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一滴の波紋【原文】1巻の2  作者: 藤田 ユキト
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ある日の日記・87回


八十七回



 アァ~、またまた、まんまと悪霊君達のワナにはめ込まれてしまった……


実は、今日、かくある事態の起こったことを感じたのです。


「モタイと藤田とは、まだ日記によって文通していたんだってよ!」


「モタイは毎日、藤田の所に日記を取りに行ってるんだよ」


「もう二人が一緒になるのは間違いないって」


「ヘェ~、初耳だなぁ~。そんな所まで進展しているのか! それじゃ、藤田は嬉しいだろうなぁ~」


「本当に好きだからこそ、藤田も、あんなに毎日書いていられたんだよ!」


「藤田の文章は、チッとも上手くないんだよ! しかしそれが不思議とモタイにだけは理解出来るんだなぁ~。まるで二人だけの暗号でも作っているみたいにさぁ。こうゆうのを以心伝心とでもゆうんだろうなぁ~。やっぱり好き合っているからなんだよ!」……とか。




 今日は、またビックリするような人から電話があったみたいですね。


「バーのホステスから電話があったんだってよ!」


「あいつもあちこちに種を撒いてるなぁ~」


「これじゃ、何もウチ達が心配することもないのね」


「アイツの遊び好きなのにはたまげたよ! 山本がいくら飲み歩いているからって、藤田にはかなわないなァ~。けたが違うよ。」云々と――。




 僕は今年になって、一度も外へ出たこともないし、そのような女性の一人も身に覚えが無いのである。


さして言えば、学会の集会に出席したことがあるから、その時、あったのかなぁ~と思ったりもしました。


しかし後になって、それが間違い電話だったとゆうことで、一安心しましたよ!


とにかくこんなウワサを立てられたら、今までの彼女への愛も、ウソっぱちだったとゆうことになって――


せっかくここまでこぎつけたものも、パァーになってしまうし、また他の娘からも振り向かれなくもなる。


本当に間違い電話でよかったよ!


その噂を彼女が耳にした時、彼女は一瞬ビクッとしたらしいですね。


「やっぱりあの人を好きだったんだわ! あの人しか居ないわ」と、絶叫して――


僕に対しての確かな愛情がある事を自覚されたそうですね。


とにかく……




とにかく……


今でも僕は、そのような悪霊君達のウワサを信じ込むほど、僕のハートは、彼女に縛りつけになっているのです。


どんなに断ち切ろうとしても……


どんなに忘れようとしても……


その僕の純粋な愛のスキをついて――


彼等(悪霊君達)は、すぐに僕の心をもて遊ぼうとするのです。


もう僕には耐えられないのです。


こんなにも苦しいものであったら……


いっそう……


アァ~、どうして僕には、その勇気が湧いてこないのでしょうか?


アァ~、もうウンザリだよ!


多分、君達は来ていないだろし――


この部屋の中を見透かしてもいないことだろう……



 とにかく君(君達)が来ていると思い込んで、書いている時でも――


彼女から彼氏へ、電話がかかってくるくらいですからね。



その一事態を、まざまざと見せつけられた時――


これまでの妄想が、一瞬にして壊滅してしまうのです。



 どうか僕を信じて下さい!


今はたとえ、自分一人立ちはだかるのでさえやっとの、疲れ果ては姿ではありますが――


君との恋が成立し、イヤ、していったら、必ず、また元のように――


今、彼等が「あいつは気が小さいんだよ。あんな奴と一緒になったら不幸になるのは目に見えてるよ」と言う――


嘲笑の渦も掻き分けて、自分はきっと彼等の嘲笑を、反対にあざけり笑うほどの逞しい自身になれると思います。


そうでもしないと……


いやがおうでも、そうしないと、自分の気持ちはおさまりませんからね。




 当たり前じゃないか!


彼に俺の本当の姿が分かってたまるか!


僕という人間は、ジカに接してみなければ、その真価というものは分からないし――


彼のように、肌から毛嫌いして、交流のない彼が、僕のことを分かっていてたまるか!


アァ~、アァ~、アァ~

もうよしてくれ!


こんな――


いったい真実はどうなっているのか、自分にはサッパリ分からないよ!



 やはり本当は、君が、今日言ったこと(心)が真実であったのなら、君から手紙を出すべきですよ!



とても……


僕から手紙を出すなんてことは出来っこありませんよ。


今日も鮮やかな空振り……


ドッチラケのドッチラケです。


ハイ!


でも、決してお互いの意思疎通がないからといって、他の男性に身を許すんじゃありませんよ!


その事が心配で、心配で……


仕事もロクスポ(まったく)手につかない状態なんですよ。



こんなに風邪が酷くなったんでは、明日の仕事はお休みです。


根性がないと非難されるか分かりませんが――


本当にこれ以上、悪くなったら休もうと思っています。



アァ~!


もし彼女との愛が結ばれていたなら、きっとこの風邪さんも、追っ払うことが出来たでしょうに――と、腹が立ってきます。



君はいったい何をしチョるのか、どう思っチョるのか!


早くハッキリした返事をしてくれ!


後生ですから!





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