないか!
早く出さなければ彼女は彼氏から奪われてしまう――
今ならまだ間にあう。
まだ今なら彼女も、お前のことを好いている。
だから手紙出したら、きっと彼女はお前の言うことを聞いてくれるよと。
しかしどうかね!
見てくれよ!
この惨めさ……
この恥ずかしさ……
「馬鹿じゃなかろかない!」という
聴衆の嘲り声で、いっぺんに吹き飛ばされたじゃないか。
「「アレッ、アレッ、アレ~ッ」」
どうしたんだい?
いったい彼女はどうしたんだい?
どうして彼女は怒っているんだい!
どうしてあんなにふくれているんだい!
「もう馬鹿は死ななきゃ治らないってとこね! 勝手にさせといたらいいわ!」
「でも、やっぱり頭にくるわ! どうゆうつもりかしら。サッパリ意味が分かんないわ!」
「ウフフ、いえね、それで意味が通っているのよ」
「どんなふうに?……」
「ウフフ……」
「でもやっぱり腹が立つわ! もう絶対手紙出さないから!」
こりゃ~、いったいどうゆうこっちゃちゅうねん!
いくら皆からのけ者にされ、馬鹿にされているといっても、こりゃ~、あまりにもひどか仕打ちバイ。
アァ~、こんな時つくづく思います。
皆と仲良くできていたらなぁ~と
皆と仲良くし、好かれていたら、こんなにも自分のことを馬鹿呼ばわりし、冷たくつっけんどんにされなくても済んだとゆうのに――
本当に今は心細い。
彼氏も目くじら立てて怒っているみたいだね。
「いい加減にせんと、しまいには血い見るど! 俺が黙っているからって、調子に乗るな! 今度何かやったら本当にぶん殴ってやる!」
などと、恐ろしいことを言っておられるみたいだし――
僕は……
僕はこうするしか手段が無くて、やったというのに――
彼氏からはそんな恐ろしいお小言をもらうし、彼女からは嫌われて、踏んだり蹴ったりですよ!
これはいったいどうゆうこつになっとっとじゃろか?
オイにはサッパリ分からん!
勝手にせ~ちゅんじゃ!
とにかく返事ば待っと~バイ!
手紙の出来具合は如何でしたか?
けっこうサマになっていたでしょうか?
「まるで本職の小説家顔負けの文章ね! これだったら小説家(作家)になるのも夢じゃないわ」
「これが処女作かしら、若き日の作家の卵ってとこねっ」
「しかし文章は上手いけど、まだまだ内容が幼稚だよ! もっと本を読んで豊富な言葉を駆使出来るようにならなければダメね!」
「そうね! もう一歩ってとこね」
「でもすごい人ね!『かくれたスター』と言われている人にふさわしい手紙(文章)だよ!」
「これじゃ俺なんか、とても足元にもおよばないよ。負けたよ!」
「口ベタなわりには、文章書くのが上手いなぁ~。やっぱり口ベタな者なりのプロポーズの仕方があるのね」
「やっぱり世の中(人間)とゆうものはよく出来ているんだよ。口達者な者は口で言えるから作文の才能がなくても良いが、口下手な者にはこうして文章を書く能力が与えられていて……。これで良いんじゃない」
「でも両方ともダメな人だったらどうするの?」
「そりゃ~? ダメだったら可愛そうね。そうなったら真心でいくしかないんじゃないの?」
「そうね、でも今の世の中で、そんな目に見えないようなものを分かる人がいるかしら?……」
「ウ~ン、まぁ何とかなるんじゃないの?」
とにかくサイは投げられたのだ。蛇が出るかヘビが出るか?
天命にまかせよう!
いつまでもこのように自分一人で思い煩っていても仕方がないと思い、ダメならダメ、イイならイイとゆうことをハッキリさせたかった。
それでダメだったら諦めるしかないと思ったし、それで他の娘に望みを変えなければならないと思った。
もういいんだ。
この会社に落ち着いても何とかやっていけそうにも思うし――
彼女を持っても何とか上手くやっていけるだろうとも思ったし――
とにかく今後の成り行きにまかせとこう!
・・・・・・・・・・・・・・
さぁ~、君を丸(ま~る)い、丸(ま~る)い
おムスビにしてコロがしてみるよ
丸(ま~る)く、丸(ま~る)く、まん丸くしてね
さぁ~、君を
夢の国へ、コロがしてみるよ
君の生まれ故郷にね
ダンダン、ダンダン、コロんで行くよ
さぁ~、君は
今、遊んでいるよ
となりのター坊とね
ひと~つふた~つ、おてだましてるよ
さぁ~、君は
今、学校へ行ってるよ
田んぼのあぜ道を
ひと曲がり、ふた曲がり
懐かしい教室の匂いだね
さぁ~、今は
楽しい夏休みだね
可愛いい、水着を着て
チャポ~ン、チャポ~ン
足で水面をたたいているよ
さぁ~、今日は
小っちゃいボーイフレンドから、いじめられたね
ヤ~イ、ヤ~イ
泣き虫、弱虫、甘えん坊~ってね
自由詩『おムスビコロコロ』より
どうしてか思い出します
君が作ってくれた、小っちゃな手袋を
その手袋を見るたび思い出します
つららが垂れ下がっている寒い朝だったね
僕の家の垣根を越えて
君は胸を弾ませ駆け寄ってきたね
ター坊、冷たいだろ~う、これはめな
赤茶けた朝陽が雪道に反射してたね
僕はまばゆく目を閉じたね
どうして僕にこんな物くれるの? どうして?
ター坊が冷たがっていると思って、好きだから
楽しい恋の果物をつめこんだ、遠足の朝だったね
よぉ~し、行こう、元気よく
君の手袋と、僕の手袋が握手をしたね
和チャンは、いつか僕のお嫁さんにしてあげる
澄みきった青空が目をこがした、幼い恋のひとときだったね
アァ~、君は今どうしているのだろう?
幼い恋の思い出を、一杯詰め込んだ
リュックサックを背負って
アァ~、君も今、同じ三日月の星空を見上げているのかい!
自由詩『小っちゃな手袋』より
冷たいコンクリートの箱部屋に
僕は生きる苦しみを押し込めて
今日も外へ出ていった
スケッチノートを片手に、野菊の咲いてる川づたいに
小川がやさしく呼んでる、冷たい水面に
僕は君への淡い恋を写し出して
今日も話しかけました
どうしても打ち明けきらなかった、片思いの苦しさを
君は相変わらず、黙って僕を見つめるだけ
僕は悲しさのあまり
棒で水面をかき混ぜた
君の顔はクシャクシャの波となって広がっていったよ
どうして君は、僕の気持ちを分かってくれないの?
どうして君は、いつまでも黙っているの?
どうして君は……
自由詩『水面』より
実にお粗末な詩でしたね!
しかし仕方ありませんよ
まだ書き始めたばかりですからね!
こうして新しい境地を切り開いていくと、だんだん心がなごんでいくようです。
君への片思いの苦しみも、だんだんやわらいでいくようです。
皆は不思議がっているようですね。
「よくあんなに一人でいて、寂しくないもんだなぁ~」
「俺は寂しがり屋だから、いつも皆とはしゃいでいなければ寂しくて仕方がないよ! 本当に藤田さんは気が強いんだね」
「あんなに朗らかそうに書いている日記を読んだら、藤田さんが死ぬほどの苦しみを受けて来たってゆうのはウソだよなぁ~」
とんっ、とんっ、とんでもないことです。
君達には分からないことでしょうよ。
一人の人間が生死の境をくぐり抜けてきた心境とゆうものが?……
あれ程、真に迫った文章を書いているのにーー
ただの作り事として書けるようだったら、そりゃ~、神様か天才ぐらいしかいませんよ!




