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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・89回


八十九回



 二月一日


 とてもショックなことを打ち明けられて、僕はしかたなく君の面影をただ一人


アァ~


君の面影と手をつないで、僕は夢の国へかけこんだのです。


そこでは誰も僕達の愛を邪魔しようとする者もなく――


二人は愛の楽園を飛び回っていました。



とても信じられなかったのだ


君に彼氏がいるということが。


だから僕は君を彼氏の手の届かない、夢の国へつれていったんだ。



どんなに彼氏が邪魔をしようと……


どんなに皆が僕達の愛を壊そうとしても……


僕は決して手放したりなんかしない


君は僕のものなんだ。


そして永遠に僕だけのものなんだ……


僕は君の彼氏に懇願しました!


「どうしても彼女のことが諦められないんだよね! あんたの口から聞くよりも、せめて彼女の口から一言でもいい、返事をもらいたい。そうでもしないと、とても踏ん切りがつかないんだよ!」


――とね。


そして彼氏も――


「そうだね。藤田さんの気持ちも俺には痛いほどよく分かるし、とにかく言うだけは言っておくよ!」


「ウン、たのみますよ! 彼女の口から言えないってゆうんだったら、せめて手紙ででもいい、何か一言書いて、僕によこしてくれないか? ってね」



 それは彼氏から「彼女は今俺と付き合ってるんだよ。だから諦めてくれないか!」という相談を持ちかけられた、昨年八月の下旬のことでした……


その予想もしなかった彼氏の出現によって――


僕は一瞬目の前が真っ暗になってしまいました。


 とにかく君は「今、片思いの人がいて、その人のことをづっと思い続けていたい」とゆうことで――


僕と交際出来ないとゆう返事をよこされましたね。


しかしそのような人が出現して、あの時の言葉は、ただ自分の申し出を断る為に作った、ただの芝居だったのかと思わされ、急に全身の力が抜けるような思いでした。




 どうしてそんなにまで彼女は僕のことを毛嫌いするんだろう? ……と。


かいもく分からないままにも、とにかくそうゆう約束をかわして、僕達は別れてしまったのです。


 僕は当然、彼氏がその返事を通告してくれて、君が返事をくれるものと確信していたのです。


その事を待ち望みながら、僕はこよみをメクリ、メクリ、時を過ごしていきました。


本当に僕は、ただの一言でもいい――


君の返事(言葉)が聞きたかったのです。



そう願っていても、君からの返事は来ませんでした。


どうしたんだろう?


まさか彼女に限って、僕の苦しみを思いやらないような冷たい女性ひとじゃないはずだ!


彼女に限って――、


きっと来るさ!


きっと……


そう思い続けながら、とうとう今日まで来てしまったのです。


 君には想像がつきますか?


ただひたすら、その願いを胸に抱いて待ち続けていた五ヶ月間とゆう、長い時間の中で、のたうち苦しんできた僕の気持ちが……



 多分君は、今回このような手紙を出したことにしろ


「アラッ、あの人まだウチのことを思っていたのかしら」と――


あっけのない(愛想のない)気持ちしか湧かないことでしょうね。


 しかし僕は恥ずかしながら……


本当に恥ずかしながら、今日までづっと君の返事を待ちわびてきたのです。


しかしもう僕には、これ以上、待つことなんか耐えられないんです。


今までさんざん、君と二人で手をつなぎ、恋の花園に夢を馳せてきました。


本当に素晴らしく、そして虚しい夢想ゆめが、次から次へと浮かんでくるのです。


その夢を、そしてその虚しさを、打ち消したくて――


僕は君への愛の告白を、日々の日記に書き記してきました。




 その数はと言えば、今では膨大な量にも及んでいます。


それを読んでもらったら一目瞭然に――


君に寄せてきた僕の愛というものや、君から返事をもらえず苦しみ悩んできた生活状態というものを――


一部始終、分かってもらえるものと思います。


しかし……


イエ、本当は本当に、その日記を君に読んでもらいたいのですが――


何しろ僕は字が下手で、その日記に書いている字といえば、僕にしか読めないとゆうくらい乱雑に書いています。

それで差し出すことが出来ません。


今回のところは、この手紙だけにしておきます。


 とにかく君に最初お目にかかった時、約束しましたね。


「実際、彼氏彼女というような交際が出来ないんなら、せめて文通友達としてでもいいから、僕と交際してくれないか?」


それで君も、「それならいいわ」という承諾の返事をくれて、とにかく別れましたね。



今になって……


今更こんなことを言うのはおかしな話だと思いますが――


しかし今の僕には、こうするしか今の苦しみ、行き詰まりを打開する道が見つからないんです。


イエイエ、何もここまできて、また君に交際してくれと無理強いする申し込みではないのです。


今までさんざん思い悩んできたことや……


また、君に対して寄せてきた、愛の告白の数々を、しばらく君と語り合っていきたいのです。


彼氏が居るならいても構わないのです。


また、君には一杯友達や知人が居て、今更僕のようなどこの馬の骨とも分からない男と文通友達とゆう間柄を作ることなんか、まったく必要としないものかも知れません。


しかしそれでも、今の僕には君にしか語りかける意思がないのです。


イエ、今までづっと君の面影が頭の中を独占していて、とても君以外には、この僕の苦しい境涯を打開する相談相手はいないとゆう所まで、今の悩みは行き詰まっているのです。


だからとにかく、しばらくでもいいですから、僕の手紙を受け取ってもらえませんか?


 別に良いんです……、気楽な気持ちで。


そして返事を出すだけの余裕がありましたら、一行でもいい……


何行かでもいい……


書いてよこしてもらえたら、この苦しい境涯も、段々、徐々にでわありますが、解決されていくようにも思うのです。





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